| 2017.04.17
「人と音楽の関係性に適したデバイスを」ーー 耳を塞がずに音を楽しむ“ながら”イヤホンが開発されたワケ

「人と音楽の関係性に適したデバイスを」ーー 耳を塞がずに音を楽しむ“ながら”イヤホンが開発されたワケ

2017年2月9日に発表された、とあるプロダクトが多くのメディアや個人ブログに取り上げられるなど、世間を驚かせました。

そのプロダクトとは、耳の穴をふさがずに音楽を聴くことができるイヤホン「ambie sound earcuffs(アンビー サウンド イヤカフ)」。これまでのイヤホンでは不可能だった、音楽を聴きながら会話をしたり、駅のホームのアナウンスを聞いたりすることができるんです。故に新感覚“ながら”イヤホンと言われています。

今までにありそうでなかったイヤホンということもあり、ユーザーの反応も上々。プロダクトが発表された4日後には、初回生産分は完売してしまいました。

AirPodsやBeatsXといったワイヤレスイヤホンが全盛の時代において、なぜambie sound earcuffsを開発することにしたのでしょうか?その裏にある思いを、開発責任者である三原良太さんに伺ってきました。

人と音の関係性が変わってきている。でも、デバイスに進化はなかった

— ambie sound earcuffsを開発しよう、と思った経緯は何だったのでしょうか?

三原:開発メンバーの間で“人と音の関係性が変わってきている”という仮説がありまして。
これまでの音楽はアーティストのCDを購入するなど、没入して聴くものでしたが、ストリーミングサービスの登場によって、環境音として楽しむものに少しずつシフトしていってるんじゃないか、と思ったんです。

分かりやすい例はストリーミングサービスのプレイリストです。AWAやAppleMusicなどのストリーミングサービスには、従来のアーティストやジャンルでの検索に加えて、感情別やシーン別で音楽を検索することができます。「このアーティストを聴くぞ」と没入して聴くものから、日常生活のシーンにあわせて添えるものに音楽がシフトしてきている。

そんな状況にもかかわらず、音楽を聴くデバイスは未だにスピーカーかイヤホンに限られたままで……。イヤホンは外の音を遮断してしまうため人と会話ができないですし、スピーカーは人の声は聞こえますが、人にも音楽が聞こえてしまう。音楽を聴くシチュエーションがデバイスによって制限されてしまっているのです。

ストリーミングサービスが普及し、人と音の関係性が変わってきているなかで、現在のデバイスの形は望ましくない。日常生活に音楽を添える形を実現するために、ながら聴きすることができるambie sound earcuffsを開発することにしました。

— 新感覚の”ながら”イヤホン。こだわったポイントは何でしょうか?

三原:当初、ワイヤレスも実現可能な選択肢として頭の中にありましたが、まずは“ながら”聴きにフォーカスして価値を実感してもらいたい。そのために手に取りやすい価格、分かりやすい形状にした方がいいな、と思い、この形をとりました。

— 他に、何かこだわったポイントはありますか?

三原:通常、オーディオ製品は20Hz~40,000Hzまで聞こえて、どれくらいの音量が出るかといったように、スペックである程度の良さを決めて、音響の特性を出していくのですが、ambie sound earcuffsは人の耳によって聞こえ方も異なる。そのためスペックで切らず、実際に試してもらったユーザーの意見を何よりも大事にしましたね。

あと、デザインに関してはテクノロジーっぽさを全面に押し出さないことを気をつけました。我々がテクノロジーや機能に対してがんばってしまうと、技術自慢になってしまう。そうではなく、提供したい価値に対して本当に必要なものは何かを考えたときに、道具に見えるようなシンプルなものが良いと思ったので、素材にもこだわりました。実際につけていただければ分かると思うのですが、やわらかい質感になっているので、長時間つけても違和感がないと思います。

–ホームページを見たとき、想像以上に低価格だったことに驚きました。

三原:ありがとうございます。新規事業はどうしても機能重視で始めるものが多く、技術ファーストで開発していくと、どうしても機能が追加され、その機能を増やしていくと、必然的にコストが積み上がってしまう。そのため、どれだけコストが積み上がったかで価格が決まってしまいます。

ただ、今回は他社と比較して高いスペックのものを出すのではなく、体験価値を重視することにこだわりましたね。だからこそ、この価格が実現できたのではないか、と思います。

カナル型のイヤホンが使えなかった……という女性にも好評

— 開発にあたって、どのような方々をターゲットにしたのでしょうか?

三原:今回、年齢設定などデモグラフィックは細かく切らず、いろんなことを楽しんでいて前向きにいろんなことを取り組んでいる人、と設定しました。ambie sound earcuffsは、新しい市場を作るデバイスになると思っていたので、リファレンスになる数字は意識しなかったですね。

— カラーバリエーションも6色と豊富ですよね。女性のニーズは意識されたんですか?

三原:“ながら”聴きの体験自体は、女性からの反応も良いことは最初のユーザーテストで分かっていました。ただ、女性特化というよりは、既存のイヤホンが男性向けに作られているものが多いので、ambie sound earcuffsが中立的な存在になれればいい、と思って開発は進めました。

— 実際、ユーザーテストで女性からどんな反応がありましたか?

三原:今回、“ながら”聴きがメインなので低音などは無理に持ち上げず、聴きやすい感じにしています。これまでの没入型のイヤホンの多くはいかに原音に近い音を聴かせることに注力していたと思うのですが、ambie sound earcuffsは音質を追求したプロダクトではないため「音質が悪い」と捉えられるのかなと思ったのですが、意外とそのようなコメントは女性からあまり挙がってきませんでした。“ながら”聴きの価値をすぐに理解してもらえたと思います。

あとは、女性は耳が小さく、従来のカナル型のイヤホンがつけられなかった人も意外と多くいたので、耳を塞がないというambie sound earcuffsの形状自体のウケも良かったですね。

日常生活の楽しみを増やすために、音楽を使ってもらいたい

— 今回、ネットだけでなくロンハーマンなど、店舗で販売しているのも面白い取り組みだと思いました。なぜ、店舗販売にも着手したのでしょうか?

三原:ambie sound earcuffsが「日常生活に音楽を添える」というコンセプトなので、音楽のためにイヤホンを探しに来る場所に置くと、少しユーザーニーズと整合性がとれなくなるな、と思ったんです。あくまで自分のやりたいことがあって、そこに音楽に付加価値を加えたい。なので、ユーザーニーズとマッチすることを大事にするためにライフスタイルショップやアパレルショップに置かせてもらうことにしました。

自分のモチベーションをコントロールするために服を選ぶ人が多いように、そういう感覚で音楽を活用してもらえたら、面白いんじゃないかと思っています。

— 最後になりますが、今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?

三原:詳しいことはまだ話せませんが、ハードに限らず、アプリケーションやサービスといった側面からも“人と音の関係性を変える”ことに挑戦していきたい、と思っています。

ほかには、ambie sound earcuffsに関しては協業も視野に入れていて、ファッションブランドとのコラボなど体験を伝えられる手段があれば、いろいろやっていきたいですね。

発売後、4日間で初回生産分が完売してしまうなど、大人気のイヤホン「ambie sound earcuffs」。実際に使用させてもらったのですが、つけている感覚があまりなく、BGMのような感覚で”ながら”で音楽が聴けるのは非常に面白い体験だな、と感じました。男性はもちろんのこと、カナル型のイヤホンが耳に合わない……という女性にはぴったりのプロダクトではないかと感じました。。今後、アプリケーションやサービスにも着手していくと語っていますが、具体的にどのようなことを行っていくのか、非常に楽しみです。

DiFa編集部



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