| 2018.08.24
デザインはLINEとLINEカメラで。〜10匣(TENBOX)が教えてくれる、僕らの新しい働き方とモノづくり。

デザインはLINEとLINEカメラで。〜10匣(TENBOX)が教えてくれる、僕らの新しい働き方とモノづくり。

「作りたいモノが出来た時に」新作をドロップしていくにも関わらず、ストリートからモード従事者まで熱狂的な支持を得る「10匣(TENBOX)」。有名アーティストを匿名で起用したグラフィックワーク、あるシューズの展開サイズは「自分のサイズの81/2だけ」。「仕事はiPhoneのみで。LINEとLINEラインカメラでほぼ作業ができる」。……とアティテュードのすべてが新しくオリジナル。けれどそこに気負いはなく、レイドバックしたキモチのいいムードが漂っている。「あ、そんなやり方もあったんだ!」と僕らに新しい働き方と生き方を教えてくれる、10匣ディレクター、Piguこと大森”Pigu”憲一氏の超デジタルにして超アナログな「モノの作り方と売り方」とは。

PHOTO:KAYOKO YAMAMOTO

10匣ビジネスパートナーのcaoriさんと。LAのアーティストたちの間で流行っているという日本の60&70年代のポップス(サーカスの『夢でもし逢えたら』、とかね!)ほか、メロウなレコードをとっかえひっかえしてくれながらインタビューが進む。
「自分ではラジオで流れてくるポップスとか、レッド・ホット・チリペッパーズとかしか聞かないんですよ(笑)。周りがこれ、いいよ。って教えてくれるからそれを聞く」。ちなみに車で聴くのはアメリカに行くたびに買ってくるカセットテープのみ。

もともとブランドを作るつもりは一切なかったです。スタートは赤いクルーネックのスウェット。すごく欲しかったのに、どこにも売っていなかったんですよね。だから自分が着たいがために、友人のアーティスト(編集部注:著名な方です)に「10匣」というロゴのデザインを依頼して、そのロゴを入れたスウェットを作ったんです。スウェットを作った後に、今度は別のアーティストに頼んだグラフィックが入ったコーチジャケットを作って。それを着ていたら、当時勤務していたセレクトショップや、そのプレスに問い合わせが来るようになった。でも、ちょうどその頃、ある海外ブランドのディストリービューターをスタートするつもりで退社したんですよ。けれど、そのタイミングで10型くらい作ったアイテムが卸先のH BEAUTY & YOUTHでバズった。そこから本格的に10匣がスタートすることになりました。

物欲が無い代わりに、買い物感覚でタトゥを入れる。目を引く#なるなるは「人生もう決まってるんだから、失敗も含めてなるようになる。すべての出来事は繋がっている」という自身の人生哲学が込められている。

10匣(TENBOX)の名前は、たまたまスワップミートで「10 BOX」って言ってるのを聞いて、かっこいいなと付けちゃった。でも実はそれ、「10 BUCKS(ドルのスラング)」の聞き違いでだったんですよね(笑)。でも、それもいいかなと。今のブランドって、英語が主流ですよね。けれど、日本人のストリートブランドとしてそれを着て欲しいという意味も込めて、あえて漢字のロゴにしたということもありますね。

サーフィンに興味があったこともあって、17〜22歳くらいまで地元の池袋のサーフショップに通っていました。ファッションも遊びもそこで事足りたし、あとはサーフィンに行ければそれで良かったので、すべてが池袋で完結。だから、渋谷で遊んだことも殆どないし、俺らの世代なら絶対に通る、裏原も知らなかった。ただ、20 代からは頻回にアメリカに通うようになりました。23歳でセレクトショップに入社するんですですけど、店長時代もショップスタッフを連れて年に2回は行ってましたね。本当に洋服が好きだったから、表層的なファッションではなくて、「これが本当のアメリカ(のカルチャーやファッション)だ。」と知りたかったし知って欲しかったんです。

そうやって足繁くアメリカに通うたびに現地にどんどん友達が出来た。アメリカ人の良さって、「いやらしさ」がないんです。歳も訊いてこなければ、仕事も訊いてこない。もちろん誰と繋がってるの?なんてことも訊いてこない。単純に人として友達になる。で、仲良くなって、「実は(こんな仕事している)……。」みたいなことが多い。そうやって自然とアーティストの友達が広がっていって。今はLAをメインに年1/3は海外に。けど、僕、未だに英語話せないんですよ。本当に出川英語くらいな感じで(笑)。けど、通訳を入れちゃうと、その時点でビジネスになっちゃうでしょ。だから話せない代わりに、サーフィンしたり、バー行ったり。とにかく一緒にいます。それで十分仲良くなれる。

