Special | 2015.12.28
【後編】 2015年のデジタルテクノロジー×ファッションから2016年を考える―ソーシャルメディアは動画へ/これからの実店舗の在り方

【後編】 2015年のデジタルテクノロジー×ファッションから2016年を考える―ソーシャルメディアは動画へ/これからの実店舗の在り方

2015年も残り僅かということで、ファッションとデジタルテクノロジーという視点から、4つのトピックをピックアップ。この一年の出来事を振り返りながら、来年2016年以降の動向を占っていきたいと思います。前編はこちらから。

後編は、ここに来て新たな流れができはじめたブランドのソーシャルメディア活用、そしてこのデジタル時代に、その在り方がますます問われている実店舗に、新たな体験をもたらすべく導入され始めたデジタルテクノロジーについて探っていきましょう。

3. ブランドのソーシャルメディア活用が動画にシフト

Instagramも動画が中心に、PeriscopeやMeerkatの登場でストリーミングがより身近に

ファッションブランドやデザイナーのソーシャルメディアの活用において、これまでのFacebookやTwitterだけではなく、Instagramなどのヴィジュアルによるメッセージをコミュニケーション手段とするネットワークに力を入れるようになってきたのが、ここ数年の大きな動きのひとつでした。その中でも今年は特に効果的に動画を利用する動きが進みました。

2013年にTwitterから6.5秒の動画を共有する「Vine(ヴァイン)」がローンチされると、Instagramもそれまでの静止画に加えて15秒の動画のフォーマットをサポート。コレクションのランウェイショーの様子をエディターやバイヤーらが共有する際も動画が使われることが多くなりました。ブランドやデザイナー側も、プロモーションの手段として積極的にInstagramで動画を織り交ぜて投稿することが一般的に。

periscope_meerkat
スマホから簡単に生中継ができるアプリ、PeriscopeとMeerkat

今年に入ってからは、「Periscope(ペリスコープ)」や「Meerkat(ミーアキャット)」といったスマートフォンから手軽にストリーミングできるアプリがリリースされ、9月から10月にかけて各都市で発表された2016年春夏のコレクションのショーでも、「TOMMY HILFIGER」や「RALPH LAUREN」がバックステージやショーの模様を中継。コレクションだけではなく、LOUIS VUITTONはロンドンで行ったトークイベントのストリーミングに用いたり、「SHOWstudio」は撮影の様子を流したりと、多様な試みがなされています。

LOUIS VUITTON, Burberry, GUCCIなどが積極的な活用をスタート!新勢力 Snapchat

そして今年後半から特に目立ってきたのが、「Snapchat(スナップチャット)」の利用です。

snapchat
iTunes Storeより

Snapchat自体は、2011年にサービスをスタートした動画のメッセージングアプリ。当時のInstagramの主なユーザー層よりもさらに若い、10代を中心に普及していたことや、「一度見たら消えてしまう」という特徴的なメッセージングのスタイルもあり、これまではファッションブランドがプロモーションに活用することはあまり多くありませんでした。

「REBECCA MINKOFF(レベッカ ミンコフ)」が2013年、2014年春夏のショーに先立ってSnapchatでコレクションの一部を見せたのが、最も早い事例のひとつになるかと思います。その後、複数の写真をひとつにまとめてシェアすることができる機能「Stories」が導入されたことで、これまでより多くの情報や文脈を込めたメッセージをユーザに対して伝える環境が整ってきたのが、昨年からの流れ。

今年に入ってからは、LOUIS VUITTONが2016年クルーズコレクションのショーやアフターパーティの様子をStoriesで見せるなど、活用事例が増えてきました。その中でも一番話題になったのは、やはりソーシャルメディアの活用で常に先駆的な「Burberry(バーバリー)」による、2016年春夏のショーのプレビューやキャンペーンの撮影の様子をSnapchatで配信したことでしょう。続いたのが「GUCCI(グッチ)」で、こちらも2016年プレフォールのコレクションをSnapchatでプレビューしたほか、フレグランス「Guilty」の顔となった俳優のジャレッド・レト(Jared Leto)がGUCCIのSnapchatアカウントをジャックするなど、積極的な利用をスタートしています。

 Burberry-creates-live-Snapchat-Campaign
Burberryは2016年春夏コレクションキャンペーンの撮影の模様をsnapchatでライブ配信。

InstagramとSnapchat―重要なのは目的に応じて使い分けること

では、ファッションブランドはなぜ今Snapchatを活用しはじめたのでしょう。多くのファッションブランドが利用するInstagramはかつてのパーソナルなヴィジュアルメッセージングのコミュニティから、ここ最近ではオーディエンスを意識したセルフィーやアーティな雰囲気が主流のメディアへと変化していきました。これに伴い、よりライヴ感のあるメッセージをパーソナルなアプローチでユーザに届けられるプラットフォームが求められていることが、Snapchatが注目されている理由のひとつなのではないでしょうか。

Instagramの現在のセルフィーの傾向を最もうまく利用した事例が「Calvin Klein(カルバン クライン)」の「#mycalvin」キャンペーンです。また一方で作りこまれたヴィジュアルを見せる場としてInstagramを捉えたものとしては、Gucciが有名無名のアーティストによる「#GGBlooms」と「#GGCaleido」のパターンを用いた作品を展開した「#GucciGram」のキャンペーンが挙げられると思います。

mycalvins
#mycalvinsキャンペーンに投稿された画像たち ― Calvin Kleinウェブサイトより

セレブリティによるブランドのアカウントジャックも、かつてはTwitterやInstagramで行われていましたが、いまならばパーソナルな視点が伝わりやすいSnapchatでこそ有効なのではないかと感じます。これもどちらが良いという話ではなく、重要なのは目的に応じたプラットフォームを使い分けること。

