Topics | 2017.01.19
ラグジュアリーブランド市場にECサイトはどう切り込めるか?-LVMHがAmazon.comへの出店を躊躇する理由

ラグジュアリーブランド市場にECサイトはどう切り込めるか?-LVMHがAmazon.comへの出店を躊躇する理由

仏LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下、LVMH)は、米Amazon.comが自社のブランドイメージを維持するのにふさわしくないプラットフォームだと判断したようです。このことは、EC化が急速に進む現在にあってもなお、高級品を取り扱うためのチャンネルがEC上で十分に整備されていないことを示しています。

高級品の買い物につきものだったはずの“ラグジュアリーな経験”は、ECの時代には過去の遺物となってしまうのでしょうか? ブランドイメージとECサイトの関係について考えてみました。

1.集客力よりもブランドイメージを優先したLVMH

多くのアパレルブランドが出店するAmazon.com - shutterstock.com
多くのアパレルブランドが出店するAmazon.com - shutterstock.com

Amazon.comはいまや米国内のEC売り上げの1/3を占め、いずれ最大のファッション小売店となることが見込まれるまでに成長しています。これまで店舗や自社ECサイトでの販売にこだわってきたGap(ギャップ)もプラットフォームの利用に前向きな姿勢を示しているほか、Calvin Klein(カルヴァン・クライン)やMichael Kors(マイケル・コース)、Kate Spade(ケイト・スペード)といった中堅ブランドもAmazon.comでの出店を開始しています。

そんな中、Loius Vuitton(ルイ・ヴィトン)をはじめとするラグジュアリーブランドを数多く展開するLVMHは、当面、Amazon.comでの出店予定がないことを明言しました。最高財務責任者であるジャン・ジャック・ギオニー氏によれば、Amazon.comのプラットフォームが自社ブランドを販売するのに適さないというのがその理由とのことです。

2. Amazon.comにおいてブランドが失うものと得るもの

- shutterstock.com
shutterstock.com

Amazon.comでは、メーカー企業以外でも商品を販売できるため、LVMHにとっては、コピー商品が流通することや、商品が本来の価格で取引されないことへの懸念も大きいようです。実際、Michael Korsのシグネチャートートが、正規の小売価格の半値近い価格で販売されていることも珍しくありません。

プラットフォーム上のプレゼンテーションのあり方や、安価なブランドの商品と関連付けされることで、ブランドの価値が損なわれかねないとして、コンサルティング企業である星Godmother(ゴッドマザー)のCEOを務めるリンダ・ロックなど、LVMHのこうした動きについて好意的な意見を寄せる専門家の声もあります。Amazon.comのような大手ECモールは、ラグジュアリーブランドをとっつきやすくするに過ぎず、ブランドの求める“ラグジュアリーな経験”が、まるでないがしろにされてしまうというわけです。

現在、日本国内のAmazon.co.jpでは、第三者によるLVMHの並行輸入品販売が行なわれ、中古品のマーケットが成長しつつあります。これについて、プラットフォームのデザインも手がけるコンサルティング企業、星Predator Digital(プレデター・デジタル)のCEO、ラジーヴ・バラは、大手ECモールで業者の認証制度を設けることができれば、各ブランドが懸念するコピー商品から消費者を守ることにもつながると指摘しています。そのような対策を講じることにより、将来的に顧客となりうる買い手のデータ収集も期待されます。

LVMHがAmazon.comとの提携に関して「当面は(for the time being)」と含みをもたせているあたり、今後の動きからは目が離せません。

(原文・引用元:http://www.marketing-interactive.com/lvmh-says-no-way-to-amazons-business/

3. ラグジュアリーファッションECサイトへの出店を進めるトップメゾン

ラグジュアリーブランドを中心に取り扱う - NET-A-PORTER
ラグジュアリーブランドを中心に取り扱う - NET-A-PORTER

他方、伊NET-A-PORTER(ネッタポルテ)のようなラグジュアリーファッションを取り扱うECサイトでは、すでに数多くのラグジュアリーブランドが出店しており、2016年7月にはPRADA(プラダ)もラインナップに加わりました(メンズ向けのMr Porterでも2016年9月に販売を開始)。

Cartier(カルティエ)やChloe(クロエ)などのラグジュアリーブランドを傘下に収める瑞Richemont(リシュモン)の会長を務めるヨハン・ルパート氏が、Amazon.comに対抗すべく、LVMHと仏Kering(ケリング)の会長に対し直々にNET-A-PORTERへの参加を呼びかけたという話もあります。KeringはGucci(グッチ)を含むほとんどのブランドをすでにNET-A-PORTERで展開していますから、Loius VuittonやDior(ディオール)などLVMHのブランドがNET-A-PORTERで見られる日もそう遠くないかもしれません。

4. デジタルテクノロジーが生み出すECにおける“ラグジュアリーな経験”

ECだからこその劇的なショッピング体験をデジタルテクノロジーが叶える - shutterstock.com
ECだからこその劇的なショッピング体験をデジタルテクノロジーが叶える - shutterstock.com

買う側からすれば、むろん商品は安い方がいい。そして実店舗はもちろんのこと、ブランドの公式サイトにおいてさえ感じられる、どこか“敷居の高い”イメージが苦手という方も少なくないはずです。Amazon.comのような大手ECモールで、気軽にハイファッションが買えるのを歓迎する向きもあるでしょう。

Amazon.comに代表されるような大手ECモールにおいては、価格の安さや商品の見やすさ、ユーザビリティが驚くほど進化を遂げています。ところがそこに、例えばワクワクするようなショッピング体験があるかと聞かれれば、“YES”と答えられる人がどれくらいいるでしょうか? LVMHが投げかけているのは、高級品の販売において、“ラグジュアリーな経験”をECがどうやって作り出すことができるのかということ。

最新デバイスや機能を駆使し、店舗の豪華なインテリアや質の高い接客を超える感動的な“何か”が生まれたら、私たち消費者はLouis Vuittonのバッグを買うためにわざわざECを利用するのかもしれないのですから。

LVMH

https://www.lvmh.com/

Amazon.com

https://www.amazon.com/

NET-A-PORTER

https://www.net-a-porter.com/
Cover photo by shutterstock.com

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

FASHION EC Lab



PICK UP

SPECIAL

LATEST

BUSINESS
LATEST