| 2018.05.21
《連載》モデル理彩子が綴るSXSWリポート【vol.3】Camera-First化に見る「食の民主化」

《連載》モデル理彩子が綴るSXSWリポート【vol.3】Camera-First化に見る「食の民主化」

前回に続き、今回もパネルディスカッションについて記述しますが、SXSWではどんなパネルディスカッションやイベントに参加するかを下調べする、事前準備も重要です。SXSW公式アプリ「SXSW GO」には、スケジュール機能の1つに、当日の催し物の場所から内容まで記載され、お気に入りとして保存することが可能。今回の主題である「The Era of Camera-First Foodというパネルも、このアプリを使って見つけましたので、SXSW参加前にはDL必須だと思われました。

SXSW公式サイトではアプリの様々な機能が紹介されている。

Camera First Everything…「食」の実態やいかに

では、本題です。パネル「The Era of Camera-First Food」では、加速するCamera-First Food =「被写体を意識した食」によって今後変化する、食品、提供者、消費者の実態に迫りました。

貿易官Michael Fried、シェフのLior Lev Sercarz、フォトグラファーThomas Schauer、そしてSociality Squared CEOのHelen Toddの4名が登壇し、

※詳しくはこちらから→(https://schedule.sxsw.com/2018/events/PP72250

被写体を意識した食によって変化する、食そのものの姿形、またそれらの提供者の実態を巡って議論が繰り広げられました。企業が今後、意図的に「撮られるもの」として提供する食とはいかなるものか。また、プラットホーム上で顕在化された、消費者の反応によって移り変わる食の姿形やその生産面についても言及しました。

切り口はやはり、食におけるソーシャルメディアの利活用。一介の消費者であったはずの客自身が、提供される食品やサービスの様相を大きく変えており、その背景にある情報拡散行為の影響力。そして供給する企業や事業主がこれを逆手にとる状況が興味深いといわれています。この現象を「食の民主化」と登壇者らは言い表しました。

店舗や企業のロゴが印字のみならず、今後、より多くの情報が、Camera-Firstを意識した食品には付与されるのではないかと登壇者らは語る。

ソーシャルメディアから興った「食の民主化」

周知の事実ですが、インスタグラムなどのソーシャルメディア(以下SNS)に日々投稿される膨大な写真には、夥しい数の品に関する投稿があります。例えば2017年には、コーヒーに関する写真だけでもで73億の投稿があったことを、マーケターでもあるHelenは説明しました

詳しくはこちら→(https://www.crimsonhexagon.com/blog/from-plain-jane-to-fancy-joe/)。

SNSにおける食の投稿者の17%がミレニアル世代のみによるものであると分析されており、これは、ミレニアル世代がいかにその所得を食品に、また、食を介した社交に費やしているかを物語っています。アメリカーオーストリア間の貿易に携わるMichaelは、「食」が 1.4兆円の経済効果を有するアメリカにおいては、この社会現象の影響は今や計り知れないと述べました。

聴衆が登壇者に質問するなどの積極的な参加が歓迎されるパネルであるが、場合によってはこのようにslido.comでレスポンスを送る参加の方法もある。返答をディスカッション中に取り上げてくれることも期待できる。画像の問いは「SNS上で共感や注目を集めるのはどっちだと思う?真っ黒いアイスクリームのように、目を引く面白い食品、それとも今トレンドの最先端ホールフーズ(無添加食品)か。

消費者によるSNSの投稿が商品を発展させた例として有名なものがスターバックスのフラペチーノです。Angel, Zombiといった姿、名称ともに独創的な商品が消費者のカスタマイズから誕生し、インスタグラムで人気を博した結果、商品化されたことは未だ記憶に鮮明です。また、SNSで得られる情報から即座に店舗のメニューの更新も行うことが可能になったと、カスタマーフィードバックに対するシェフの視座からLiorは述べます。

その他、近年目にするようになった、店舗や企業のロゴが印字された食品、例えばハンバーガーのバンズなどは、写真を撮られることを前提としたロゴが施されるなどしています。今後、こういったブランドロゴにとどまらず、より多くの情報、例えば生産者の顔や、こだわられた材料、内容物にまでSNSを意識した食のデザイン化が拡大するのではないかという意見が飛び交いました。さらに、このような情報の拡散に伴う特典や、インセンティブの充実度を高める必要性の有無が問われました。

 

 

ソーシャルメディアから3つに分岐する情報.

食品から発展する情報は主に3つ、ウェルネス(Wellness), 交際(Social),社会性や政治性 (Politics)を主軸としているとMichaelは述べます。

社会性や政治性 (Politics)は、情報拡散の可能性に伴い、食が論争の火種になりうること、もしくはそのような食のポストをきっかけに食が抱える課題解決を導く可能性を持ちうることを指します。

またウェルネスでは、ソーシャルメディアと今後融合しうる技術として、ARやVRの普及により、実際には限りなくヘルシーな食事を口に運んでいるにも関わらずステーキを食しているように錯覚するものまで、幅広い可能性が考えられるといいます。

食品のCamera First化は、審美性やメッセージ性のみならず、よりSocial Media-First, SNS-Firstの商品が練られる方向にあるように思われます。

以下は私の考察です。

ソーシャルメディアにおける食品のCamera-First化の商品を拡散して宣伝する行為は、消費者と、食品の提供側(飲食店等)の双方にとって喜ばしいことに思えますが、案外そうではないのかもしれません。シェフのLior Lev Sercarは一部の高級なレストランが、食品の写真を食事中に撮り続ける客を疎ましく思っている一方で、食品がより写真映えするように照明を調節するレストランもある、と笑いながら話すのを聞いて、私はそう思いました。

人と人が実際に会って話をし、その雰囲気を楽しむ場で求められる照明と、モノを美しく撮りたいときの、いわゆる「ブツ撮り」のライティングは、少し違いそうです。つまり、あまりロマンチックではない、照明です。レストランの提供するものが、一過性だけど貴重な、実空間での体験を重視していたところから、Camera-Firstになりつつあるのだとしたら、この現象は、ある側面では食という文化の価値を少し変えてしまっているのかな、と思います。

もっというと、意中の相手と食事に行った際に「写真を撮りやすい空間」が用意されていたら困るかもしれません。思い出作りなら話は別ですが、料理が出てくる度に写真を撮っている相手が考えているのは、その場を共に過ごしている自分ではなく、SNSのフォロワー達に見せる写真であるとしたら、飲食店や食品を纏う空間の持つ役割は、確かに変わったのかもしれない、という気がします。

もちろん、出てきた食品のあまりの造形美に、ついカメラを構えたくなることや、それを人と共有したい感情は時として芽生えます。

ですので、これはあくまでも一考察です。飲食店はこんにちにおいて、人と人が実空間で対面し語り合う貴重な場だと感じます。より多くの客に愛され、繰り返し、足を運んでもらうことが飲食店の本来の目的ならば、案外、Camera-First化を意識しすぎる必要もないのかもしれない、ということでした。

理彩子。

Illustration:RISAKO NAKAMURA

次回

Camera-First化する様々なものを取り巻く環境はじめ、その先にあるメディアやプラットホームにも変化が現れ始めている今、VOL.4ではそこに絡めて「ストーリー・テリング」という、今回SXSWで多発したワードについて綴ろうと思います。

 

DiFa編集部



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