Business | 2017.11.08
集客か、ブランドイメージか?:パルコのECサイト運営代行サービスに見るファッションECのジレンマと展望

集客か、ブランドイメージか?:パルコのECサイト運営代行サービスに見るファッションECのジレンマと展望

多くのラグジュアリーブランドがAmazon.comでの販売に踏み切るなか、グッチを擁するケリングやルイ・ヴィトンなどを抱えるLVMHのように、依然Amazon.comからは距離をとろうとするブランドも少なくない。

排他性やブランドイメージ、価格を維持するのか、それとも集客力や運営コストの削減を優先するのか、の選択が迫られるため、ファッションブランドがECサイトとどう関わるかは、その後の経営のあり方にも大きく影響を及ぼすことになる。ファッションブランドにとって、ECサイトを自社で立ち上げるか、それともアウトソーシングするかは大きな問題なのだ。そこで、このごろ登場したECサイト運営代行サービスを取り上げ、ファッションブランドとECとの関わり方について考えてみたい。

パルコがECサイト運営代行サービスを開始

新しい発見を発信し続けるパルコ発の自主編集ショップ - ミツカルストア(MEETSCAL STORE)

2017年9月、株式会社パルコ(取締役兼代表執行役社長:牧山浩三)は、ファッションブランド直営のECサイトを運営代行するサービスの開始を発表した。パルコでは、青山・池袋・福岡にて展開する自主編集セレクトショップ「ミツカルストア(MEETSCAL STORE)」のECサイトを2015年より運営。以来、商品詳細ページの展開方法やプロモーション戦略・在庫管理・決済・物流など、EC運営のためのノウハウを蓄積してきた。

ミツカルストアの特徴は、ブランドの世界観やデザイナーの思いなどを自由に表現、発信できるという点だ。商品の制作過程を詳細に紹介したり、国内外で開催されるファッションショーをストリーミング配信したりと、充実したコンテンツによる情報発信が可能になるという。ブランドと協同してサイトを立ち上げることで、“もう一つの公式サイト”としての位置づけを目指している。

自社ECサイトとECモール、一長一短

gelato pique

デザインをカスタマイズできる自社ECサイトを構築することで、ファッションブランドはブランディングが自由に行えるほか、顧客データの収集や、蓄積した情報を元に、独自の施策を実施することが可能になる。

ただし自社ECサイトを立ち上げようとする場合、集客運用から、ページデザイン、コーディングや撮影、商品情報の登録、受注処理や在庫の管理、梱包や発送、カスタマーサービス、決済・代金回収に至るまで、EC特有の業務が必要になる。いずれもコストや相応のスキルが求められるため、自社ECサイトを立ち上げる代わりに、ECモールを利用するブランドも少なくない。

モール型ECサイト - Amazon

他方、ECモールには高い集客力、商品検索のしやすさ、充実したサポートなどのメリットがある反面、発信できる情報に制限がかかるという弱点がある。

各ECプラットフォームの特性に応じて各ブランドの商品が横並びに陳列され、ブランドの世界観を表現するための特集ページの設置や独自の施策を展開することが難しいため、個々のブランドが消費者に対して世界観を表現しきれなかったり、商品の特徴について伝えきれないなどの不満もあるようだ。

ECサイト運営代行サービスの強み

ANREALAGE MEETSCALストア

従来のECサイト運営代行サービスでは、運営の効率化や、運営担当者の採用・育成にかかるコストの削減などに焦点が当てられることが多かった。パルコが標榜するのは「ブランドが世界観や作り手の思いを伝える事ができるECサイト」の構築。ECモールや従来のECサイト運営代行サービスではなかなか手が行き届かなかったブランディングにおいても、協業が行われることになるわけだ。

インタビューなどの特集ページ - Interview

例えば、パルコが最初に手がけることとなった「ANREALAGE」(アンリアレイジ)については(2017年9月26日オープン)、オリジナル動画による商品紹介やデザイナーの森永邦彦氏のインタビューを掲載。ファンに向けて、ブランドの世界観やメッセージが伝わりやすい内容となっている。

オリジナルの動画を使った商品紹介も活用 - Sony SmartWatch 3

また、ミツカルストア別注品が展開されるほか、パリに発表の場を移した2014年以降のコレクションを展示するイベント“A LIGHT UN LIGHT”をパルコミュージアム(池袋パルコ・本館7F)にて開催するなど、ブランドのプロモーションにパルコが積極的に参加しているのが印象的だ。

PARCO ARTさん(@parco_art)がシェアした投稿

今後は、パルコの潤沢なリソースを活用した独自の展開も期待される。例えば、ミツカルストアのリアル店舗を利用したポップアップショップを出店したり、ミュージアムや劇場でファッションショーを開催し、その模様をストリーミング配信しながらその場でアイテムを購入できるといったイベントを催したり。

アメリカではAmazon.comが最も大きなアパレル販売業者のひとつとなり、国内でもZOZOTOWNをはじめとする大手ファッションECモールの勢いはとどまるところを知らない。排他性やブランドイメージ、価格の維持を犠牲にしてでも大樹に寄り添うことを選ぶか、それともパルコのようなECサイト運営代行サービスと連動しながら、ECの可能性を開拓するか?近い将来、ファッションブランドが選択を迫られることになるのかもしれない。

株式会社パルコ

http://www.parco.co.jp/

◆こちらは「FASHION EC Lab」 編集部からの寄稿記事です。

Cover photo by Shutterstock

FASHION EC Lab



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