Topics | 2018.07.06
《連載》モデルRISAKOが綴るSXSWリポート【vol.5】:インフルエンサーを活用した、効果的なデジタルマーケティングとは?

《連載》モデルRISAKOが綴るSXSWリポート【vol.5】:インフルエンサーを活用した、効果的なデジタルマーケティングとは?

繰り返しとなりますが、サウス・バイ・サウス・ウェスト、通称「SXSW」は、アメリカのテキサスはオースティンにて毎年10日間前後にわたって開催される、インタラクティブ、フィルム、ミュージックの3部構成によるカルチャーとテクノロジーの祭典です。日本人の来場者や出展者、参加大学も増えており「来年こそは訪れてみたい」という方たちに今年初参戦した私が、その魅力や、事前準備としてあったら役立つ知識を本連載では綴っています。

SXSWってどこで開催されているの?:『彼の地、オースティン』>>vol.1

SXSWって、そもそも何:『インタラクティブの裏側へ』>> vol.2

SXSWのパネル・ディスカッションってなに:『Camera-First Foodsに見る食の民主化』>>vol.3

SXSWのパネル紹介:『共感は、快感。ストーリーテリングってなに?』>> vol.4

さて、今回は前回の記事と通ずる内容です。ミレニアルにとっても身近な内容のパネル「インフルエンサー」の存在、また「インフルエンサーを活用したデジタルマーケティング」(https://schedule.sxsw.com/2018/events/PP99174)について綴ります。

左から、Rabil, Nassar, Lester, Barr

このパネルの面白かった点は、アメリカにおいて、NFL(フットボール)をはじめ、アメリカ国民に対して多大な影響力を持つアスリート達をインフルエンサーとして起用した際、PRにかけられる期待が並外れて大きいこと。そして同時にスポーツ選手の経済効果が非常に大きいことを物語っていると思いました。

ここでは、アスリート兼投資家のPAUL RABILが進行役を務めながら、

NFLのライセンスを管理するNFL Players 社のAHMAD NASSAR

メデイアとアパレルブランドを持つBarstool SPORTSのDEIRDRE LESTER

そしてデジタルマーケティングのデータアナリストとしてコンサルティング会社Slyce.io

の代表取締役のBRYANT BARRが登壇しました。

このパネルの観客はエージェンシー、いわゆる芸能事務所の関係者が最も多かったです。事務所が抱えるインフルエンサーを、クライアントの要求に対し、どのように指導すべきか、また育てるべきか、という意識を持って来場する方が多いようで、これまで私が訪れたパネルとは異なり、セミナーの色合いが濃厚でした。

インフルエンサー・マーケティングの難しさは?

NFL Players 社のAHMAD NASSARは、NFL の選手がUberのプロモーションに参加した際のエピソードを例に、インフルエンサー活用の難しさを語りました。「『SNSでUberを告知してほしい』という条件の下、Uberの多額のクレジットを選手らに預け、自由に使ってもらうというもので、ほとんどの選手の投稿が、Uberに乗車しているセルフィーを撮りながら”Thank you Uber” という内容だった。これにはUberは困惑した。『どんな状況下で、なぜUberを利用したか』を明確に記述して欲しかったのだが、それらを細かく選手に伝えないと、自発的には果たされないことがわかったのだ。しかし、フリーでUberを使う代わりに⚪︎⚪︎してほしい…という条件を増やすと、選手(インフルエンサー)たちのタスクが荷重となり投稿を嫌がられる恐れもあるのだ」と。

その改善に向けて行われていることとは?

コンサルティング会社の代表取締役の BARRは「プロモーションにおけるタスク化は、影響力の大きなインフルエンサーをPRから遠ざけ、インフルエンサーのパーソナリティや世界観を著しく犯す可能性がある」と言います。「インフルエンサーがインフルエンサーたる所以があるので、彼らのもつキャラクターと告知する商品の世界観が合致すベきということは言うまでもない。そして、PRの方法においても、どれだけインフルエンサーのユニークなPR方法があるかを、考えるべきだ」と語りました。消費者も、インフルエンサーの人間性や背景に惹かれてその動向をチェックしているところが大きく、そこへ突如企業の広告要素が投入されることは望ましくないので、限りなく、インフルエンサー自主性や、独自の視点を生かした告知にすべきだそうです。「我々の会社ではそのように、第一にインフルエンサーにとってクライアントの要求がタスク化されないこと、第二にインフルエンサーの関心のAuthenticity、つまりは信憑性が全面的に感じられる告知になることに注力した上で、その結果を数値的に分析し、さらなる成果にこれを役立てています。」

インフルエンサーに求められる”Authenticity〜信憑性とは”.

