Business | 2017.04.21
VR技術が可能にするファッションECの未来について考える

VR技術が可能にするファッションECの未来について考える

ファッションECが長年抱えてきたフィッティングという課題。機能的な面では、実店舗に比べてかなりの効率化が図られているだけに、サイズや色味など、実際に商品を目で見たり、触って確かめることができないことによる問題が目立っていました。

そんななか、このところ目覚ましい発展をとげているVR技術が、ファッションECにおけるフィッティング問題の解決につながるのではないかと注目を集めています。

1. VRの流行とファッションECでの活用

「VR(Virtual Reality)」とは、コンピュータ上に仮想的な環境を作り出す技術のこと。「人間の能力拡張のための道具であり,現実世界の本質を時空の制約を超えて人間に伝える」(*1)ことで、あたかもその世界の中に自分が存在しているような感覚を促します。

とりわけ近年はゲーム業界での発展が目覚ましく、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使って楽しむVR技術を利用したゲーム機が発売されるなど、2016年には「VR元年」という言葉ももてはやされました。

–仮想的なショッピングが可能に - VR PARCO

ファッションECにおいても、VR技術を応用したさまざまな試みが実施されています。株式会社パルコと株式会社VOYAGE GROUPによる「VR PARCO」はその一例で、店内の360度パノラマ画像を通じて店舗内で仮想的にショッピングを行うことができます。Googleのストリートビュー機能を利用する容量で店内を移動できるほか、特定のエリアに陳列されている商品の一覧表示や購入が可能です。

店舗内に出現する商品情報からそのままカートに - VR PARCO

ゲーム機に導入されているようなHMDデバイスを伴わないということもあり気軽に利用できるというのが魅力の一つ。実際に店舗内を歩き回ったり、商品を手に取るような臨場感はないものの、ファッションECにおいてVRショッピングがどこへ向かおうとしているのかを知るのには格好の材料と言えそうです。

HMDデバイスを採用した例としては、株式会社KABUKIによる「VR Shopping with Voice Chat」サービスが挙げられます。専用アプリをインストールしたスマートフォンをHMDデバイスにセットし、SNSやメッセンジャーアプリを通じて離れたところにいる友人同士で会話を楽しみながらショー動画を閲覧し、実際に気に入った商品があれば購入することも可能です。

kabukiペディア VR shopping

VR技術が黎明期ということもあり、まだまだ発展の余地はありそうですが、将来的に友人と待ち合わせる時間だけを決めて、仮想の空間へとショッピングに“出かける”、なんていうことも可能になりそうです。

2. ファッションECにおけるVR試着の今

Metail

古くは2008年に創業した英Metailが、ユーザが体の寸法を入力することで仮想空間にあらわれる自分の体型をしたダミーに洋服を試着させ、おおよその雰囲気を確かめれるというサービスを提供。2011年には、スウェーデンでVirtusizeが創業。ファッションECの商品を手持ちの洋服とをイラストで重なり合わせることで、サイズを比較できるサービスを提供しています。

「VR元年」となった2016年には、国内でさまざまな企業が「バーチャル試着」の仕組みづくりに着手していて、例えば、青山商事は、独自のVR試着システム「バーチャルフィッティングアバターシステム」を開発。3Dスキャナーによって撮影した自らの姿がアバターとなってタブレット上にあらわれ、それに商品画像を重ね合わせることで、実際に試着することなく商品を着たときの雰囲気を確かめることができます。

株式会社セブン&アイ・ホールディングスも、カナダUnique Solutions Designによるサイズフィッティングサービス「Meality」を試験的に導入しています。ブースに入ると、3D技術によって全身およそ20万か所もの寸法が計測されるというものです。

いずれも実店舗での取り組みですが、将来的には人工知能技術と連動させることで、サイズへの不安を解消するだけでなく、レコメンデーションの精度を高めることにもつながり、ファッションEC上でのショッピングをより快適にすることへとつながっていくはずです。

Meality

3. VR技術がもたらすファッションECの未来

こうしたVR技術によって、ファッションECが抱えるサイズの問題はおおかた解決するかもしれません。しかし、そこで新たな課題として浮かび上がると想像されるのが、洋服に関するより感覚的な部分です。

例えば、「落ち感」や「抜け感」、あるいは「ゆるふわ感」と言った消費者の主観に依拠する部分について、EC上で的確に伝えるのはきわめて困難です。従来は、生地感や素材について、テキストと2D画像によって説明されるのみだった情報にも、VR技術はより厚みをもたせていく可能性を秘めています。

HMDだけでなく、感覚に訴えかけるようなデバイスの開発がさらに進めば、触った時の質感や素材の匂い、生地同士が重なり合うときに生じるノイズにいたるまで、五感によって商品の細部を確認し、実際に試着したときと同じような商品の選び方ができるようになるはずです。

温度や湿度など、多種多様なパラメターを想定した仮想環境下での“試着”が可能になるなら、熱すぎることも寒すぎることもない、空調で室温が整えられた快適な実店舗で実際に着用するよりもずっと、“現実的”な商品選びができるようになるにちがいありません。そんな現在では想像もできないショッピング体験を、VR技術がもたらしてくれることを期待したいですね。

(*1)出典:https://vrsj.org/about/virtualreality/
日本バーチャルリアリティ学会公式ホームページ(検索日:2017/4/5)

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by shutterstock

FASHION EC Lab



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