Topics | 2017.10.05
3Dプリンターで実験的服作り。NY発「HEISEL(ハイゼル)」とは

3Dプリンターで実験的服作り。NY発「HEISEL(ハイゼル)」とは

ファッション業界でも3Dプリンターを使用するクリエイターが増えてきた中、ニューヨークにも3Dプリンターを使い実験的な服作りをするブランドがあった。マンハッタンのとあるアパートの一室に、3台の3Dプリンターが異質に並んだスタジオを拠点に活動するファッションブランドの「HEISEL(ハイゼル)」。HEISELのクリエイティブディレクターを務めるSylvia Heisel(シルビア・ハイゼル)は、2016年に3Dプリンターで作った「3D Printed Coat」と「3D Printed Dress」を発表し、積極的にテクノロジーを取り込んだ服を製作している。

1着400時間。重ねてきた失敗

プリンターで作る服と聞けば、簡単にそして早く作れると想像していたが、実際の製作過程では膨大な時間と労力が注ぎ込まれていた。例えば、「3D Printed Coat」では、3Dプリンターで作った小さなパネルをつなぎ合わせて作るため、その小さなパネルをプリントする必要があり、1枚のパネルをプリントするのに4時間は必要だという。初めて「3D Printed Coat」を製作した時に、必要なパネルをプリントするに400時間はかかったという。シルビアは当時を振り返り、「全てが大変でした。デザインソフトの使い方や使用するファイルの互換性の違い、適切な素材を見つけるのも大変でした。しかし失敗を重ねてながら何度も試していくうちに、スムーズに製作できるようになっていき、今では200時間で完成できるようになりました」と話す。

シルビアがファッションを変える力を持つテクノロジーに興味を抱くようになったのは、長年ファッションデザイナーとしての活動を通して感じた、新しいものが生まれ難い業界の環境が原因だった。そして10年ほど前にファッション業界から距離を置いたシルビが参加するようになったのは、ウェアラブルテクノロジーに関するイベントだった。「当時、イベントの参加者はエンジニアだけで、ファッション業界の人なんて1人もいなかったので、奇妙な目で見られていたのを覚えています」とシルビア。

ファッション業界の未来を変える3Dプリンター

そんなシルビアに転機が訪れたのは5年前。彫刻家で夫のScott Taylor (スコット・テイラー)と3Dプリンターを買ったことだった。その後、3Dプリンターで作ったiPhone ケースなどを製作し、服を作るようになった。しかし3Dプリンターでの服作りはまだまだ実験段階で、その可能性を模索しているという。シルビアはファッション業界における3Dプリンターの将来性について次のように語る。「3Dプリンターは製作過程で生まれる廃棄物が少ないのが大きな特徴です。従来の服作りのように製作中に布の切れ端などを生み出すことはありません。3Dプリンターは将来的に服作りの新しい選択肢の1つになると思いますが、現在の服作りの方法から完全に取って代わることはないと思います」。

また3Dプリンターを使用することで、人それぞれのサイズに合った服を簡単に作ることができるなど、柔軟な服作りが可能になる。ファッション業界全体で考えると、服が作れる3Dプリンターの開発が進めば、必要な労働者や機械、設備が少なくなり、工場の規模も小さくなりる。それにより店舗と工場を併設することも可能で、需要や顧客のサイズに合わせて店舗での服作りが可能になっていくという。

実用化の前に立ちはだかる問題

ファッション業界における3Dプリンターのさらなる台頭を期待せずにはいられないが、より実用的な運用の前に解決すべき問題は多い。シルビアは、「現在の3Dプリンターはプリントするのに時間がかかり過ぎる」と指摘する。そしてその多くが自動車など大きな産業向けに設計されており、服をプリントするために設計されていないという。またスケッチや布など平面でデザインしているファッションデザイナーにとって、3Dプリンターでデザインすることはまだまだ大変なことだという。

現在ソーラーパネルを使ったヒーター機能が付いた3Dプリンターベストを開発中のシルビアは、「3Dプリンターには改善の余地があるので、使い続けていきたい。また自分は飽き性なので、さまざまなプロジェクトにも挑戦していきたい」と語った。

HEISEL

http://www.heisel.co

Akihiko



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