Topics | 2017.12.26
なぜいま、人々はヴィンテージを求めるのか?「FASHION FUTURE♯003」レポート

なぜいま、人々はヴィンテージを求めるのか?「FASHION FUTURE♯003」レポート

2017年12月5日、Tokyo Fashion Technology Lab 原宿校舎にて、トークイベント「FASHION FUTURE」の第3回が開催された。

このイベントは、編集者である軍地彩弓氏とファッション業界の鍵を握るトップクリエイターが現状の業界課題や成功事例を語り、ファッションの未来を紐解いていくものだ。

第3回目となる今回のテーマは「VINTAGE」。まずは軍地氏による「ヴィンテージの定義」の説明からスタート。その後、特別ゲストとして、アンティークアイテムのセレクトショップを展開する株式会社グリモワールの代表取締役、十倍(とべ)直昭氏が登壇し、トークセッションが行われた。

 

 

“VINTAGE”の定義とは?
今年、メルボルン(オーストラリア)を訪れた軍地氏は、そこで自然とファッションにヴィンテージのアイテムを取り入れている人々に出会い、大きな感銘を受けたそう。そのサスティナブルで、物を大切にする心は、まさに日本人的であり、実際、外国人に会うと「日本人はヴィンテージが好きだよね」と言われるほど日本人はヴィンテージを好む。また雑誌でも「ヴィンテージ特集」が組まれるなど、現在10代、20代の女性を中心にヴィンテージブームが起きている。

では、「VITAGE」とは何か。その定義を軍地氏は以下のように説明した。
・基本的に30年くらいを目処に年数が経過したモノ
・ある一定の価値が認められるもの
・目利きによって選ばれるもの
・ある程度クオリティが保たれるもの
・バイヤーが買い付けて、ヴィンテージショッップで売られる
・B to Cビジネスである

またヴィンテージは、ユーズドとも違う。「USED」の定義を軍地氏は以下のように説明した。
・1回でも誰かが着たもの
・誰かにとって価値があるもの
・状態を問わない
・目利きが必要ない
・消費者同士でも売り買いされる

・C to Cビジネスである(もちろんUSED shopも存在する)

ちなみにヴィンテージは、「ANTIQUE」とも異なる。アンティークとは100年以上前のもの、主に家具などに使われるものだ。

いま、注目を集める“VINTAGE”
昨今、ヴィンテージショップが増え始めている。そしてどのショップも特徴のあるセレクトをし、現在では百貨店にもヴィンテージショップが入っているほど。それはつまり、ヴィンテージがいま、一点物として大量生産の商品とは違う新しい価値を生んでいるのではないかと軍地氏は語る。

またミレニアルズは、インスタグラムでヴィンテージアイテムをチェックし、気に入ったものがあればメッセージでやりとりし、取り置き(購入)することが一般的になっているなど、インスタグラムを活用した動きも盛んだ。

メルカリとUSED
現在、国内で唯一のユニコーン企業と呼ばれている「株式会社メルカリ」に代表されるフリマアプリ市場も2016年に3052億円の売上を記録(これは大手アパレル企業に匹敵する売上)、現在さらに売上を伸ばしている。

メルカリの登場によって、ファッションビジネスはマイナスの影響を受けていると軍地氏は考えていたが、それは違った。実はメルカリに出回っている服は、これまでなら古着屋に並ばなかったようなものが多いからだ。メルカリの登場を機に、買う人と売る人が縦でなく、横の関係でつながるようになった。

また現在ユーザーは、服を買う際に「あとで売れるか?」を考えて購入するようになっている。これは“価値の再編”が起きているとも言える。そのため「売っても価値のある物作り」が今後、重要な要素になってくる。

いま大切なのは、「その人にとって価値があるかどうか」。人の価値観ではなく、自分でスタイルを見つける時代。ヴィンテージは一点物であり、まさにその価値観にはまっている。さらにヴィンテージには、買うまでのストーリーがあり、買ってからもストーリーがある。それも若い世代から好まれている理由のひとつだと軍地氏は述べた。

ヴィンテージには、時代が反映されている
後半は今回のゲストである株式会社グリモワールの代表取締役、十倍直昭氏とのトークセッションが行われた。軍地氏はドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)の監修をしており、パート2ではプロット作成から参加した。主人公が古着のリメイクからショップを始めるというストーリーがあり、そのシーンで十倍氏が大量の服を提供した。また映画『恋するヴァンパイア』では、軍地氏は衣装監修を担当し、十倍氏に「1800年代のドレスを探してほしい」と依頼したこともあるなど関係は深い。

 

そんな十倍氏が初めて古着に触れたのは、中学3年生のとき。学ランの下に着るTシャツを探しに、古着屋を訪れたのがきっかけだ。以来、古着に興味を持ち、店に通い詰め、古着の知識を得た。その後、美容師になるが、少し勤めてはバックパッカーとして旅に出る、という生活を繰り返していた。しかし海外のフリーマーケットを訪れるなかで、「自分で古着屋をやってみたい」と思い立ち、1年で1000万円を貯金。当時は四六時中、働き、売れるものは何でも売って、現金を作った。

しかしいざ古着を買い付けに行っても、当時は目利きがなく、「それが安いのか高いのか」すらわからなかったため、とにかく自分の感性でレディースの服を集めた。ただ当時の日本ではレディースを扱うヴィンテージショップが少数だったことから、レディースショップにすることだけは当初から決めていたそうだ。

なお十倍氏の店では、基本無料でサイズ直しのサービスを提供している。そこには「サイズを理由に、一点物のヴィンテージを逃すのはもったいない」という十倍氏の思いがある。

さらに軍地氏は、「ヴィンテージには、いまの機械では再現できない服が存在する」と補足する。同様に、今にはない柄やカラーの服がある。さらに時代ごとの背景が服に反映されていて、ミニスカートが生まれた背景には“女性解放”の動きがあるように、世相が服に反映されている。それがヴィンテージの面白さでもあると、続けた。

最後には質問コーナーが設けられ、軍地氏は服作りを志す青年に、「ブランドの新作でも99%はどこか似ている。しかし、それでは後世に残らない(ヴィンテージにはならない)。モノも人も、唯一無二になり、自分の価値を生み出すこと。そうすれば、AIに負けることも怯える必要もない」と力強く語り、質問者にエールを送った。

軍地氏から出た「価値の再編」という言葉に、参加者たちが首を大きく縦に振り、聞き入っている様子が印象的だった。ヴィンテージという言葉を、あらためて深く理解し、多くの気付きを与えたイベントとなった。

TEXT:KYOSUKE AKASAKA

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「FASHION FUTURE#001」レポートはこちらから
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DiFa編集部



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