Special | 2016.02.02
CESから占う未来のファッション―その1 「透明化するテクノロジー」

CESから占う未来のファッション―その1 「透明化するテクノロジー」

はじめましてneurowearです。

はじめまして。neurowearです。
neurowearは、ニューロウェアと読みます。テクノロジーをつかって”ちょっと未来”のコミュニケーション体験をデザインするプロジェクトチームで、2010年の秋頃からウェアラブルやIoTのコンセプトモデルを発表しています。


※2011年発表の脳波をつかったコミュニケーションツール ”necomimi” 。2012年に商品化。ショップ情報など詳しくはこちら

初回はneurowearがアメリカ、ラスベガスで行われた世界最大の家電見本市「CES(※)」で見たものを振り返りつつ、テクノロジー×ファッションの未来について、neurowearメンバーの土屋となかのがおしゃべり形式でアレコレ考察してみたいとおもいます。

※CESとは。「Consumer Electronics Show」の略で、例えるならば家電界のパリコレ。世界中からバイヤー/プレス/業界人が多数集まり、最新の家電や数年先のコンセプトモデルが発表されます。2016年は運営団体名がCEA(Consumer Electronics Association)から、CTA(Consumer Technology Association)になって初めての年。ファッション界が服だけではなくライフスタイル全般の提案になってきているように、家電だけではなく生活に関わるTech全般の見本市に変わりつつあります。

ウェアラブルデバイスはだんだん違和感のないものに

土屋さん(以下敬称略):はじめまして、neurowearの土屋です。普段はクリエーティブ・テクノロジストという肩書きで、広告制作やサービス開発に携わっています。neurowearでは脳波から音楽をレコメンドするシステム「mico」や、音楽に集中している時だけ音楽を再生するターンテーブル 「neuro turntable」の企画・クリエーティブディレクションを担当しています。

なかのさん(以下敬称略):はじめまして。neurowearのいきものっぽいほう企画担当の なかの です。仮想現実空間を飛び回るちょうちょを捕まえるクーポンアプリ「iButterfly」や、脳波でコミュニケーションする猫耳カチューシャ「necomimi」、モノと家族になるための目型IoTデバイス 「mononome」をつくったりしています。

土屋:早速ですが、今年のCESを見てきてどうだったかって話なんですけど、テクノロジー×ファッションってことで、まずはわかりやすく「ウェアラブル」周りの話でもしましょうか。ウェアラブルっていう言葉がある程度浸透してきて2,3年目のCESだと思うんですが、「ウェアラブルデバイスでございます!」っていうドヤ感のある展示は、それほど多くなかった印象がありますね。

なかの:初CESだったのですが、やたらと「インソール」の展示が多かったような。 例えば歩き方や走り方を測ってリハビリを支援してくれる「Veristride」。「UNDER ARMOUR」もスマートシューズを発表していて、歩幅や速度を計測してくれたり。

verstride

土屋:他にも「Mettis Trainer」や、「Moticon」といったものがありましたけど、基本的には加速度センサや圧力センサをつかって活動量や身体のバランスを計測してくれるというアプローチですね。
活動量系はやっぱり一番わかりやすいですよね。実際ウェアラブル的なものも、リストバンド型活動量系が一番最初に広まった感ありましたし。常に身につけることができるデバイスによって自分の行動を計測するといろいろわかっておもしろいよ、と。

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なかの:デジタル界の人は、とりあえずなんでも測りますね。計測マニア多いですよね。

土屋:歩数とか食べ物とか位置情報とかね。でも、スポーツの世界だとトレーニングの一貫として自分のタイムとか計測するのはわりと普通のことだったりしますよね。
UNDER ARMOURの場合スポーツ時の用途に特化しているので、リストバンド型だけでは計測できないスポーツ向けの指標を計測するために、インソールにしたという側面もありそうです。足のどっちに重心が偏ってるかとか、ガチンコでランニングする人は、気にするらしいんですよ。右回りのコースと左回りのコースの回数をあわせてバランスとったりするそうです。これがちゃんと計測されるとコーチングとかもかわってきますよね。

なかの:スポーツは確かに計測の意味ありますね。変わり種では、足を温めてくれるインソールのコンセプトモデルもありました(参考)。パンプス用はこれから作ってみるとのこと。日本の湿度で使ったら足臭くならないのかなとかちょっと気になるけど職業によっては良さそう。
CES直後に日本で開催された「ウェアラブル EXPO」にも靴下やベストなどの「発熱系」ウェアラブルが出ていたり、PARCOでは「ANREALAGE」と「MINOTAUR」がヒーター内蔵の色が変わるスカジャンを提案していたりで、ヒート系はちょっとアツイのかも。

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DIGITSOLE

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ANREALAGEとMINOTAURがコラボした色が変わるスカジャン Photo by ANREALAGE

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Photo by ANREALAGE

土屋:ANREALAGE × MINOTAUR、おもしろいですね。温度によって変化する素材をつかって、ヒーターで熱を加えることによって柄をコントロールしてるんですね。電気カイロみたいなものをアタッチするだけではなくて、発熱を最適にコントロールしたり、その温度変化で素材を変化させる組み合わせ技は新しいなあ。

なかの:あと気になったのが、「e-skin」。
東大発のスタートアップ、Xenomaが作っているエレクトロニクスウェアで、伸縮性がある素材にピタッとプリントされたセンサーが、カラダの動きを計測してくれる。例えばゲームのコントロールをしたり、将来的にはCGのキャラクターに演技をつける俳優さんの動きをトラッキングしたり、これまで専用のカメラがないとできなかったことが、屋外でもどこでもできるようになるのはすごい。で、ちゃんと洗えるとのこと。
3月には「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」で展示を控えているとのことなので注目しています。

