| 2018.09.07
【後編】DiFa主催セミナー「業界リーダーから学ぶ! eコマース2.0 ~新しいモノの買い方・売り方~」リポート: 南馬越一義氏

【後編】DiFa主催セミナー「業界リーダーから学ぶ! eコマース2.0 ~新しいモノの買い方・売り方~」リポート: 南馬越一義氏

2018年8月、DiFaが主催する企業のマーケティングおよび広報・PR担当者向け勉強会「業界リーダーから学ぶ! eコマース2.0 ~新しいモノの買い方・売り方~」が開催された。

同イベントは全三部構成となっており、業界で活躍する3名の講師が登壇した。前編中編に続き、後編となる今回は、株式会社BEAMS BEAMS創造研究所 シニアクリエイティブディレクター・南馬越一義氏と、DiFa編集長・宮坂淑子によるトークセッションの様子をお届けする。

講師、ビームスの南馬越氏(通称:MAGO氏)は、18年間に渡り、レディースのバイヤーを担当。トップバイヤーとして世界中を飛び回り、旬のデザイナーやブランドを発掘し続けた後、7年前に現部署「BEAMS創造研究所」を立ち上げた。それまでのB to Cではなく、B  to B寄りな立場で商品開発やイベント等を行っている。一方、宮坂は、モード誌の編集に15年以上携わり、1年半前よりDiFa編集長に就任。そんなファッション業界に精通する両者による、コレクションの変化から見たミレニアルズのショッピングの仕方と、それによりメゾン側ではどのようなことが起きているのかをディスカッションした。

ニューヨークとパリ、コレクションの動向と変化

宮坂MAGOさんは10年以上、NY、パリ、東京とコレクションを見て回っているわけですが、ここ数年でのNYそしてパリでのコレクションの変化をどう感じていらっしゃいますか?

MAGO:「NYコレクション」はここ3年くらい、“See Now Buy Now※”という動きが出てきてから形骸化してきた印象です。メインであるハイブランドが、ファッションウィーク(コレクション)中もメインのオンスケジュールからどんどん離脱したり、違う都市へ移ったり、コレクション自体取りやめたりといった動きが起きています。いわば有名どころのブランドが歯抜け状態。代わりに増えているのが、ファッションスクールの卒業発表や中国ブランドのデザイナー。中にはNYベースのデザイナーもいますが、中国からNYに来ている人が増えている。それもあり、コレクションとしては若干見劣りし、パワーが落ちて来ている気がします。

※See Now Buy Now:半年先の作品を発表するのではなく、リアルタイムの作品を発表し、可能な限り、全世界の多くの人達にライブでショーを配信してみてもらい、ショーの直後から自社のオンラインショッピングサイトや店舗にて顧客に買ってもらうというスタイル。

 

宮坂:パリコレに関してはいかがですか?

MAGO:パリコレに関しては、頑なにコンサバ。See Now Buy Nowには乗らずに、これまでのコレクションの循環でやっていますが、若干縮小している部分はあると思います。ただ、パリコレに関して言うと、やっぱりストリートとかスポーツテイストがモードに入り込んでいる。いちばん影響力があったのが、「BALENCIAGA」アーティスティック・ディレクター兼「VETEMENTS」のデザイナーのデムナ・ヴァザリアが登場したことでしょう。彼がストリートテイストを打ち出して、そこに引っ張られて色々なブランドが後を追っている。日本でもそうですが、モードを知らない、「BALENCIAGA」を知らない人でさえ、オーバーサイズの洋服を着ている、というのはすごい影響力だなと思います。

宮坂:ミレニアル世代が着られるもの、履けるものを意識したストリートやスポーツテイストを打ち出したデザイナー、キム・ジョーンズやエドワード・バーバーなどの活躍により、マーケットも変わってきました。また最近では、中国の方が買うものがコレクションでも注目されているそうですね。