またこうしたヴィジュアルメディアは、ランウェイショーのプレビューやバックステージの雰囲気を伝える手段としてだけではなく、ショーそのものに替わるコレクションの発表の場としても機能するようになっています。「MISHA NONOO(ミーシャ ノノー)」は2016年春夏のコレクションを、ショーの代わりにInstagram上で発表し話題を集めました。MISHA NONOOのような規模感のブランドの場合、必ずしも大きな費用をかけてショーを行うことだけが、ユーザに対しての効率的なアプローチとは限りません。エディターやバイヤーに見せるのであれば、プレゼンテーションや展示会の方が意味があるというケースが殆どなのではないでしょうか。

mishanonoo
Instagram上で発表されたMISHA NONOOの2016年春夏コレクション ― MISHA NONOO 2016SS Instagram(@mishanonoo_show)より

そして、ソーシャルメディアを活用し、いまのランウェイショーの在り方に対して決定的な問いを投げかけたのが、 YouTubeで公開された「TOM FORD(トム・フォード)」による2016年春夏コレクションのイメージムービー。これはSHOWstudioのニック・ナイトがディレクションを手がけ、BGMとして使われているChicの『I Want Your Love』のボーカルを、ムービーに出演しているレディ・ガガがナイル・ロジャースを迎えて担当するという、完璧につくりこまれた作品で、コレクションの雰囲気がコンパクトに明確に伝わってきます。来年は、こうした形でのコレクションの発表を選択するブランドやデザイナーが増えてくるかもしれません。

4. 実店舗にも導入されはじめたデジタルテクノロジー

実店舗でも、さまざまなデジタルテクノロジーの導入事例が多く見られたのが今年でした。大きくわけると、「試着のインテリジェンス化」、「店舗オペレーションの効率化」、「店舗のエンタテインメント要素の強化」の3つになります。

試着のインテリジェンス化

デジタルテクノロジーを実店舗へ導入していくという流れの中、国内外で相次いだのが、試着のインテリジェンス化を目指した取り組みです。

基本的な機能としては、フィッティングルームに持ち込んだアイテムの詳細情報を取得したり、フィッティングルーム内から販売員へコンタクトが取れたり、そのままその場で決済をしたり、すぐには買わないことにしたアイテムをメールなどで送信できる、といったところでしょうか。一番最近の事例としては、「POLO RALPH LAUREN」が導入した、テクノロジー企業Oak Labの「Oak Fitting Room」が挙げられます。

oakfittingroom
POLO RALPH LAURENTのNY旗艦店に導入されたOak Fitting Room

Oak Labは、もともとEbayでREBECCA MINKOFFなどで導入されていたインタラクティヴな実店舗でのソリューション開発を手掛けていたメンバーが独立して立ち上げたスタートアップ。今後も動向が注目される企業です。また試着のインテリジェンス化という観点では、伊勢丹でも試験的に導入されていたMemomiによるMemory Mirrorのように、試着したアイテムの色違いをそのままデジタルミラーで表示するといった事例もあります。

店舗オペレーションの効率化

こうした仕組みを導入するにあたり、前提条件となるのが、RFIDなどアイテムごとのトラッキングを可能とするタグをつけることです。お馴染みの「ZARA(ザラ)」は早くからグローバルでRFIDを導入し、在庫管理の効率化を進めていることが知られていますが、日本でも今年から導入が始まっているようです。

またファーストリテイリングでも「GU(ジーユー)」を皮切りに、「UNIQLO(ユニクロ)」でも、ユーザの待ち時間削減を目的にRFIDとセルフレジの導入を進めていくことが報じられています。同様にビームスでも「ビーミング・ライフストア」での試験導入を経て、物流や棚卸しなどの効率化といった効果が得られたとのことで、他の業態への展開を決定しています。

先に挙げたPOLO RALPH LAURENでも、既にRFIDの導入が進んでいたことが、Oak Fitting Roomの導入につながっているようです。国内では、まだオペレーションの改善に主眼が置かれているように見えますが、POLO RALPH LAURENのようなチャネルを問わないユーザの利便性や店舗体験の向上につなげる形で、導入したインフラや取得したデータを活用できるかが今後の鍵になると思います。そうした観点では、スタートトゥデイがLINEと共同開発したボタン型ビーコンは、ユーザの買い物体験の向上によりフォーカスしたソリューションとして、注目すべきものなのではないかと思います。

店舗のエンタテインメント要素の強化

一方、店舗での体験の向上のひとつとして、エンタテイメント性の強化という方向性も考えられます。TOMMY HILFIGERが導入した、最新のショーの映像を専用のデバイスを使い、バーチャル体験できるサービスもそうした一例です。店舗に足を運んでもらうためには、店舗でしか得られない体験の提供が不可欠になってきており、デジタルテクノロジーを駆使してどのように没入感のある店舗をつくっていくかは、どのブランドにとっても今後の大きな課題のひとつになっていくのではないでしょうか。

tommy
TOMMY HILFIGERが店舗に導入した最新のショーをバーチャル体験できるサービス

といったところで、今年のトレンドのいくつかを振り返ってみましたが、とてもこの記事ではまとめきれないほど数多くの事例が出てきています。その中で、なにがユーザに対して本質的な価値を提供できているものなのか、あるべき姿はどういったものなのかを見究めながら、今後の動向をウォッチしていくことが大事なのではないかと改めて感じた次第です。

Text : koso

DiFa編集部



PICK UP

SPECIAL

LATEST

BUSINESS
LATEST