Business | 2017.05.01
チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験

チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験

2017年4月11日、包括的なカスタマーサービスを実現する法人向け「LINE カスタマーコネクト」の販売が開始された。商品や在庫状況などの問い合わせに対し、チャットおよび通話によって人工知能と人が答えてくれるというもので、ブランドにとっては人件費の削減。消費者にとっては待ち時間のない。双方にとって快適なサービスの実現が期待されている。

「LINE カスタマーコネクト」のような、チャットボットを導入する海外ファッションECの事例は枚挙にいとまがないが、いよいよ日本国内でもサービスが本格化しそうな気配。今回は、人工知能の発展にともない、私たちのショッピング体験はどう変わろうとしているのかについて考えていく。

 

1.UNIQLOが手がける人工知能サービス「UNIQLO IQ」とは?

チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験 UNIQLO IQ
UNIQLO IQ

2017年3月16日、ファーストリテイリング(代表取締役会長兼社長:柳井 正)は、人工知能を活用したコンシェルジェサービス「UNIQLO IQ」を発表。人工知能のコンシェルジュがお目当ての商品や近隣店舗の商品在庫状況について、チャット形式で答えてくれるという、スマートフォン向けのサービス。現在は、Facebook Messengerをプラットフォームとしてアメリカで実証実験中という段階で、国内での導入については決定していない。

投げかけられた質問に対してテキスト入力し、アイテムを選り分けていくという典型的とも言える内容で、仕組みやUI自体にはとりわけ斬新さはないが、国内最大手のファストファッションブランドが手がけているという点には注目したいところ。

短いサイクルで低価格な商品を提供するというファストファッションは、膨大な商品群の中から欲しい商品を速やかに探し出し、手軽な買い物を可能にしてくれるチャットボットと、とても相性が良いと思われる。在庫や類似商品、さらには価格などについて、消費者の知りたいことに速やかで正確な答えを用意してくれるチャットボットは、従来のファストファッションを、より手軽にしてくれる。リアル店舗に足を運ぶどころか、自ら商品を検索する必要さえないとなれば、人工知能を活用したチャットボットを利用したショッピングを歓迎する消費者も多いはずだ。

欧米では浸透しつつあるチャットボットだが、国内のファッションECにおいて実用的な“コンシェルジュ”と呼べるレベルで導入されている例はあまり見られないのが現状。国内最大の売り上げを誇るUNIQLOにおいて導入されたチャットボットサービスが広く消費者層に浸透し、その効果が業界全体に波及するならば、ファッションECを取り巻く状況が大きく変容する可能性があると言えるだろう。

 

2.現時点での人工知能の限界と可能性

効率的で便利なサービスである一方、現時点での人工知能を利用したチャットボットには欠点もあります。

チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験
shutterstock

例えば、オートクチュールのようなハイエンドファッションにおいては、ショーへの招待、ドレスアップしての観覧からフィッティングを経るという一連のプロセスに付随するショッピング体験そのものこそ「商品」なのであり、チャットボットを使ったコンシェルジュのような手軽さが求められることはない。オートクチュールでなくとも、代替品のないヴィンテージものなどの特別な商品を求めるラグジュアリーな消費者にとって、色や形が似ているというだけの人工知能によるレコメンデーションは、それ自体が意味をなさないのだ。

そんな中、ニューヨークに拠点をおくスタートアップ、PS Dept(CEO:Michelle Goad)は、アプリ上で人工知能とプロのスタイリストとが“分業”する形でオンライン接客するというサービスを提供している。例えば、「インスタで見つけたこのシャネルのバッグが欲しいんだけど、どこにも売ってないの。助けて!」「あの女優が来てるコートってどこのもの?」といったパーソナルで、漠然とした質問に答えてくれるという画期的なもの。

チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験 PS Dept
探している商品を見つけ出してくれる - PS Dept.

ネット上の情報だけでなく、各店舗やブランドの在庫にまでアクセスすることで、140万点以上の商品群の中から人工知能ボットが速やかにおすすめ商品を選出。それらの全てをたった5人の人間がチェックしているというから驚きです。

PS Deptは、人工知能の効率の良さや便利さと、高品質の人的サービスとをうまく掛け合わせることで、EC時代ならではの「おもてなし」を提供していると言えるかもしれない。SNSで憧れの人が身につけていた商品が見つかるというシンプルな要素だけを取り上げても、ワクワクするショッピング体験ができる意味で、現時点での一つの理想的な形と言えそうだ。

 

3.ECが実現するかもしれないまったく新しいショッピング体験

2017年の4月12日、中国の清華大学の研究チームは、人間との会話において感情的な要素を認識・分析しながら、人間の共感を誘う会話ができるチャットボットを開発したと発表しました。まるでスパイク・ジョンズの映画『her/世界でひとつの彼女』(2013年)に出てくるような新しいフェーズの人工知能の到来といえる。

チャットボットがECの未来を変える? - 人工知能の進化で変わるショッピング体験 her
her

現時点では、人工知能の膨大な情報量や計算能力をもってしても、人間にしか対応できないサービスも少なくない。しかしこの先、テクノロジーが進化するにつれて、ファッションECひいてはファッション小売全般において、ヒューマンリソースが全く不要になることも十分に考えられる。

その時は、もしかしたら、衣服を売る側だでなく、買う側にもヒトはいないかもしれない。オーナーの好みやサイズ、懐事情、着用するシーンまでをも完全に学習済みのチャットボットが、オーナーに代わってECのチャットボットと会話して、“最適な”商品を選んでくれるというわけだから。

ファッションECがテクノロジーを利用してこのまま効率や便利さを追求し続けるなら、そうしたちょっとシュールな未来の到来があり得ないとも言い切れない。サイズも好みもぴったりの衣服が一切のストレスなしに入手できるとしても、もはやそこではショッピング体験が完全に失われてしまっているからだ。

やはり、ファッションECにおけるテクノロジーとは、ヒトの代わりに効率性を高めるためだけに存在するのではなく、ヒトを楽しませるもののほうがいい。たくさんの商品の中から、まるで宝探しでもするみたいに商品を選りすぐったり、友達とお気に入りのお店に出かけたり、そんなワクワクするような体験をもっと劇的にしてくれることを、私たちはテクノロジーに期待しているはずなのだから。

もしも、私たちのちょっとした表情の変化や心の動きを読み取って呼応したり、助言をくれたりするようなチャットボットがいてくれたら、私たちのショッピング体験は今よりずっと充実したものになるだろう。

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by members.psdept.com

FASHION EC Lab



PICK UP

SPECIAL

LATEST

BUSINESS
LATEST