MAGO:中国マーケットはすごい! 若いパワーと勢いを感じます。コレクションでも中国マーケットを意識したものを目にします。コレクションではミレニアル世代と同じくらい、中国マーケットも意識していると思いますよ。

注目は、「インフルエンサー」と「韓国」

宮坂:コレクションは最近、インフルエンサーがたくさん集まる場所にもなっています。

MAGO:そうですね。ブロガーの登場あたりから、インフルエンサーのポジションは強くなってきている傾向にあります。最近では、そういう人たちがショー会場の前席を占めていますね。何より感心するのが、スマートフォンの使い方です。ショーを見ながらInstagramのストーリーにコメントを入れて投稿して、さらに写真も撮ってアップ。華麗なスマホさばきに、ついつい目を奪われてしまうほどです(笑)。

宮坂:彼らのすごいところは、ランウェイにキレイなモデルが登場! すかさず写真を撮ってアップしたら、次は外に出てエディターやデザイナーのスナップを上げて、待ち構えている学生もアップして、とにかく中でも外でも撮りまくる。それを見た人たちは、次に何が流行るかモデルからトレンドを学ぶ。街中の人たちのスナップを見て、“今はこんなスニーカーが流行っているんだ”と参考にする。インフルエンサーのお陰で、憧れ感とリアルタイムを同時に享受できている面もありますよね。

MAGO:はい。それはデザイナーも同じで、インフルエンサーから得た情報を、デザインに落とし込んでいることはありますよ。

宮坂:コレクションで発表されたアイテムを買おう、外にいるオシャレなファッションの人たちのアイテムを買おう。両方の購買欲を炊き付けるという意味では、インフルエンサーはブランドにとって欠かせない存在に感じます。MAGOさんから見て、各国のセレクトショップやデパートでも、モノの売り方、売れ方に変化を感じますか?

MAGO:僕は韓国が好きでよく行くんですが、江南(カンナム)はパワーがありますよ。あとは、狎鴎亭(アックジョン)にあるデパート「ギャラリア百貨店名品館WEST」にはカッコいいカルチャーショップもあって勢いを感じますね。韓国は貧富の差が激しく、マーケットも小さいはずなのに、なぜかすごいパワーを感じるのが不思議です。ファッションにしても、未だに参考になるし、当社のバイヤーも、積極的に韓国のファッションブランドを新規開拓したり、韓国ブランドのアイテムを仕入れたりしています。

リアルとECの二極化が進む日本の現状

宮坂:私は編集者ということもあって、今のミレニアル世代の消費行動がこれからどうなるかがやはり気になりますね。個人的には、ECを見て買うワンストップ・ショッピングと、WebやECでチェックはするけれど、最終的には着用感などを試しにお店に行って買うといった二極化の流れを感じるのですが、MAGOさんはどう思われますか?

MAGO:BEAMSでも、サイトで見て店舗に買いに来る方も多いようです。雑誌を見る人が少なくなっていて、広告の出稿もWebやイベントに協賛が増えてきています。ECから店頭という流れもあるため、店舗の売上もここ数年は伸びている状況にあります。またECも含めて、若干価格が安い方に流れている感じはあるかもしれません。その対策として、何か付加価値を付けて、単価を下げずに売る努力は必要だと思っています。

 宮坂:話はコレクションに戻りますが、「東京コレクション」はどう見ていらっしゃいますか?

MAGO:「東京コレクション」は、2年前からAmazonがメインスポンサーになり、「Amazon Fashion Week TOKYO」と題し、さまざまな工夫が凝らされ注目度が上がっています。実際にこの3月に行われた秋冬コレクションでは、参加ブランドが過去最高の58ブランドに上りました。BEAMSでもAmazonのECに出店しているのですが、その影響もあるのか、Amazonでの売上はここ2年、伸び続けていますね。「東京コレクション」は、メンズブランドが強いですから、そこに親和性があるのかもしれません。むしろレディースブランドは、あまり関係ないように思いますね。

