Topics | 2018.04.17
《新連載》モデル理彩子が綴るSXSWリポート【vol.1】彼の地、オースティン

《新連載》モデル理彩子が綴るSXSWリポート【vol.1】彼の地、オースティン

2018年3月13日~3月18日まで開催されたサウス・バイ・サウス・ウエスト、すなわちSXSWに私が途中参加するきっかけとなったのは、開催地であるテキサス州のオースティンに現在弟が留学中で、さらには市内でエンジニアのインターンとして働いていたことに始まります。運よく都合がついたので、たとえ全期間中に滞在できなくても彼には会えることだし。と参加を決めました。

オースティンの空港に降り立つと、SXSW真っ只中と感じさせる売店や広告がたくさん見あたる。

SXSWは、日程的にも、そしてあまりに広大な敷地を舞台に開催される無数のイベントをめぐるには限界があり、その全貌を把握できたわけではありません。ーーひとまずトークセッションを聴き、展示を見物し、SXSW名物のライブミュージックの視聴とともにテキサス料理を体験しよう。インタラクティブ、フィルム、ミュージックというカルチャーアンドテクノロジーが融合するここには何があるのか、それぞれに携わる人々の次なる一歩が進む先には何があるのか知ってみたいーー全体としての目的はそんなところでした。

オースティンコンベンションセンターでは、オンラインで登録された情報を元に、パスが発行される。学生パスは多少の入場の制限があるものの割引がある上に、同行者1名分のパスが無料で発行可能。今回は留学中の弟のパスを私は発行した。左が私が溺愛する、弟の秀平20歳。
コンベンションセンターとヒルトンの前には、ビールやドリンクサービスのあるアウトドア・チル・エリアが広がる。生演奏とヒッピーらしき人々の巣窟である。
コンベンションセンター3階のベランダ。関係者のパーカーだろうか。こんなかっこいいパーカーは1階の売店には、なかった。欲しい。作ろう。

私が今回の連載でお伝えしていきたいのは、「SXSWは下調べが重要」ということです。現地に降り立った際には、オースティンという土地柄を含め、このイベントよくよく知っているということがSXSWを最大限に楽しむ方法です。したがって、来年SXSWに行きたい人に向けて、およそ10万円という高価なパスを購入する前に知っておくべきことを、私の観点から数回に分けてお届けします。

まずは、会場であるテキサスオースティンという地や歴史ついて少し触れてみたいと思います。

ここオースティンは、保守系が占めるテキサス州の中でも、極めて特異な都市だと思います。

アメリカの広大な国土は沿岸部と内陸部では話し方も違えば、政治思想も異なり、大統領選では真っ赤に染まった内陸部の保守勢(共和党支持)の中に、ポツリと浮き出て(選挙結果図を)青く印したのが、オースティンでした。例えば、古い記事の抜粋(リンクはこちらから)になりますが、池上彰さんが民主党と保守党の違いについて簡潔に多様性の観点から話しています。
「黒人の数は極端に少なく、アジア系もヒスパニック系も探すのに苦労します。こういう人たちが共和党を支持しているのですね。こうして見ると、古きアメリカを代表する中西部では共和党が強く、西海岸や東海岸など移民が多い州では民主党が強い理由がわかろうというものです」
テキサスはまさにこの中西部よりの南部にあたり、池上彰さんの言葉の通り、白人が多く、保守勢が多いと知られています。にも関わらず、ダラスにつぐテキサスの大都市オースティンには、現在、日本人である私の弟と、エンジニアの同僚であるインド人がルームシェアをしている……といった、人種のるつぼ状態なのです。また同時にオースティンの歴史について特筆すべきことがあるとすれば、そこは音楽の都市であるということがあげらるので、この背景こそが、まさに、音楽の祭典として1896年に発足したSXSWの由縁であるとも言えます。

テキサスは、奴隷制を支持する11の南部連邦の1つとして、1861年から65年にかけてのアメリカ内戦では合衆国から独立することを目的に戦いました。上記にも綴ったように、共和党支持の保守勢で成り立つ州である背景が伺えます。しかし敗戦後は70年に開通した鉄道がメキシコ、ドイツ、スイス人をはじめとする多様な人種をオースティンの地に送りこむようになり、83年のテキサス大学の設立がこの地を代表する施設として広く知られるようになりました。それについてはこちらのガイドが詳しいです。
http://www.austinrelocationguide.com/History-of-Austin/
20万弱の人口から成る、目新しさもなければ活気もない都市だった60年代のオースティンを当時構成していたのはおよそ1:保守的なカウボーイ 2:リベラリストのヒッピー 3: 政治家の3つ。そんな彼らが平和的に友情を築けるはずもなく、これを問題視した エディー・ウィルソンという人物が、音楽を通じて民衆の結束を図るビジョンを掲げて設立したのが、巨大なクラブ、アルマジロ・ワールド・ヘッドクォーターズでした。ここに手を貸したウィリー・ネルソンの音楽を、当時敵対し合っていたヒッピーもカウボーイも好いていたたので、それを機に街の交流が深まり初めたのだと言います。こうして、様々な人種が音楽を介して出会う、ライブミュージックが溢れるリベラルな地にオースティン変わっていきます。

