Special | 2016.02.26
ファッションブランドとの共同製品化に向けて画策中!話題の電子ペーパーアクセサリー「VIEWS」開発秘話に迫る

ファッションブランドとの共同製品化に向けて画策中!話題の電子ペーパーアクセサリー「VIEWS」開発秘話に迫る

先日発表された電子ペーパーアクセサリー「VIEWS」。ピラミッド型のイヤリングの3面に電子ペーパーが配され、専用ドックを用て模様を切り替え、さまざまなデザインバリエーションを楽しむことができるデジタルファッションプロダクトです。

ピラミッド形のイヤーアクセサリー「VIEWS」

あわせて読みたいその日の気分でデザインを変えられるイヤーアクセサリー「VIEWS」を触ってみた

このVIEWSは凸版印刷株式会社(以下・凸版印刷)、株式会社白球(以下・白球)、株式会社昭和機電(以下・昭和機電)の3社が合同で立ち上げたプロジェクト『TOS.』によって生まれたもの。

今回はこのTOS.のメンバーである、株式会社白球の佐々木 啓庄さん、株式会社昭和機電の奥田 透也さん、凸版印刷の田邉 集さんにお集まりいただき、このテクノロジーとファッションを融合させたプロダクトが生まれた背景を伺いました。

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佐々木 啓庄(Hiromasa Sasaki)

株式会社白球 Creative Director / Project Producer
映像制作や広告クリエイティブ企業を経て独立。2015年に株式会社白球を設立。企業の戦略プランニングや、行政機関の戦略アドバイザーをはじめ、自主サービス/プロダクトの開発などをおこなっている。

奥田 透也(Yukiya Okuda)

株式会社昭和機電 インターフェースデザイナー / 代表取締役
インターフェースデザイナー/プログラマー。株式会社昭和機電代表。数学および物理学を応用したインタラクションデザインを起点として、インスタレーション、ウェブサイト、アプリケーションなどの企画、デザイン、開発に携わる。

田邉 集(Shu Tanabe)

凸版印刷株式会社事業開発・研究本部 事業開発センター 次世代ビジネス推進部 主任
凸版印刷にてWebエンジニア、米国駐在、経営企画、事業開発と異なる角度からデジタルコンテンツ配信事業の戦略立案/立ち上げを担当。現在デザイン思考をベースとした新規事業開発プロセスの導入に向けて活動中。

VIEWS開発のきっかけは電子ペーパーで柄が変わるスニーカーのアイデア?

こちらが「VIEWS」。黒い箱のようなものは色を変えるための”ドック”。

ーーまずお三方はどういう立ち位置でこのプロジェクトに携わったのかを教えていただけますか?

佐々木 啓庄(以下・佐々木):最初は僕が言い出した話で、もともと電子ペーパーで靴が欲しかったんですね。靴が元々好きで下駄箱も一杯になってきたし、柄が変えられるスニーカーがあったらいいなと思って。そこで奥田さんに話をしたんです。コレ電子ペーパー使って上手く行かないかな?って。

すぐに「あったら欲しいよね」という話になり、電子ペーパーの技術を持つ凸版印刷株式会社(以下・凸版印刷)さんに元々知り合いがいたので、その人を経由して相談することにしたんです。

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株式会社白球 Creative Director / Project Producerの佐々木さん

そこで、単純にこういうのつくってみませんかではなく、ある程度ビジネスモデルをまとめました。僕たちの方でデザインのプラットフォームを作り、クリエイターを抱え、ソフトウェア側で利益を出す目指すビジネスを目指す。凸版印刷さんにはハード側で利益を出してもらうというところまでを考えてから、凸版印刷さんに相談しました。その初回の打ち合わせで、田邉さんや技術の方々に同席していただき話が始まったんです。

ただ、靴は創れないことはないけれど、曲がったり折れたりしますし、耐久性や防水なども考えると乗り越えなければいけない課題が山積しているとわかりました。そこで技術的にも実現可能で、ちゃんと日々身につけられるもので、ファッションに新しい体験を提供できるものを作りたい、と思って話し合った結果、イヤリングのようなイヤーアクセサリーじゃないかということも初回の打ち合わせ時にまとめました。