「仲介を通さず、ダイレクトにファンに売る」という選択肢

MAGO: “リアル”という観点で、東京の若手のデザイナーに話を聞くと、お店の卸しの売上より、展示会の顧客売上の方が大きいようです。今後は自分たちが作りたいものを作って、仲介を通さずダイレクトにファンに売る、という方法増えていくかもしれませんね。

宮坂:展示会で直接オーダーする買い方って、ある意味エディターっぽいですよね。他の都市ではない現象かもしれません。

MAGO:そうですね。以前は顧客をショーや店舗に招くこともありましたが、最近は聞かなくなりましたよね。他の都市のコレクションと違って、「東京コレクション」は、一般の人も招待されるし、見ることもできる。ネットでも告知するし、SNSでも枠がある。色々なブランドがショーに招いて、それを見てファンになる流れもあるのかもしれません。

宮坂:展示会で洋服をオーダーする顧客の年齢層は?

MAGO:僕らが応援しているブランドのお客さんは20代、まさにミレニアル世代ですね。ただアイテムひとつひとつは決して安くないし、それなりの値段はするけれど、それでもオーダーする。それって、お客さんとデザイナーとの距離がすごく近いからだと思うんです。展示会は、デザイナーが直で話をして進めてくれたりするから、“つい買ってしまう”効果を生んでいるのではないでしょうか。

宮坂:東京と言えば、2018年6月にモネ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(LVMH)が若手ファッションデザイナーの育成・支援を目的とした「LVMHプライズ フォー ヤング ファッション デザイナーズ」を行い、日本のメンズブランド「Doublet(ダブレット)」がグランプリを受賞しましたね。

MAGO:ダブレットは今、いちばん東京感があるし、時代性も強いブランドですよね。ちなみに東京ではポップアップ・ストアは増えそう。僕としては、もう少しデザイナーがお客さんと展示会とかで直でやり取りしたり、将来的にはそれを束ねたりといったことをやっていきたいなと思っています。

宮坂:それは、海外では見かけない東京オリジナルのやり方ですよね。

MAGO:そうですね。たとえば、アメリカではお馴染みのフードトラックなんかは、SNSを活用して集客しています。それはある種、バンド音楽に近いと思うんです。音楽ビジネスはいま、パッケージにしないようにシフトしようとしています。そういった音楽業界のビジネスの中に、ファッション業界のヒントも隠されているような気がしています。

これからは、“ショップスタッフの個性”も一緒に売る時代

宮坂:最後に。BEAMSの考える「今後のショップの在り方」を教えてください。

MAGO:第1部(前編)の話題にもありましたが、当社の社長も“人”だと言っています。プロモーションには色々な施策がありますが、結局は人なんです。みんな欲しい物は一緒だから商品は均一化します。では、どこから、誰から買うか? ショップスタッフのおすすめ、このスタッフがいるショップなら買ってみよう。そうやってお客さんとのコミュニケーションを店員の個性とあわせて売っていこうとしている動きがあります。

宮坂:なるほど

MAGO:ちなみに、僕自身の話ですが、BEAMS創造研究所では⽇本各地における地域活性化プロジェクトを行っています。株式会社CAMPFIREと協業し、若⼿職⼈・クリエイターと共に地域の伝統的なモノづくりを現代のライフスタイルに合わせた商品として企画し、クラウドファンディングを通じて世の中に発信することで、地域の魅⼒を再発⾒することを⽬的とした「RISING of LOCAL YOUTH(ライジング オブ ローカル ユース)」プロジェクトを開始しました。これもまた、新しい物の売り方になる可能性を秘めていると考えています。

宮坂:それは面白そうですね。今日のセミナーを通して、モノの買い方・売り方は時代によって、常に変化、新しく進化していることを再確認できた気がします。本日はありがとうございました。

MAGO:こちらこそ、ありがとうございました。

TEXT:FUMIKO SATO

 

DiFa編集部



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