Business | 2017.10.03
ファッションデザインにおいてAIができること、できないこと

ファッションデザインにおいてAIができること、できないこと

ファッションデザインにおいてAIができることとできないこと - Amazon AIがランウェイに登場する日は近い?

アマゾンがAIファッションデザイナーの開発を計画中だ。AIが緻密なマーケティングを経て世に送り出すデザインは、将来的に大きな需要を生むに違いない。人間のデザイナーはもはや不要となるのか?また、ファッションECサイトがとるべき立ち位置とは?

ますます連携を強めるAIとファッション業界

–パーソナル・スタイリング・サービス STITCH FIX

ファッションの分野でAIが活躍するのを見かける機会が増えてきた。なかでも最も顕著で目立つのは、コーディネートサービスだ。例えば、AIとスタイリストとが協業してオンラインパーソナルスタイリストサービスを提供する米STITCH FIXは、2017年には年商7億3,000万ドルに達している。セールを一切行わないことでブランドとしての信頼を獲得し、ブランドの価値を下げることを危惧してこれまではEC展開をあえて避けてきたファッションブランドまでもを取り込むことに成功している。

–Softwear Automation

また、AIの助けを得ることで、生産性を驚異的に高めるという取り組みも注目されている。米SoftWear Automationは、これまで難しいとされてきた衣料品のオートメーション化を可能にするロボットを開発。Tシャツなら8時間でおよそ1,142枚の縫製ができる。実に17人分の労働力と等価だという。

そんなファッション業界におけるAI分野で最大の事件となりそうなのが、米Amazon.comがAIデザイナーを生み出そうとしているニュースだ。研究チームは特定の画像からファッショントレンドやスタイル特性を学習し、同じような商品を新たにデザインし製品化するアルゴリズムを開発中。SNSに投稿された画像などの膨大なデータを集積・分析することで、いわゆる“おしゃれ”なもの(要素)をパターン化し、ファッションデザインに落とし込むことができるというわけだ。

AIと親和性が高いファッションデザイン

Shutterstock

AIによるトレンドをふまえたスタイリッシュなデザインが実現するなら、ファッション業界において企業デザイナーがこれまで従事してきたことの多くを、AIが代行できるようになる。集積された膨大なデータの分析はAIの得意分野だ。

画像や言説から消費者の好みやトレンドを解析し、ブランドの特性も加味しながら新しいデザインを生み出す作業は、一部の“センスのある人々”にしかできない作業と見なされてきた。加えて、AIは蓄積された服飾の歴史やデザインの系譜に関するおびただしいデータを掌握し、容易にアクセスが可能。

素材や色の相性や、パーツ、ディテール同士の組み合わせ事例などについての知識を元に、シーズンごとの“正解”を導き出すことは、AIにとって容易なことであるに違いない。需要のさらに深い部分へと切り込むことができるAIの力をもってすれば、人間のデザイナーやプロダクトマネージャーには見通すことができない領域にまで達するのも時間の問題だろう。

そうなれば、パリやミラノのランウェイにAmazon AIブランドが登場する日もそう遠くないかもしれない。

AIによるデザインはクリエイティブと言えるのか

An efficient bandit algorithm for realtime multivariate optimization

確かに、アルゴリズムを洗練させることで、AIはトレンドや消費動向などに関する膨大なデータを、多くの人がスタイリッシュと思えるような製品へと“変換”することができるだろう。

しかし本来、ファッションデザイナーの仕事とは、データの集積や具体的なデザインへの変換には還元できない要素に満ちているものだ。ファッションとは商業デザインであると同時に、精神や感覚に訴えかける表現物でもあり、ファッションの歴史はユニークな経験と豊かな感情を持つデザイナーと消費者との“共感”の歴史でもある。

だとすると、トレンドを読み解くことや予測すること、それらを元に新たなデザインを作り出すという行為は、それだけではクリエイティブと呼ぶには少し物足りない。あらゆる要素を組み合わせるだけでなく、経験や記憶、感情の起伏といった予測不能な要素、そして死に対する恐怖や不安が化学変化を促し、従来の方程式では導き出せない新たな価値を創造するところにファッションデザインの醍醐味があるはずだ。そうしたいわば“発明”こそがデザインの本質とするなら、AIがその領域に足を踏み入れるには、もう少し時間が必要だろう。

AI時代にファッションECが目指すべきものとは

Amazon AIが志向するのは、それほどファッションにこだわりがないマス層に向けた万人受けするデザインだ。しかも、Amazon.comの徹底的な生産管理によって低価格化が実現されるとなれば、同じターゲットを相手に中小規模なファッションECが同社と戦うのは難しいかもしれない。

となれば、ファッションECが生き残るためには、Amazon.comとは別の道を目指すのが得策と言えそうだ。例えば、当面のあいだAmazon AIには不可能とされる“発明”によってコア層に訴求する商品の開発を目指すのもいいだろうし、商品の魅力を相殺して余りある劇的なショッピング体験を追求するというのも有効だろう。ファッションECは、Amazon.comとは別のベクトルでAIを活用しながら各々の存在意義をより明確なものにする必要に迫られている。

STITCH FIX

https://www.stitchfix.com/

SoftWear Automation

http://softwearautomation.com/

Amazon.com

https://www.amazon.com/

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by Shutterstock

DiFa編集部



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