Business | 2017.07.10
テクノロジーとECのほどよい距離感 - “ストーリー”を語るストアとは?

テクノロジーとECのほどよい距離感 - “ストーリー”を語るストアとは?

テクノロジーを駆使したECマーケティング手法がせわしなくひしめきあい、ITの力に頼ることで、いかにスムーズに収益を生み出すかということに注目が集まる。そんななか、テクノロジーとほどよい距離感を保ちながら、ひときわ個性を放つECサイトの例として挙げられるのがスタイルストアだ。

スタイルストアとは?

スタイルストアウェブサイト–STYLE STORE

スタイルストアは、株式会社エンファクトリーが運営するECサイトで、開設は2005年。ファッションアイテムを中心にインテリア雑貨から家具、食品にいたるまで、ライフスタイル全般に関わる様々な商品を取り扱っている。

ジャンルを問わず、バイヤーによって吟味された、モノづくりにこだわりのある生産者による特別感のあるアイテムが主力をなし、これまでに多くのベストセラー商品が生み出され、リピーターが多いことでも知られている。

消費者目線の商品説明

スタイルストアが取り上げる商品の説明からは、控えめな筆致ながら、アイテムに込められた思いの熱量の高さをうかがい知ることができる。商品説明としては敬遠されることも少なくない主観を存分に取り入れるスタイルは、やはりECとして成功をおさめている「北欧、暮らしの道具店」などと同様、アイテムユーザの立場に寄り添ったものだ。例えば…

“当店の限定品の帽子を手掛けているTERAIcraftment(テライクラフトメント)のデザイナー武市さんとの商談の場で驚いたことがありました。
それは、「真夏に帽子をかぶりたくないって方が意外と多い」という事。
紫外線対策に帽子はマストアイテムだと思い込んでいた私ですが、その理由を聞いて納得しました。
本日ご紹介するのは、夏に起こる「あの問題」を解消する、夏にかぶる事だけを考えて作った帽子です。”

–TERAIcraftment/カディコットンリボンハット

“夏の帽子をかぶる時に起こる最大の問題は、帽子の内側のおでこ部分にあります。ここは汗と皮脂、さらにはファンデーションがついてしまう場所。
帽子を脱いだ時、この汚れが恥ずかしくて、脱ぐのをためらう方、多いのではないでしょうか。武市さんのもとにも、夏の帽子はこの汚れ問題が気になるので、「かぶりたいけどかぶれない」。そんなお声が多く寄せられていたようなんです。そこで考えたのがこちら。内側のスベリ部分を取り外せるようにしました。”

–TERAIcraftment/カディコットンリボンハット

また、コートの商品説明は次のような具合だ。

“「今日は雨だから出かけるのはよそう・・・」が増えがちな梅雨時期。これがあれば、そんな日のおでかけも快適に過ごせるかもしれません。”

–プレーンレインコート商品説明

“どしゃぶりの時には向きませんが、小雨であれば、これを着て家路を急ぐ、ということもできますし、バッグの中にあれば安心な一着。”

–プレーンレインコート商品説明

価格やサイズ、素材といったスペックに加えて、商品を使用するシーンや実際の使用感などが、ライター自身の言葉によって語られていく。商品ができあがる背景や過程、生産者のこだわりに加えて、それもまた、「ここでしか出逢えない、ストーリー」の一つとしてスタイルストアが重視しているものだ。

本来はスマートフォンやパソコンのモニターの中にしかない二次元の画像データでしかないものに、イメージを喚起しやすい、平易で臨場感のある言葉を添えることで、少しずつ“等身大”の情報が肉付けされていくというわけだ。

デジタルデバイスの普及によって、見映えのするモデル画像や洗練された動画といった視覚的要素を重要なコンテンツとして位置付けるUIが主流となり、コンバージョンにいたるまでのスピード感が重視される中で、一つの商品を紹介するのに幾度となくスクロールを促し、1,000から2,000字という“膨大な”テキストによって、リアリティを追求する情報提供のあり方が一定の支持を集めていることは、特筆に値すると言えるだろう。

あえてテクノロジーに依拠しないというEC施策の可能性

生産者と消費者とを媒介するゲートキーパーとしての役割に力を入れてきたのもスタイルストアの大きな特徴だ。取り扱うファッションアイテムのなかには、自社工場で生産する、いわゆるファクトリーブランドによるものも多い。消費者の声を吸い上げ、生産者にフィードバックするというプロセスに積極的に関与してきた。

オンライン決済サービスや“See Now Buy Now”といった、手軽さやスピード感を重視するテクノロジーに依拠したEC施策の多くは、そうしたスタイルストアのような小回りの効いた販売スタイルとは必ずしも親和性が高くない。

実際、スタイルストアでは、現在もメールマガジンが販促活動の重要な根幹の一部をなしており、メルマガへの消費者の反応はかなりのものだという。ECの施策としては従来型の範疇に入るし、ショッピングアプリのローンチ、LINEアカウントの開設も2017年に入ってからとマイペースだ。Instagramの公式アカウントでも、ECで展開される商品の画像とテキストが移植されているだけで、SNSとECとをダイレクトにつなぐような最新の施策はとられていない。

にもかかわらず、ECとして成功をおさめているスタイルストアの事例は、それ自体がテクノロジーの産物であるにもかかわらず、ECにとって、あえてテクノロジーに依拠しないという、いわば逆説的な方向性のありようを示唆していると言えるかもしれない。

技術決定論では語りきれないECの未来

AI、IoT、VRなど、次々と現れる新奇なテクノロジー。誰かが「いい」といえば、足並みを揃えるかのように追随し、後になってそれほど大発明でもないと分かれば、速やかに軌道を修正する。それこそが技術の進歩の正当なあり方であり、ファッションECもまたそのように進化してきた。新しいテクノロジーの登場は魅力的で、社会を大きく変容させもするが、決定論的なイデオロギーでECの未来を予測することができないことだけは確かだ。

スタイルストア

http://stylestore.jp/

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by Instagram

DiFa編集部



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