Business | 2017.11.02
「See now, buy now」でわかったこと - ファッションECとライブ感の親和性について

「See now, buy now」でわかったこと - ファッションECとライブ感の親和性について

ファッションECにおいてライブ感や臨場感に重きがおかれるようになってきた。例えば、国内ではライブコマースが人気を博し、海外のランウェイでは「See now, buy now」が定着しつつある。ミレニアル世代が消費をリードする時代を迎えようとする今、ファッションECにとって、ファッションショーはどのような存在であるべきだろうか。

ますます重宝されるライブ感

ハンドメイドの作品をライブで販売できるアプリ–Laffy(ラッフィー)

国内ではこのところ、ライブコマースが賑わいをみせている。DeNAによるライブ配信フリマアプリ「Laffy」、Candeeによるライブコマースアプリ「Live Shop!」、メルカリが提供する「メルカリチャンネル」、Candleによる動画アプリ「MimiTV」など、個性豊かなサービスが出揃ってきた。リアルタイムで行われる双方向コミュニケーションがライブ感を掻き立て、これまでなかったショッピング体験を実現していると言えるだろう。

そうしたライブ感をランウェイにもたらそうとした取り組みが、2016年に急激に盛り上がりを見せた「See now, buy now」であった。バーバリーやトム・フォードといった名だたるブランドが乗り出し、ファッション界の話題を集めたのは記憶に新しいところだ。

ライブ感や即時性を求める新たな聴衆に向けて、ショーの模様はライブ配信され、終了するとすぐにECサイトやソーシャルメディアのプラットフォームから新作アイテムを購入できるサービスを開始。発表から発売まで半年もの時間を要していたファッションのサイクルは大幅に短縮され、ファッション界の革命とする声まであらわれた。

「See now, buy now」のゆくえ

こうした動きには多くのブランドが同調し、大きな潮流となると思われたが、2017年に入り若干落ち着きを見せているようだ。「See now, buy now」をリードしてきた立役者の一人であり、「長い納期は時代遅れだ」とまで言い放っていたトム・フォードが、コレクションの発表を従来の日程に変更した。トム・フォードによれば、「See now, buy now」に取り組むために、スケジュールや物流の都合上、コレクションの数ヶ月前に店舗に新作を納品したにもかかわらず、ファッションウィークで発表されるまで販売を控えなくてはならなかったという。本来あるべきはずの売り上げが損なわれたことに、彼自身が大きな不満を感じていたようだ。

Experience the Fashion Show–RALPH LAUREN

もちろん、ラルフ・ローレンなどのようにライブ配信を実施し、コレクション発表終了後に新作を販売するブランドも少なからず存在している。このように、「See now, buy now」への意見やスタンスはブランドによって分かれるにしても、ソーシャルメディアの普及によってファッション業界を取り巻く状況が一変し、ショーが単なるコレクション発表の場ではなくなったことは明らかだ。

今まさに変わろうとするショーとファッションECの関係

ニューヨークでは、新作発表をライブストリーミングによってのみ行うブランドや、ソーシャルメディア上で発表しようとするブランドは少なくない。即時性を重んじるミレニアル世代にとって、発表から発売まで半年も待たされるというのは、確かにトム・フォードが言う通り「時代遅れ」なのかもしれない。ファッションECにライブ感や臨場感をともなったショッピング体験が求められる傾向は、今後ますます強まるはずだ。

こうしたミレニアル世代の需要に応えようとするには、緻密に計算されたサプライチェーンの存在が欠かせない。即時性を満たしつつもビジネスとして成立させるには、欠品による機会損失も売れ残りも許されないからだ。ところが、現在のファッション界のシステムでは、商品の企画から売り上げ予測、資材の調達に生産、輸送、販売にいたる全てのプロセスを、ソーシャルメディア時代の消費のスピード感に合わせて完全に制御するのは困難と言わざるを得ない。

消費動向が移り変われば、ファッション界の仕組み自体も変化を余儀なくされる。ミレニアル世代の消費者が、あくまでライブ感と即時性を求めるのであれば、新しいスケジュールに合わせて生産のシステムが再構成されることになるはずだ。「See now, buy now」はまさにシステムが変わろうとする過渡期に登場した時代の申し子に他ならない。新しい時代にふさわしい姿を模索して、ショーやECがかたちを変えていくのを私たちは目撃することになるだろう。

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by Shutterstock

DiFa編集部



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