Topics | 2016.10.04
消費者が自ら服を組み立てる-「THE POST-COUTURE COLLECTIVE」デザイナーインタビュー

消費者が自ら服を組み立てる-「THE POST-COUTURE COLLECTIVE」デザイナーインタビュー

ファッションレーベルTHE POST-COUTURE COLLECTIVEは、消費者が「自分のサイズや好みからデザインデータを選び、レーザーカッターで素材を裁断し、組み立てて作る」という新たな形態のコレクションを展開しています。

ファッション業界の一員でありながら、今までにない形で「ものづくり」「服作り」を示唆する。今回は、そんな”異端児”的ファッションレーベルを運営するデザイナーMartijn Van Strienさんのインタビューをお届けします。

レーベルを始めたきっかけや直近の目標、将来の展望など、気になる裏話をお話して頂きました。

 

「コンセプト」と「実践」、それぞれを学んだことがきっかけ

Martijn Van Strienさんはオランダ出身のデザイナー。世界的にも有名なデザインスクール、Design Academy EindhovenのMan and Identityコースを卒業し、現在はオランダのロッテルダムを拠点に活動しています。

現在彼の手がけるプロジェクトは、母校での学びから絶大な影響を受けていると言います。

「すごく良い学校だよ。学校では実践的なものの作り方より、コンセプトメイキングを学べたんだ。具体的には、いかに”一般とは異なる”ものの見方をするのか、現状を把握した上で、どのように問題解決をするのか、”多角的に考える手法”を身につけることができた。

その一方で、僕はテキスタイルがどのように生産されるのか、ニットがどのように編まれるのかなどを自習しながら、身体的な実験を繰り返したんだ」

コンセプトメイキングとテキスタイルデザインを学んでいくうちに、ファッションデザイナーの元でインターンシップするのが良いのではないかと考えるようになったそう。

― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE
Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE

そんな訳で、Martijnさんがインターンシップ先に選んだファッションブランドは、the world’s first 100% transparent company(世界初100%透明な企業)と自ら謳うhonest by.

honest by.は各製品ごとに、製造プロセスやコスト、開発に費やした時間や利益などの情報を全て開示していることで有名です。

デザイナー、Bruno Pietersは過去にHUGO BOSSのクリエイティブディレクターを務めた経歴もある、敏腕エリートデザイナー。Martijnさんは彼の元で働き、ファッション産業のシステムなどを学びながら、新たなテキスタイルを開発しようと試みたとのこと。

「いろいろな経験をさせてもらって、多くを学んだよ。でも必要な機械がなくて、僕が思うテキスタイルが開発できずにいた。だから、違う形で携わることもできるのではと考えて、ひとまず自分のスタジオを設立したんだ。2014年のことだね」

 

「不満」と「共感」を掛け合わせると、必然的に生まれるもの

THE POST-COUTURE COLLECTIVEを手がけようと思いついたきっかけはなんだったのでしょうか。

「まず、僕は大量生産、大量消費に関して懐疑的な考えなんだ。なぜかというと、あまりにも無駄が多すぎるから。例えば、ヨーロッパの店舗に並ぶ衣服の30%が売れ残り、一度も袖を通されないまま廃棄される。かなりの数の商品が、新品なのにゴミになってしまう。だから僕はユーザーが必要な時だけ、必要な衣服を作れる方法を編み出したくなったんだ」

― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE
Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE

「実は別の個人的なプロジェクトをしている時にレーザーカッターを使っていて、その時にひらめいたんだ。これを使えば、また違った衣服の作り方ができるんじゃないかってね。ファッション産業に対する不満と、レーザーカッターを使っていたことが重なって、このプロジェクトはスタートしたんだよ」

プロジェクトをスタートさせて、最初に試作したのは小さな紙のドレス。色々な試作を重ねて、やっと今の形にたどり着いたそう。

レーザーカッターを利用した初期作品。― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE
レーザーカッターを利用した初期作品。― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE

「ファッション業界は実際に衣服を製造するプロセスも、かなり古くてアナログなんだ。世間では新たな技術が多く生み出されているのに、ファッション産業で採用されていない場合がとても多い。でもデジタル工作機器を使えば、便利で早くて手間をかけることもなく、より良い質の衣服が製造できる。ファッション産業が、これらの新しい技術を使わざるを得ない状況になるのも時間の問題だと思うよ」

 

必要なものは、自分で作る

現在、レーザーカッターに適した新たなテキスタイルを開発中。それに加えて、新しいアイテムのローンチを控えているとのこと。その先の目標は?

「すべての人が、自分のサイズに合った欲しい服を自分で作れるようにすること。そして将来は服だけでなく、家具や家電など身の回りのあらゆるものを、消費者が簡単に作れるようなシステムを作りたいと思っている。デザイナーがデザインすることによって問題解決して、消費者がそれぞれプロデュースする。そういうシステムを作ることが大切だと思う。そうすれば、大量生産大量消費するよりも、持続可能な産業システムになる。しかもサイズも色も使う人自身が決められるし、低価格で製作できたら消費者にもメリットがあるよね」

 

― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE
Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE

デザインソフトを使いこなせる人は、THE POST-COUTURE COLLECTIVEのデザインデータをアレンジできますが、デザインソフトを使いこなせない人にも可能性を広げるシステムを開発中だそうです。特別な知識や技術がなくても、スマートフォンやPCから簡単に自分の服が作れる未来も、そう遠くはなさそうですね。

「確かに僕たちが今手がけているこのプロジェクトも、少し時代としては早いと思っている。でも、消費者がデジタルファブリケーション(デジタル工作機器を用いるものづくり)をすることが一般的になるのも、技術革新と時間の問題だと思うんだ」

 

― Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE
Courtesy of THE POST-COUTURE COLLECTIVE

「オランダは特にデジタルファブリケーションに力を入れている国だけれど、この流れはヨーロッパ全域で広がっている。僕は仕事でベルギーなどのヨーロッパ諸国に頻繁に出向くけれど、徐々に一般の人にデジタルファブリケーションが広がっていることを肌で感じるよ。実際にメイカースペースも増えているしね。

皆がデジタル工作機器などのマシンを使いたいと要求する限り、僕たちデザイナーはその状況をデザインする必要がある。メーカースペースが増えれば、それだけ注目を浴びることになるし、そうするとさらにメーカースペースは増える。そんな好循環が起こりつつあると思っているよ」

時と場合が変われば、人の役回りも変化する。色々な意味を持つ”デザイナー”という言葉。その意味も、今後はものづくりをする人だけでなく、その環境を整える人を指すことになりそうです。

日本にも、メイカースペースやファブラボがあります。気軽に見学しに行くと、予期せぬ発見があるかもしれません。そして手始めにTHE POST-COUTURE COLLECTIVEをオーダーして、自分のサイズにぴったりの服を作ってみてはいかがでしょう?

Martijnさんは、商品に関する感想も絶賛募集中、とのことです。

Martijn Van Strien

http://www.martijnvanstrien.com/

THE POST-COUTURE COLLECTIVE

http://www.postcouture.cc/

Text&Photo : Miki Okamoto

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DiFa編集部



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