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土屋:このカテゴリだと、Sensoriaという会社(元マイクロソフトの役員が始めたスタートアップだとか)がセンサーを内臓したソックスやシャツ、スポーツブラを展示していました。他にも、「Hexoskin」や、CPUメーカーQualcommのブースにも展示されていた「AiQ Clothing」など様々な「スマートクローズ」が展示されていて、盛り上がりを感じましたね。そういえばCESには展示されていませんでしたが、去年Google ATAPが発表した「Project Jacquard」も話題になりました。

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テクノロジーは透明になっていく

なかの:テクノロジー×ファッションというと、「光ったり」「動いたり」「テクノロジーな感じ」が分かりやすい見た目のものがこれまで多かったけれど、今後はあえてテクノロジー感は透明になっていくのかもしれないですね。
充実してたSAMSUNGのウェアラブルコーナーでも、ソーラーパネルがついた充電できるクラッチバッグとか、NFC機能がついたお財布とか。活動量計の提案もスーツの襟元の小さなバッジだったりして、ほとんど見た目ではテッキーなものかどうかわからない。ガジェット感を消す方向で作りこんできてるのを感じました。

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土屋:これまで多く見られたウェアラブルデバイスって、基本的にガジェット側からのアプローチが多かったと思うんです。「HMD(ヘッドマウントディスプレイ)が小さくなったので気軽に身につけられるようになりました」とか「各種センサが小さくなったので体に身につけられる大きさになったよ」というものが多かった。
ただ、そういうのっていくら小型化したとはいえ、実際に身につけようとすると日常生活の中に入っていくにはまだまだ目立つというか、違和感があるものが多かった。それがいよいよ、インソール型のデバイスや、「e-skin」のような素材のイノベーションによって、「服」と「テクノロジー」が一体化してきてる印象を受けました。
「装着してても無理がないというか」、もっというと、ウェアラブルデバイスを身につけていたとしても、ぱっと見わからないものが増えてきたっていうことかも。

なかの:無理矢理「ウェアラぶる」んじゃなくって、リアルクローズな方向へ、ですね。

土屋:そうそう。「ウェアラぶらない」。無駄にデジデジしてないというか。そういえば、スマートウォッチでも、「Withings Activite」や、Sonyが開発中の「Wena」も、iPhoneとは対局とも言える、あえてテクノロジーをアナログなインターフェイスで覆い隠すようなスタイリングでしたし。

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なかの:テクノロジーってその介在が当たり前になると、自然にその存在を認識しなくなりますけど、服においてもまた然りって感じなのかもですね。

土屋:そういえば、今回CESの会場に科学情報誌かなにかの広告のポスターがはられていて、そこに “Science fiction, minus fiction”みたいなコピーがかいてあって、なんか納得しちゃったんですよね。ウェアラブルデバイスみたいなものってある種SF的な存在だったんですけど、SFをフィクションじゃなくすためにデザインが洗練されていって、生活の中にあっても違和感がないものになってきている、この流れをうまく言い表しているような気がしました。

テクノロジーが透明になった先にある未来

土屋:センシング技術が透明化するってことは、それを装着している人間が無意識のうちにさまざまな生体情報がとられるようになるということだと思うんですね。
超小型で存在を感じさせないようなセンサで人間のさまざまな行動が計測できたとする。例えば、自分が1日に何回まばたきしてるかとか、何人の人と会っているか、心臓が何回拍動したか、何回笑顔になったかとか。これらの無意識的なデータと、例えばその日がいい日だったかどうか、という主観データをつきあわせていくと、「右足から靴を履いている日は、良い日になる可能性が高い」とか、「まばたきの回数が多いほど、早く仕事が終わる可能性が高い」とかデータ的に説得力のある、”パーソナライズド・ジンクス”みたいなものが出てきたり……するんですかね(笑)。

なかの:「センシング占術」、語呂がいい。あと、服に特定の機能がくっついてくるようになると「制服」というものの意味が重くなりますね。運転手やパイロットの制服であれば、心身の異常を予測して運転をオートモードに移行するとか、飲食店の接客の可視化からの自動チップ制とか、生徒の安全管理や学習支援といったことは良くも悪くも普通に起きてきて、支給された衣料品というものの意味が、ものすごく重たくなりそう。

土屋:制服によって行動が規定されていくわけですね。まさに「服は人を作る」状態。

なかの:服によるセンシングだけじゃなくて、コントロールする側の発想でいくと、すこし未来には、衣服によって身体自体の環境を細かく温室栽培みたいに調整することで、免疫力を高めたり、皮膚に住んでる善玉菌を育てるみたいなことができてくるのでは。着ているだけで風邪引きにくくなったり、肌がキレイになったり、あわよくば痩せたりする……!

土屋:常に身につけているものだから、無意識のうちに介入されていて、無意識のうちに痩せてたり、きれいになってるって相当未来ですね。逆に「なんか最近服が暑いから太ったのかなあ」とか服から自分の状況を察するようになるんでしょうかね。
今気づいたんですけど、これってゲゲゲの鬼太郎のちゃんちゃんこじゃないですか? 調べたら、鬼太郎のちゃんちゃんこって、妖怪が死ぬときに抜ける霊毛っていう霊気を通す素材で編まれているらしく、予期せず今日の話とめちゃくちゃシンクロしている……!

なかの:鬼太郎は脳波で下駄コントロールとかしてるし、水木先生は未来見えてたんですね。テクノロジーが宿った素材によった編まれた見えない能力をたくさん秘めた服ができてくる、と。魔法の絨毯もいつかできるかも。

(次回に続く)

Text : neurowear

次回も、CES2016から3Dプリンティングや3Dスキャニングの技術をご紹介しながら、テクノロジーによって服の製造過程そのもののが変化していく可能性についてお話します。

DiFa編集部



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