Business | 2017.09.01
ファッションビジネスの新潮流 - D2CはECに新たな価値を生み出せるか

ファッションビジネスの新潮流 - D2CはECに新たな価値を生み出せるか

アメリカのファッション小売業界では、リアル店舗を削減するニュースが後を絶たない。2017年に入ってからも、すでに破産法の適用を受けているアメリカンアパレルが104店舗を閉鎖するほか、アバクロンビー&フィッチ、ゲスがともに60店舗の年内閉鎖をアナウンスしている。ラルフローレンにいたっては、ニューヨークの5番街にある旗艦店を閉じるという。

そんな中、アメリカでは、生産から販売に至る過程を徹底的に効率化し、EC特化型の販売モデルによって大幅な低価格化に成功した、いわゆるD2Cブランドの台頭がこのところ目覚ましい。日本でも、EC市場の拡大に伴い、リアル店舗の維持費をはじめ、旧来のファッションビジネスのあり方が問題視されるようになってきた。D2Cモデルとファッションビジネスのこれからについて考えてみたい。

“Direct to Consumer”とは何か?

BONOBOS

D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)とは、商品を自ら企画・製造し、第三者を介さずに消費者に販売するビジネスモデルのこと。従来発生していたマージンを無くすことでコストカットし、品質を維持したまま商品の低価格を実現することが可能だ。

また、販売の主軸がECに置かれるのも大きな特徴だ。D2Cにおいて、リアル店舗の維持は削減可能な不要なコストというわけだ。こうしたビジネスモデルを取り入れたファッションECは、2000年代の後半頃に登場し始め、今や大きな潮流となりつつある。

アパレルD2Cの成功事例としてよく取り上げられるのが2017年6月に米ウォルマートが買収したことで話題となったメンズアパレルブランド、ボノボスだ。スタンフォード大学ビジネススクールを卒業した若者らによって2007年に創立。試着可能なガイドショップを全国に設置し、オンラインのみで販売するというスタイルを徹底。圧倒的なコストカットによる革新的なビジネスモデルを構築し、質の高いカスタマーサービスを武器に、近年の売り上げが1億ドルとも、1億5,000万ドルとも言われるほどまでに成長を遂げた。

D2Cモデルにおけるブランディングの必要性

–Shutterstock

たしかに、D2Cモデルによって、ファッションECは従来よりもかなりの低コストで商品を生産することが可能になる。低価格化が実現すれば、売り上げが伸びることも期待できるだろう。ところが、生産から販売までの過程をEC運営者がすべて手がけるのはそう容易なことではない。仮に品質の良い商品を開発し、あらゆる面で効率化が進められたとしても、商品の存在を周知したり、その魅力を消費者に対して的確に伝えたりするためには、巧みなマーケティング戦略が必要だ。

例えば、全く同じ商品に違うタグが付いていて、一方に知っているブランド名が、もう一方には知らないブランド名が付いているとする。いずれの商品が全く同じものだと仮定するなら、特にネガティブなイメージを持っていない限り、多くの人は知っているブランドの商品を購入するに違いない。つまり、D2Cモデルにおいては、ブランディングをはじめとするマーケティング戦略が従来に増して重要になるというわけだ。

D2CモデルにおいてECが模索するべき新たな価値の創造

今後、ファッション市場の中心的なプレーヤーとなるのはミレニアル世代だ。彼らの関心事である組織の透明性、生産者とのフェアな取引や地球環境に取り組むのもいいだろうし、他のECとの決定的な差別化を可能にするような仕掛けを用意するのでもいい。いずれにしても、D2Cモデルの存続は、低価格や利用の手軽さだけではなく、ECでしか実現し得ないワクワクするようなショッピング体験を提供できるかにかかっていると言えるだろう。

BONOBOS

https://bonobos.com/

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by Shutterstock

DiFa編集部



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