Special | 2016.01.29
ファッション×テクノロジーの未来を予測する近道は「過去と現在を知ること」【最終回】──ミルクシェイクと雑誌の未来

ファッション×テクノロジーの未来を予測する近道は「過去と現在を知ること」【最終回】──ミルクシェイクと雑誌の未来

※こちらの記事は先日公開した『ファッション×テクノロジーの未来を予測する近道は「過去と現在を知ること」【3】──アーキテクチャとしての「WEAR」』の続編です。

日用雑貨や食料品から服や雑誌まで、私たちはほぼ毎日のように買い物をします。

私たちが買うものはすべて、それ自体が欲しくて買ったものばかりなのでしょうか。そう尋ねられたとしても、おそらくほとんどの人たちは「そうだ」と答えるでしょう。ですが、その買い物は本当にそのモノでなければならない必然性があるのでしょうか。

なぜそのモノを買おうと思ったのか、行動には必ず目的がある

この問題を考えるにあたって、ミルクシェイクを買う長距離トラックの運転手の購買行為を分析した話を参考にしてみましょう。

(参考)『イノベーションの権威 クリステンセン教授が提唱 : 顧客に選ばれる商品の秘密とは』btrax blogより

ここでの分析によると、トラックの運転手がミルクシェイクを買う理由は、ミルクシェイクが飲みたいからではなく、「長くてつまらない運転中、ハンドルを握っていない方の片手で何かすることが欲しかった」からというものでした。

つまり、ミルクシェイクそれ自体は目的ではなかったのです。

私たちの行動にはかならず何かしらの理由が伴いますが、それが常に意識的なものとは限りません。とはいえ、たとえ無意識的であったとしても目的はあるはずです。この目的を見失うと、物事の核心をとらえることはできません。

「購買者は何を求めているのか?」

この話はあらゆる分野に適用できますが、ここでは雑誌のことを考えてみましょう。昨今、雑誌の話となると、「紙」か「電子書籍」か「ウェブ」という三択で考える人が少なくありません。この三者のうち、どの形態をとればより多くの読者を得られるか、という問題を立ててしまっているのです。

これは、先ほどの問題に照らし合わせてみると、「何味のシェイクを販売すれば売上が向上するか」といった間違った問題を考えているようなものです。しかし、考えるべきなのは「何を売るか」ではなく、「購買者が何を求めているか」なのです。

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Photo by Niloo / Shutterstock.com

ユーザーの目的を捉えられない、狭義の「雑誌」は消えていく運命に

インターネット以前、私たちは雑誌に何を求めていたのでしょうか。「情報を手に入れたい」、「着こなしの参考になるコーディネートを見たい」、「買うもの/欲しいものを探したい」、「流行を知りたい」、「時間をつぶしたい」など、そこにはさまざまな目的がありました。「雑誌」と一口に言っても、目的はひとつではないのです。

現在、これらの目的を達成しているのは、必ずしも雑誌の電子版やウェブだけではありません。たとえば「着こなしの参考になるコーディネートを見たい」という目的は先日の連載でもご紹介したアプリ「WEAR」によって果たされていますし、「買うもの/欲しいものを探したい」という目的に関しては、最近では「STYLER」が力を入れて取り組んでいます。

アプリ上で「イライ」をして、買いたいもの/ほしいものが探せるファッションアプリ「STYLER」
アプリ上で「イライ」をして、買いたいもの/ほしいものが探せるファッションアプリ「STYLER」

現在はこの種のアプリこそが雑誌的なメディアだと言えるのではないでしょうか。そうしたことを理解せず、ユーザーの目的を捉え損ない続けると、狭義の「雑誌」は近い将来、本当になくなってしまうかもしれません。

この連載ではさまざまな事例を取り上げながら、物事の分析方法について考えてきました。たしかに時代が変われば新しい事象が現れます。しかしながら、人間が考えることなんていつの時代も大して変わりません。

ということは、その分析方法も既に存在しているはずなのです。私たちはついつい見た目の新しさにごまかされがちですが、未来を知るには結局のところ、過去と現在を見つめなおすことがいちばんの近道なのです。

【連載】ファッション×テクノロジーの未来を予測する近道は「過去と現在を知ること」

第1回 「新しさ」とメディア考古学
第2回 東京ガールズコレクションはなぜファッションショーを行うのか
第3回 アーキテクチャとしての「WEAR」
最終回 ミルクシェイクと雑誌の未来

Text : 蘆田 裕史

DiFa編集部



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