とはいえ、単純に一枚の電子ペーパーに穴を開けてぶら下げればそれはそれで出来上がりなんですけど、ちょっと工夫がないなというのがありました。その場で立体にするというアイデアをだして、3面あるピラミッド型ならそれぞれに違うデザインを施すことでパターン数も増えるので、それですすめていこうという話を初回の打ち合わせで固めました。

それを元に奥田に初期のイメージCGをつくってもらい、それが好評をいただいて凸版印刷さんの開発チームを含めて共同で開発をしていきましょうと言う話になりました。

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奥田さんが初期に制作したイメージCG。ほぼ、発表されたVIEWSそのままです。

奥田 透也(以下・奥田):僕はこれまでスクリーンの中のデザイン・プログラミングの中で生きてきた人間だったので、「画面の外側のものづくり」には内心あこがれみたいなものがありました。でも、きっかけも勇気もなかったんですね。

そこに、同じ靴が好きの佐々木がきて、そういうのがあったら面白いねといった話になり、「いざとなったらデザインを任せるけどとりあえず話だけ俺が持って行くわ」みたいに言って出ていったんです。(笑)すると、イヤリングだったらできるかもという話になって帰ってきた。

そのとき僕自分ちょうど悶々としていた時期で、プロダクトデザインをしてみたいという想いから、CGモデリングソフトをちょうど買ったタイミングだったんです。そこでせっかくだからモデリングをしてみるよといって、四苦八苦しながらイメージCGを作りました。

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株式会社昭和機電 インターフェースデザイナー/代表取締役の奥田さん

佐々木:そう、それが好評だったことがきっかけになったんです。

奥田:邪魔をしないくらいのフレームと、面があるっていうだけのシンプルな形です。発表時のデザインにもある「斜めに幾何学を切り出す」というイメージは当初からあって、他にも、水玉だったり細かな模様は可能なのかとか、電子ペーパーの技術を試すという意味あいでカラーを作ったり、絵を入れたりみたいなのを考えました。新しいプラットフォームとして使えるイメージを考えながらデザインしていきました。

僕としてはこれを作っていく中で、本来は1個のFIXした状態であるプロダクトを、「シェイプ」と「テクスチャ」という要素にもう一回細分化して、その組み合わせを自分で選べるものなんだと解釈しました。そこに僕としては新しいもののかたちがある気がして。

形状が立体を構成する最小の形である「正四面体」というのもコンセプト的にも僕の中では合点がいきました。技術制約上細いフレームが難しい等々の問題はありつつも、当初のCGイメージにかなり近いかたちですすめられたのはなかなかできないことができたんじゃないかなと。それは凸版印刷さんの技術のおかげでした。

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田邉 集(以下・田邉):私はいまR&D部門の中で事業開発を担当する部署にいまして、研究開発技術を事業にどう繋げるかを考える仕事をしています。私はその中で「次世代の新しいプロダクト」を考えるのをテーマにしていて、分野を問わず色々やっています。

私自身もともとウェブ開発の人間だったので、どちらかというとソフトウェアやネット文化みたいなのに馴染んでいました。一方で凸版印刷のなかはモノづくりのエンジニアが多いので、そういう人たちと一緒に新しいプロセスで新しいものづくりができればいいなということを考えていました。

そんなときにこの話が舞い込んできたんです。話をしてみて、そこからの進行はとても早かったですね。

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凸版印刷株式会社事業開発・研究本部 事業開発センター 次世代ビジネス推進部 主任の田邉さん

奥田:開発のチームの方々にも早い段階から入っていただいていたこともあり、その場その場で即座に判断してもらえたので、スピード感が落ちずに進みましたね。

田邉:そうですね。チームとしてはこの3人に加えて、電子ペーパーの事業開発メンバーや、研究所のメンバー中心に、その場ごとに適切な人に入ってもらう感じで進めました。

佐々木:技術的な部分は凸版印刷さんのエンジニアリングの方に設計していただき、リリース後だったり、どういう展開でこのプロダクトをフィニッシュさせるかという点はこの3人で考えて。電子ペーパーができたのは割と早い段階で、去年の夏くらいかな?