オースティンという街は、極めて特異な都市だと思います。ニューヨークのようなビッグレーベルやメジャーレコードが集積する、一攫千金を狙う街ではないのに、創作の息吹はビッグマネーにではなく、直接、人間に鑑賞されることを求める人から湧き出ている気がします。もちろんプラチナアルバムは皆欲しいでしょうし、一発大きく当てたいのは山々でしょう。が、暗がりでくすぶっているようにも、底辺で擦り切れているようにも見えず、ほのかにでも明るいところを探しては人に見てもらうことを楽しむアーティストたちの街に見えました。実際そこにはSXSW 期間後も毎晩、様々なライブミュージックの混ざった音が街中に響いていました。もっとも多人種で、もっとも沢山の音楽が、混合する瞬間がSouth By South Westであり、街がまさにその年のユーフォリアを迎える瞬間だと思われました。

ミュージックの期間に突入すると、街のあちこちで、また主要な施設のいたるところでライブが開催されているので、カンファレンスの合間に出たり入ったり。
張り切って夜遊びする私に(23時には帰宅)弟はしっかり付き合ってくれました(引き気味)。
弟の秀平(20)の英語名はチェゲバラからとってChe. 現在留学中、そしてエンジニアとしてインド資本の企業で薄給でインターン中。アメリカでは未成年に属するため、SXSWのナイトライフを全く楽しめていない。

街には影のような一帯も数カ所ありました。

賑わう6th streetの裏に回るとすぐそこには、大きな廃スーパーが建つ一角を囲うようにして、おばけのような格好の浮浪者がたくさん横たわっていました。真っ暗闇の中、排水溝から吹き出る白い蒸気と、強いアンモニアの匂いが一帯から放たれ、とてもじゃないけれど足を止められる場所ではありません。

指定されたコーナーでウーバーの到着を待ってうろうろしていると、裸の下半身に片足だけスエットパンツを引っ掛けた、中年の女性が交差点に飛び出し来るような、そんな暗黒街の街角が、オースティンのところどころにあるのです。この時は、彼女がこちらによろよろと近寄ってきたので、私は一目散に逃げ出しましたが、そんな恐怖体験も、今ではいい思い出です。

JWMariottホテルから北に、10分ほど歩くと開発中の一帯にぶつかる。都心部にこれほど広大な土地があり、活発に新しい施設が増え続けていることに驚いた。近年急成長している都市であることが伺える。

オースティンに限らず、ある街が、どんな街かと定義するのは訪れる人間の期待や目的次第しれません。テキサス州のシリコンヒルズと呼ばれるこの地は、砂漠に広がる暑そうな開発都市くらいなものと想像していました。それが、実際来てみると、SXSWの成り立ちの背後ある音楽の要素がどれだけ強く、それを目当てに集まる多様な人種、またその集合で商売をするために各地から人が集まる地であること知ることになるのです。オースティン郊外では、あちこちで大型の建設工事が行われており、これからも発展を続ける都市として拡大している様子を目の当たりにしました。結局、訪れるまでは、街への関心はさほどなかったのに、現地で得られる副次的な出会いや発見の多さを、今回、SXSWでは感じました。

Ethics in VR/AR Journalism のパネルより。このパネルでは面白い動画も使われたので、また、カンファレンスに言及する章で取り上げたい。

オースティンという街は、極めて特異な都市。
今回の記事では、SXSWというイベントがなぜオースティンで開催され、またなぜオースティンでなければいけなかったかを、読者の皆さんにお伝えできたことを願い、次回からはSXSWの事後報告に移らせていただこうかと思います。

中村理彩子。

WHO’ S RISAKO ?
学生・モデル
1994年埼玉県生まれ。幼少期をハワイとサンフランシスコで過ごした日米ハーフ。中国・上海を訪れた際、服飾文化の違いに魅せられたことをきっかけに、ファッションデザインの研究を志す。この春、慶應義塾大学総合政策学部を卒業。現在は文化服装学院で「服作り」を学びながら、モデルとしてCM、雑誌、カタログでも活躍中の23歳。

DiFa編集部



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