Business | 2016.09.06
【潜入レポ②】生産プロセスに革命を!オランダ「TextileLab Amsterdam」が挑戦する職人技術との融合

【潜入レポ②】生産プロセスに革命を!オランダ「TextileLab Amsterdam」が挑戦する職人技術との融合

― waag societyウェブサイトより
waag societyウェブサイトより

TextileLab Amsterdamは、衣服などの生産過程で生じる問題を、最新技術を用いて解決するためのオランダ・アムステルダムに所在する機関。伝統技術や知識をリサーチして、職人技をデジタルファブリケーション(デジタル工作機器によるものづくり)に変換することを、目下の課題としています。

最新技術で問題解決! 生産プロセスに革命を起こすラボ

TextileLab Amsterdamが手掛けるのは下記の3つ。

①:Business Consulting
②:Experimental Labs
③:TCBL(Textile & Clothing Business Labs)

1つ目のBusiness Consultingは、Experimental Labsと連携して、ヨーロッパ中から寄せられる相談に乗り、問題解決を図ることを意味します。

Ceciliaさん曰く、「近年、とあるイタリアの伝統的な繊維産業が存続の危機にさらされていました。職人達は生産に適した機材を見つけられず困っていたのです。また予算の問題で、彼らにとって不要な機能が沢山盛り込まれている大型の機械を購入できずにいました」。

そんな流れから、この伝統産業を次の世代に継承せず、終わらせようかという話も出ていたそう。しかし、職人達はwaag societyの存在を知り、相談することに。

「彼らに相談を受けた私たちは、彼らが必要としている製造マシンの要望をヒアリングした上で、Experimental Labsと連携しました。最新技術を用いることで、短期間でオリジナルマシンを製造できたのです。

少ないコストで適切な機械を手に入れられたことにより、この伝統産業は息を吹き返すことができました。しかも従来よりも手間がかかることなく、同じクオリティのものが製造可能です」。

バクテリアで染色!? 斬新なアイディアが沢山誕生

― waag societyウェブサイトより
waag societyウェブサイトより

2つ目のExperimental Labsは、Business Consultingで受けた相談の問題を技術的に解決するのとは別に、Experimental Labs独自で技術開発にも取り組んで行くとのこと。

現在は、環境に良い染色技術を開発中。先ほど少し触れたベンガラ染色と、バクテリア染色の実験をしているんだそう。

「私たちの衣服を染色するために、毎日大量の化学薬品が盛り込まれた汚染水が生み出されています。もちろん、全てがきちんと処理されているとは限りません。世界銀行によると、工業汚水の約20%が織物染色と織物加工に由来すると試算されているそうです」。

全体総数を知らずとも、かなりの量の水が汚染されていることは明らかですよね。

そんな訳で、現在試作段階のバクテリア染色を見せていただきました。

TextileLab-Amsterdam_2_03

思いの他鮮やかでびっくり! この染色方法は、テキスタイルの上でバクテリアが繁殖することで色が出るもの。ほとんど水や化学物質を使うことなく染色できることがメリット。それにしても発想が豊か。

「このExperimental Labでは、ファッション産業の現状を踏まえた上で、私たちに何ができるかを考えて、プロジェクトを始動します。今ある問題に対して、生物学的にアプローチしたり、デジタルファブリケーションを用いることで、新たな解決方法を模索したり。職人の技術や、長い歴史で培われた知恵を頼りにもしますよ」とのことでした。

ヨーロッパ中に広がるムーブメント、協力し合うことで解決できる?

― TCBLウェブサイトより
TCBLウェブサイトより

3つ目のTCBL(Textile & Clothing Business Labs)は、TextileLab Amsterdamと同じ志を持つ研究機関やアート組織、テキスタイルミュージアムなどからなる、ヨーロッパ全域のネットワークです。

プロジェクトパートナーとして、お互い協力しながら、それぞれのプロジェクトを進めるとのこと。ヨーロッパ中に18のラボを新オープンすることが年内の目標だそう。

通り説明して頂いたあと、上階の屋根裏部屋に案内していただきました。

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ドキドキしながら部屋に入ると……白を基調とした明るい空間が!

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ここは、ワークショップなどのイベントを開催したり、個人が服作りをするためのコワーキングスペース。服作りに必要なツールをシェアするために、マシンの調整などをしていました。

オープン準備中のため、まだスペース自体は完成していませんが、ミシンはもちろん、ニッティングマシーン、刺繍を簡単に施せるミシンまでありました。

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“ファッション”が好きだからこそ、持続可能な生産プロセスを追求

最後に、Ceciliaさんがファッション産業に対する熱い想いや、今後の目標を語ってくださいました。

「人間が服を着ることは、社会生活をする上でとても大切なことです。なぜなら、服装はその着用者がどんな人間なのかを語り、その人のアイデンティティーでもあるから。服装は他者とコミュニケーションする際に、相手に多くの情報を与えます。そして円滑なコミュニケーションをサポートしてくれる重要なツールなのです。

しかし、現在は服やその他アイテムを生産する過程で多くの問題が生じています。最も環境汚染をする産業だと言われているだけでなく、多くの企業は労働形態も悲惨です。

もちろん、すべての企業がそうとは限りませんが、多くの企業は工場労働者に妥当な賃金を支払っておらず、場合によっては致死に至るほど環境も劣悪です。また途上国の貧困層の子供達が、安価な労働力としてこの産業を支えていることは、意外にも知られていない事実です。

このように持続不可能なシステムを変革するために、私たちは今何ができるのか。そう考えた結果、大きく分けて2つの案が浮上しました。

1つは、従来は手作業でしていたことを、デジタルファブリケーションに置き換えるよう提案すること。こうすることで、もののクオリティを維持しながら、従来よりも手間をかけずに製造できるのです。

どんなアイテムも、生産する際に膨大な知識や技術を必要とします。多くの企業は経営のために企業秘密として公開していないことが多いですが、私たちは集約/蓄積した知識や技術を公開することで、産業全体に役立つことを目標としています」。

― waag societyウェブサイトより
waag societyウェブサイトより

「2つは多くの人に新たな選択肢/可能性を提示すること。デジタル工作機器は、とても便利なツールです。でも、いくら便利な機械や機能があっても、使えない人にとっては手に余ってしまう。

だから、誰もが使えるようにレクチャーしたり、サポートしたり、手軽に使えるようにマシンに手を加えることも重要な仕事だと感じています」。

― 絶賛調整中!ニッティングマシン
― 絶賛調整中!ニッティングマシン

「私たちは、一人では今のファッション産業のシステムを変えることはできません。でも、消費者を含むファッション産業に関わる人は、選択肢があればスマートだと思う方を選べます。

私たちは新たな選択肢を人々に提供し、意思決定をしてもらうことで、ファッション産業が生み出す問題を解決しようと試みているのです」。

9月6日オープン予定のTextileLab Amsterdam。今後の活動が社会にどのような影響を与えるのでしょうか。産業改革は少しずつ、ゆっくりと、でも確実に動き出しているように感じました。

TextileLab-Amsterdam_2_10

TextileLab Amsterdam

https://www.facebook.com/TextileLab-Amsterdam-944736622320705/

Text&Photo : Miki Okamoto

DiFa編集部



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