奥田:じゃあ作りましょうってなったのが、7月半ばくらいで、そこから僕の方で電子ペーパーの紙面のデザインを1〜2週間でやって、1ヶ月くらいモノづくりの期間があって……だったから、実質は2ヶ月くらいで最初のプロトタイプはできてきましたね。

佐々木:むしろ、そこから電子ペーパー部分ではなくそのフレームをどうするかというところのデザインの方が基幹的には長かったですね。電子ペーパーの仕様に合わせてフレームを作らないといけないという課題があって、素材を何にするか、色は何色がいいのかというところを含め考えました。

ただ、プロダクトの色を考えるにしても、電子ペーパーの「白」って真っ白じゃないんですよ。ちょっとグレーがかった白なので、このプロダクトにおける白はこれだよねっていうところで軸を作らないといけなかったりとか。なので電子ペーパーができた後の方が結構大変でした。

奥田:電子ペーパーでできることっていうのは現状の技術的な限界というのがあるので、それをどうやって自然に見せるかっていうのはその外側のデザインだったりするので。実際にスプレーで塗ってみたりとか色々試しましたね。

佐々木:やすり買ってきて、自分で金属をけずったりとかね(笑)。

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VIEWSに使われている電子ペーパー
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イヤリングのチャーム部分、3面それぞれの電子ペーパーに複数のデザインパターンが印刷されていて、専用のドックでパターンを変えることが出来ます。デザインパターンは50パターンにもなるんだとか。

ファッションだけでなくさまざまな業界からオファーが集まる

ーー1番苦労した、難しかったところはどこでしたか?

田邉:1番苦労した点は三者三様ですかね。

奥田:僕は電子ペーパーのなかのデザイン。というのも、一発でブランドさんに持って行けるくらいのプロトタイプを作ろうという話になっていましたし、電子ペーパーのデザインにおける、仕様的な限界点を見定めないといけなかったんです。

1個のデザインで、検証の意味と見栄えを詰め込んだデザインにするのは難しかった。例えば、カラーで使いたい色を全部ちりばめた上で、その上のカラー印刷の部分と下のセグメント部分がどれくらいずれるか検証するために、ぴしっと合わせるデザインを入れたりとか、黒が赤をどれくらい隠せるのか、っていうのも全部検証できるようにデザインしています。どちらかというと整合性をとりまくったという感じの頭の使い方をしたデザイン。そこが苦労しました。

でも、予想以上に発色もキャリブレーションも整ったのをつくっていただけたので、自由度があることを再認識できましたね。

具体的なシチュエーションみたいなのはそのときには意識しなかったんですけど、「表情ががらっと変わる」というのが、このプロダクトのコア要素。ポップだったりクールだったりというのがこのセグメント状態でちゃんと表情が出るとうのが重要なので、そこは気を使いました。全然印象が変わらないとなると、やる意味がなくなってしまうので。

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佐々木:僕は、デザインは奥田に一任していましたし、むしろリリースした後のことを考えていました。

出して終わりではなく、どういう文脈でコンシューマー向けのプロダクトに落とし込んでいこうかなというところを考えて、ファッションブランドと共同製品化するっていうことを結構早い段階からアイデアとして持っていました。僕たち3人ともファッションに対して求心力がある訳でもなかったので、独自に製品を作ってリリースしても、刺さらないだろうなという思いがあったんですよね。なので、リリース後の進め方をどうするのか、そういった点をまとめるのが大変だったかな。

あとは同じチームでやっているとはいえ、凸版印刷さんは大企業なので、そこに対してのケアにも尽力しました。僕たちの考えるビジネス規模と凸版印刷さんの中で成立するビジネス規模って全然違いますし、社内の反応とか、そういうところも考えましたね。

今考えている次のステップとしては、発表したVIEWSにファッションに精通する人たちの思いを乗っけて行きたいなと思っています。

たとえば現状の「ピラミッド型のイヤリング」っていうのも、このプロダクトをこのまま売りたいとかではなく、この知見を売りたいのであって。たとえばブランド側が四角がいいとか円形がいい、こういうのできないの?などといった要望には対応していきたいと思っています。

嬉しいことに、「コラボしませんか?」「こういうことできませんか?」という問い合わせもファッション業界だけでなく、さまざまなところからいただいているので、そういった声をあつめて、実際に発売できるかたちに持って行きたいですね。

田邉:私は社内の調整役という役割も大きかったので、電子ペーパーでどこまでできるのか、額縁はどこまで狭くできるのかという実現可能性の部分を担っていました。あとは実際に社内でこれを試作するという判断をどうやって通していくかという調整が一番多かったです。個人的にはデジタルファブリケーションにも興味があったので、3Dプリンターでの試作なんかをしたりしていましたね。

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実際に着用してみるとこんな感じ。モデルにもなってくださった、灰色 ハイジさん(@haiji505)によるレポートはコチラから。

「使いたいと思ってもらえるものを作りたい」ファッションブランドとの共同製品化へ

ーーこのVIEWSをつくるにあたっては何を一番大切にしましたか?

