Topics | 2017.02.09
【インタビュー】ファッションデザインの“実験性”を高める新たなプラットフォーム「Queen of Raw」とは?

【インタビュー】ファッションデザインの“実験性”を高める新たなプラットフォーム「Queen of Raw」とは?

生地屋に足を運び、膨大な種類の生地からお目当の生地を探していたファッションデザイナー。彼らの製作過程を大きく変えるかもしれない企業が米・ニューヨークにあります。それが、デザイナーのためのオンラインプラットフォームとして設立された「Queen of Raw(クイーン・オブ・ロー)」です。

2014年8月に設立されたQueen of Rawは、様々なスタイルのコットンやシルクはもちろんのこと、以前DiFaでもご紹介した「360 Fashion Network」が開発したLEDリボンや3Dプリンターで作られた新しい素材も販売しています。またデザインアイディアをまとめる“ムードボード”をオンラインで作れるサービスも提供しています。

今回はそんな革新的なプラットフォームの開発者である、Stephanie Benedetto(ステファニー・ベネデット)さんにお話を伺いました。

-Photo by Queen of Raw
-Photo by Queen of Raw

テキスタイル工場とデザイナーの橋渡し役に

ニューヨークでファッションとテキスタイルビジネスを100年以上続けている家庭に育ったステファニーさん。6年間ウォールストリートで企業弁護士として働いた経験もある彼女。その後、自身のビジネスをはじめようと、ブルックリンでテキスタイル生産会社を起業したことで、ファッション業界の大きな問題に気付き、Queen of Rawのアイディアが生まれたそう。

「ブランドやデザイナーが、欲しい素材や生地を探すのに苦労していることを知りました。特にサステイナブルな素材を見つけるが難しいと感じました。また、それと同時に、世界中の紡績工場などが、大量の在庫を売るのに苦戦していることを知りました。そして倉庫で眠っている在庫は、最終的に埋め立て地で処分されることになるんです。そこで、工場とクリエイターの橋渡し役になれたらと思い、Queen of Rawを設立しました。」

-Photo by Queen of Raw
-Photo by Queen of Raw

自身の経験から生まれたビジネスアイディアには自信がある一方で、一番の問題はコーディングの経験がないことでした。

「コンセプトや、どうやってビジネスをやるのかのアイディアはありました。またどういったテクノロジーが必要かも分かっていました。しかし、私にはコーディングの経験がなかったんです。そこで、General Assembly(ジェネラル・アセンブリー)というコーディングを教える学校に行き、CTO(最高技術責任者)を見つけたんです。共同設立者でもある彼とQueen of Rawを設立しました。今では彼のおかげで、コーディングもできるようになりました。」

そんな過去を経て、動き出したQueen of Raw。その特徴は、生地をオンラインで販売するプラットフォームだけでなく、デザイナーたちが自由に作れる“デジタルムードボード”にもあります。

-Photo by Queen of Raw
-Photo by Queen of Raw

「これまでのデザイナーたちは、ムードボードを作るのに、雑誌を切り貼りして、生地屋に行き「こんな生地を探しています」といったことをしていたんです。これはとても大変な作業なんですよ。またデザインを考える初期段階で、すぐに生地を手に入れられる環境を提供することは、デザイナーだけでなく私たちにもメリットがあります。デザイナーたちは無料でこのムードボードを作成・保存でき、私たちはそのムードボードを分析し、デザイナーたちがどういった素材や生地を求めているのか知る事ができるからです。」

まだ“デジタルムードボード”のサービスを開始して数ヶ月しか経っていないにも関わらず、既に10,000人以上がムードボードを作成し、多くのデザイナーから好意的な感想をもらっているそう。今年2017年中には、“デジタルムードボード”と連動させることのできるモバイルアプリも発表する予定とのこと。

-Photo by Queen of Raw
-Photo by Queen of Raw

未来の子どもたちのために、サステイナブルな素材を広めたい

ステファニーさんがQueen of Rawを設立したのは、ファッション業界の未来のために革新的なことをしたいだけではありません。一歳になる男の子の母として、健全な地球を息子の世代に残したいと話す彼女。Queen of Rawが取り組むサステイナビリティについて力強く話す彼女の姿が印象的でした。

「テキスタイルの生産は石油の次に、水を汚染する原因とされているんです。生地には染めたりすすいだりするのに大量の水が必要で、このままのペース生地を消費していくと、2025年には世界中の3分の2の人が水不足問題に直面することになります。私たちはサステイナブルについて広い意味で解釈しています。オーガニックだったり、環境に優しいといった証明書がある生地を選んでいます。その他には、フェアトレードで生産されている素材。工場やそこで働く労働者の環境に問題がない状況で生産された生地や、リサイクルされた素材を使用した生地などもあります。また、生産過程での無駄や有害物質を最小限にした方法で作られた生地なども取り扱っています。」

実験してみることを躊躇するな

テクノロジーの役割が着実に大きくなっているファッション業界で、ステファニーさんはこれからのデザイナーは「実験すること」が大切だと話します。

「デザイナーは、未知のテクノロジーを使ってみることを恐れないで欲しいです。また周りの人に質問をすること、協力を求めることにも躊躇しないで欲しい。時に、自分のアイディアを発表するのは怖いことかもしれませんが、自分の作品を発表し、フィードバックをもらうことを続けて、自分を高めていってもらいたいです。」

-Photo by Queen of Raw
-Photo by Queen of Raw

-Photo by Akihiko
-Photo by Akihiko

旅先に服を持ち運ぶ時代が終わる?

ステファニーさんは、未来のファッションとテクノロジーの関係について次のように話しています。

「いつか、従来のような服がなくなる世界が来ると思います。たとえば、パソコンで服をデザインをして、そのデータを地球の反対側のホテルに送ります。ホテルに到着すればクローゼットの中に3Dプリンターで作られたその人専用の服があり、ホテルを去る時にはその服は分解され溶かされます。そして次に宿泊する人はまたその原料を再利用し、その人だけの服が3Dプリンターで作られる。そんな時代が来ると思っています。」

Queen of Rawでは、これからは生地だけでなく染料や道具などに加え、建築やインテリアデザインに使用する素材も取り扱っていくそう。近い将来、ファッションだけでなく、様々な分野のデザイナーにとって欠かすことのできないプラットフォームになりそうですね。

Queen of Raw

www.queenofraw.com
Cover photo by Akihiko

Akihiko



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