オフィス兼アトリエになっているのは、綱島にあるKenzai. Depot。時々でアートイベントやマーケットが開催される。
「LAの友だちって、みんなサーフとスケボーができるんですよ。サーフィンはやるけど、スケボーはやらないから、うまくなりたくて」と練習用のランプを作ってしまった。

友人であるアーティストたちが描いたり(これまた著名)、作ってくれたアイテムがあちらこちらにさりげなく。

10匣始めた当時はまだお金がなかったこともあって、友人のグラフィックデザイナーが無償でロゴやプリントのデザインをしてくれたんです。けれど、そこで彼らの名前を出して僕だけがお金にしてしまうのはおかしいなと。だから、アーティストたちの名前を匿名にしたんです。今はペイできる状況になったので、これからは名前を出していくと思います。

基本的に仕事も遊びも予定は立てない。すべてその日の気分でやること決める。「次の日の朝集合だった予定も、いきなり『今から行くから』と夜の11時くらいに電話がかかってくることもあります」(caoriさん)アポなしで、ふらっとディーラー、しかも東北などのショップに向かうこともある。ショップ閉まっていたら閉まっていたで、気にしない。飲みにいくのも、約束することは嫌い。その日会いたいなという人とタイミングが合えば行く。仕事も遊びも自分の中では区別がない。

モノを作る上で心がけているのは絶対に俺が着るもの。お金に興味がないので、自分がいいと思った物だけしか作らないです。だから自分も毎日10匣しか着ないし。10匣を始めることになった赤いスウェットもそう。本当だったら赤だけじゃなく、白や黒も作ったら売れるんだろうけど、自分はその時、赤以外は欲しくなかったから。だからシーズン関係なく、欲しいものが生まれて、それを作ったら出す。新作は、トリップ行ってる時に、これが必要だな、と生まれることが多いです。例えば、今日履いているスリッポンも、モーテルで朝起きてから、サーフィンの海上がり、スケート、レストランのディナーであっても、どこでも履いていけて、かつ着脱がすごく便利だなって。サイズも自分のサイズの81/2しか作ってないんですよ。まさにシンデレラシューズ(笑)。旅先では手ぶらでいたいということもあって、10個ポケットがついたドラッグディーラーシャツを作ったり。そうやってトリップから生まれるディテール重視のアイテムはワークウェアやミリタリーウエアに近いものがあると思う。

これが件のシンデレラシューズ。常にシューズは黒。というのもこだわりのひとつ。

プリントアイテム関しては今の気分で作ります。俺、パソコン持ってないんですよ。なんとなくWindows98くらいで終わってるというか(笑)。パスワードもわからなくて。だから、作業はすべてiPhoneのみ。Illustratorが使えないから、代わりに写真を撮って、LINEカメラで開いて、業者にテキストで「こんな配置にして」と指示して送って終了。ディーラーも百貨店とのやりとりも全部LINE。必要な時は(caoriさんが)パソコンを使ったりするけれど、いつもはそれで特に問題はないですね。

よく使うアプリは、LINE、LINEカメラ、Google翻訳、WhatsApp(LINEのアメリカ版みたいなもの)。海外の波を見るためのSurfline、ANAのマイレージ。「メールはいつも即レスなんですよ」(caoriさん)海外の友人たちとのテキストは「Google翻訳を使って」。

一方で、ブランディングはものすごく意識します。プリントモノはもちろん、今日しているベルトみたいに、すごく真面目にちゃんとした服も作っているので。だから、ディーラーに対しても、この並びでおいて欲しくないとか、こっちの方に置いて欲しい。とか店舗に行ったときには必ずリクエストを出します。

当初は、カッコいい人に着てもらいたいなと思っていました。でも、ブランド自体がしっかりしていれば、誰が着ていてもブランドイメージって崩れないんですよ。例えばサプリーム(SUPREME)なんかも、今は色々言われているけれど、結局誰が着ていてもカッコいいし、何より作っている彼らがカッコいいからブランド感が崩れない。だから、その辺に関しては以前より気にしなくなりました。

10匣って、ブランドじゃないんですよ。ライフスタイルそのものだと思っているんで。俺、同じ格好しかしないんです。いつもTシャツにカーディガン、黒い靴ばっかり。欲しいものはかなり作ったので、そろそろ終わりかもしれないです(笑)。10匣は永遠のものではないので、Piguとしての仕事を増やしていけたらと思っています。

 

 

DiFa編集部



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