Business | 2015.12.04
adidasが2016年ドイツにオートメーションファクトリーをオープン!生産の自動化が示すファッションの未来とは?

adidasが2016年ドイツにオートメーションファクトリーをオープン!生産の自動化が示すファッションの未来とは?

アマゾンなどの通販で商品を注文すると、いつ商品が発送されたか、いまどういう状態なのか、オンラインで追跡できることは、今や常識ですね。しかもその商品が当日中に届くなんて、何もかもがスピードアップしていく世の中に驚かされます。まだまだアナログな手仕事も多い、ファッションの世界ですが、adidas(アディダス)から「完全自動のファクトリーをオープンする」という驚きのニュースが発表されました。

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TK Kurikawa / Shutterstock.com

ファッションはオートメーションの時代へ

adidasはドイツのエンジニアリンググループ「Manz(マンツ)」と技術契約し、「Speed​​factory(スピードファクトリー)」と呼ばれる、シューズの新たなオートメーション工場を開発。その画期的な工場はadidas本社近く、南ドイツのアンスバッハに2016年にオープン予定とのこと。

adidasといえば、先日DiFaでもご紹介した3Dプリンティングの技術開発にも積極的な、アパレルのデジタル化を推進しているイノベーディブな企業です。これまで同社は国ぐるみで技術開発を行ってきており、今回の完全自動ファクトリーは、ファッション・アパレル業界にとって、生産をデジタル化していく大きな引き金になるのではと話題を呼んでいます。

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gyn9037 / Shutterstock.com

ドイツの国策「インダストリー4.0(第4の産業革命)」とファッション

ドイツは2000年代半ばより「インダストリー4.0(第4の産業革命)」と呼ばれる官民一体の製造業イノベーション政策に取り組んできました。これはインターネットを通じてあらゆるモノ・サービスをデジタル化させることにより、ダイナミックに生産工程を効率化させ、コストを削減し、収益を増加させるという取り組みです。2016年にadidasがオープンする工場は、ドイツで初めての完全に自動化された靴工場ということになります。

通常、ファッションアイテムの生産は、約1年前にデザインを組み立て、半年前に展示会をし、工場への発注から店頭への納品まで2〜3ヶ月を要します。つまり、今店頭に出ているアイテムは1年も前にトレンドやマーケット動向を予測して企画されたものということです。1年も先のことですから、当然、予想が外れて在庫が残ってしまうということもあります。ダウンコートがトレンドだと予測したのに暖冬で全く売れない、ガウチョパンツが予想を超えた人気に品切れ続出……などといった問題はファッションブランドの大きな悩みのひとつになっています。

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S. Chum / Shutterstock.com

これをデジタルテクノロジーを活用することで解決できる道筋があるのです。店頭の売れ行きと顧客情報をオンラインでリアルタイムに取得し、その膨大なデータを自動で分析しながら、生産システムと連動したものづくりをすることによって、トレンド予測のブレが少なくなり、無駄なものを作らなくて済むので、在庫を圧縮できます。ファッションブランドは在庫が残ってしまうリスクも含めて商品の値段を決めているので、売れ残りをできる限り減らし、クイックで効率的な生産をすることは、ブランドにとってはコストが下がり収益が上がり、顧客にとっては良いものが安く購入できるということに繋がります。無駄なものを生産しないことは、環境への配慮にも繋がります。

adidasが目指すこと―よりファッショナブルな商品をより早く!

adidasは、オートメーションファクトリー開業の目的について「ファッションに敏感な顧客へのデリバリーをスピードアップし、輸送コストを削減する」と触れています。アパレル工場におけるものづくりについては、その製品の複雑さと多様化から、実はオートメーション化できている工程というのはほんのわずかです。何百足、何千足と手を動かしていく中で、工員が作業に慣れ、不良品が減り、生産のスピードアップをすることによって工場は利益を上げられます。生産が軌道に乗り出すには、ある程度数量が必要なので、小ロットでは工場にとって効率が悪いのです。

このように生産工程は人の手に頼る部分が多いので、多くの生産地は中国、ベトナム、バングラディシュなど人件費の安い新興国にあります。しかし、主な供給先であるヨーロッパ諸国へは距離がネック。船便では2週間〜1ヶ月近くかかってしまいます。

adidasのオートメーションファクトリーは、テクノロジーの力でこの問題を解決しようとする画期的な取り組み。工程の自動化により、初めから熟練の職人のようにトップスピードで生産をスタート、システムと連動させ、多様化するデザインに即座に対応、フレキシブルに生産ラインを組み変える。これができれば、小ロット・ローコストでの生産が実現し、なおかつファッション感度の高い顧客の多い、ドイツ近隣のヨーロッパ諸国へクイックなデリバリーが可能となるのです。

adidasは、ドイツ国内でのこの取り組みが成功すれば、これをモデルとして新興国でもオートメーションファクトリーを開業し、同じようにアジア、アメリカのファッショナブルな顧客へ、全自動生産による商品の供給を始めるのではないでしょうか。新興国に全自動の工場を開業することは、人手不足の解消や従業員の労働環境の改善にも繋がります。

コストカットの究極系はデジタルオートクチュール?!未来のファッションのあり方とは

リアルタイムの膨大なデータを蓄積、分析することにより顧客が本当に欲しいものだけを生産し、在庫を圧縮する。多様化・細分化するニーズに答えて、様々なバリエーションのデザインをスピーディーに顧客へ届ける。この2つを追求すると、デジタル化によるコストカットの究極は、顧客によるカスタムオーダー、つまり「デジタルオートクチュール」になるのではないでしょうか。

例えば、いつものオンラインショップにアクセスして、理想のウェアをカスタマイズ。(ショッピングで、ココがもうちょっとこうだったらいいのに……ってこと、ありますよね!)注文を確定すると、そこからオートメーションの生産が始まります。――「デザインの確認をしています」「材料のピックアップが完了しました」「縫製を開始しました」「最終検品を実施しています」「商品の出荷待ちです」「配達中です」――というふうに、自分だけのオーダーメイドアイテムが出来上がっていく様子をオンラインで追いかけられるようになる未来は、すぐそこかもしれません。

19世紀、ヨーロッパでオートクチュールが誕生してから150年。既製服の工業化と大量生産、ブランドのグローバル化、ファストファッションの時代を経て、デジタルの力でまたオートクチュールへ戻る? ――未来のファッションのあり方はどのようになっていくのでしょうか。その先端を切り開く、adidasの動向から目が離せません。

DiFa編集部



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