この信憑性が全面的に感じられる告知として BARRが紹介したのは、バスケットボール選手であるステフオン・カリーが告知を行なったチャリティ基金の一例”Nothing but Nets ”(https://www.cbsnews.com/pictures/mvp-vs-mvp-lebron-james-and-stephen-curry/8/)

でした。「このプロジェクトはステフォンの方から提案したものだった。しかも、本人が学生時代から寄り添ってきたチャリティ基金で、ステフォン自身の誕生日に合わせて大きく資金が集められないかという本人たっての申し出だった。想像をはるかに超える成功を収め収め、莫大な額がわずかの時間で寄付されたことから、大きな成果をあげたプロジェクトだったと我々は考える。しかし、背景にあるのは、インフルエンサーであるステフォンのこの告知に対する関心が一過性のものではなく、プロジェクトに非常に深く根ざしているという信憑性のある『ストーリー』が、背景にあったためではないかと思われた。もちろん、ステフォンが世界的な大スターだから達成できたことでもある。しかしここからわかることは、インフルエンサーを活用する際には、インフルエンサーの真摯な関心と、経歴に何らかの形でマッチする方法でPRが行われるものだと成果は大きい。なぜなら、インフルエンサー自身がクライアントの要求をタスクとして捉えることなく能動的に、自身の世界観を発揮しつつ告知を行うからだ。」と、 BARRは続けました。

考察

今回は、インフルエンサーをデジタルマーケティングに起用する際には、インフルエンサーがしっかりストーリーの一部となり、また語り手になる必要がある、ということが伺えます。

現在、日本では多くの企業がインフルエンサーを介して物販やサービスの告知を行っています。例えば、ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーのリーチ力を頼りに、衣服を販売する株式会社PATRAは、先日1億円を超える資金調達を達成し、またその販売実績は発足3月目の現在で日商120万円にのぼったという記事https://www.nikkei.com/article/DGXMZO28165150V10C18A3XY0000/ )

が日経オンラインに上がっています。このような、ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーを頼りとしたデジタルマーケティング戦略は、消費者の関心をインフルエンサーの支持率から把握し、商品を選択あるいは制作、そして再び同インフルエンサーの元から適切な商品が発信されるサイクルが、形成されつつあると思われます。その他、Live Shop! (https://jp.techcrunch.com/2017/06/07/candee-live-shop/)を手がける株式会社Candeeは、インフルエンサーとコラボしながら、これをさらにオンタイム(ライブ動画)で試みるなどを行っています。

上記のようなインフルエンサー活用術は、少し前までのインフルエンサーを活用したマーケティングと比較したとき、複数の意味でとても画期的になったなあと感じます。

これまでは、インフルエンサーがソーシャルメディアを介して物販を行うことは、かなり間接的に行われていました。インフルエンサーはあくまでも商品の良さや使い勝手を、自身のソーシャルメディア上で行うところにとどまっていました。そうすることで、自身の築き上げたメディアの世界観への影響を最小限にしながら商品の告知を行うことができます。しかしながら、様々な問題が浮上しました。たとえば、こちらの毎日新聞の記事

https://mainichi.jp/articles/20180202/k00/00e/020/296000c)

にもあるように企業からのキックバックが景品表示法に抵触する可能性など出てきました。また、「さすがにお金もらってるよね?このインフルエンサー……」と徐々にインフルエンサーのタレント性までもを蝕むようになったと言っても過言ではありません。そこでは、BARRが語った信憑性が、インフルエンサー及び商材共に、著しく損なわれたのではないでしょうか。

しかしながら株式会社PatraやLive Shop!のような販売メディアがインフルエンサーに与えたのは、インフルエンサーがその影響力を最大限に、そして真摯に発揮できる、新たな場であるのかもしれません。そこではインフルエンサーが堂々と、自身の関心領域と特技を活かして、信憑性ある商品企画や販売に携わることが行われているように伺えます。間接的な情報発信から、インフルエンサーの積極的かつ直接的な情報発信が、商品の価値とインフルエンサーの価値を損なわない、新たなデジタルマーケティングの賢い手法であると言えるのではないでしょうか。

自分もいつのまにか、無料のソイ・ドリンクにつられて、SXSWのデジタルマーケティングに参加してしまっている。

 

このsoylentという製品は、ココア、チャイ、バニラなどのフレーバー展開がされている豆乳で、恐ろしく濃厚で美味しい(広告ではありませんよ)。

次回:パネルディスカッションばかりを取り上げていたので、SXSWや私に、いつの間にか真面目くささが漂い始めました。圧倒的、否。SXSWを盛り上げる食、音楽、そして不良すぎるナイトライフを、写真や動画とともに、次回は紹介していきたいと思います。お楽しみに。

Illustration:RISAKO NAKAMURA

DiFa編集部



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