佐々木:いい質問ですね。僕はシンプルに「使いたいかと思うか」というところでしたね。

奥田:だいたい一緒です。「こういうものがある世界のほうが楽しそう」ただそれだけですね。

田邉:僕も一緒です。強いていうなら、「ユーザーに受け入れられるか」というところです。デザイン思考を取り入れるというBtoB企業の凸版印刷としては新しい取り組みなのですが、ファッションブランドに受け入れられるかだけではなく、ユーザーが使ってくれそうかとか、ユーザーが欲しいと思うものなのかというところを大事にしましたね。

佐々木:でも実際に発表してみると、比較的反応はよかったですね。予想していたところでは、「デザインの自由度ってどの程度あるの?」とか、「このフレームはもう少し細くならないの?」みたいな話ももちろんありました。出来る限りは対応をしますが、これは電子ペーパーというテクノロジーを使っている以上、制約のなかでやらなければいけないところがあるので、どうしようもない部分も、もちろんあります。

割とテクノロジー系のアイテムって「なんでも自由だ」みたいに見えるんですけど、そこは結構逆で、このテクノロジーでできないものはできない、というかなり強い制限を生むものだなと思っています。今回はその制約のなかでうまく乗り越えたなという感じがありますね。

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奥田:たしかに。ポジティブにとらえてくれる人が多かったですね。まず動く「モノ」ができあがっていて、そこに対する説明と、そこから生まれる価値のことしか言っていないので、嘘をついていない感じが上手く伝わっているような気がしています。

田邉:私も同様ですね。強いて言うなら、やっぱりファッションなので付けてみたいっていう人がいる一方で、ちょっとテイストが私と違うっていう人もいましたね。それは確かにそうなんだろうなという感じがあって、我々が作ったものとその技術をベースにして、人に合わせて素材やデザインを調整していかないと、この業界では多分なかなか上手くいかないのかなというのを直感的な感想としては持ちましたね。

佐々木:こういうことできないの?こういうかたちにできないの?みたいな声も多かったですね。実際に形にしてみせることで自分事にできるので見た人たちも様々な意見を出してくれますね。単純に受け入れると言うよりは、もう一歩上というか、これを自分の生活の中に取り入れた場合を想像して話してくれるんです。そういう意見はありがたいですね。

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ーー今後、このアイテムをアパレル関係など様々な企業が注目している中で、どういうふうに使っていきたいか、どう打ち出していきたいかを教えて下さい。

佐々木:このプロダクト自体はファッションブランドなどと組んで、狙っている層、ファッションに対して敏感な層に対してアプローチしていくことで、ブランドと共に歩んでいきたいなと思っています。

それと同時にTOS.としては、次はファッションアイテムじゃないものだったりとか、今回の電子ペーパーを含めた知見を生かして第2弾のプロダクトに広げていきたいなと考えています。凸版印刷さんが持っている技術は電子ペーパーだけにとどまらないので、そういった幅広い技術や知見をうまく活かしていきたいですね。

奥田:僕は、固定観念を崩してくれるような現象や視点、「今までこう見ていたけど、こう見ることもできるよね」といった発見に喜びを覚えるので、そういうのを世の中に出して、世の中の人が楽しんでくれるかを見てみたいですね。

電子ペーパーとイヤーアクセサリーという形だけじゃなくて、それを生み出せる凸版印刷さんの技術力を活かしてせっかくのTOS.という枠組みの中で、世の中に対して面白い楽しい試みをしていきたいと思っています。もちろん今回のVIEWSは完成度を高めつつも、さらなるプロダクトをファッションにこだわらずに考えていきたいです。

田邉:僕も会社の中で新しい取り組みを色々やっていきたいというのがあります。今回は電子ペーパーとファッション業界、そして佐々木さん、奥田さんというプロと組み合わせることでVIEWSができました。

今後は電子ペーパーに限らずでもいいと思いますし、個人的には凸版印刷の技術にこだわりすぎなくてもいいと思っています。凸版印刷の知見と外の技術を組み合わせてというのでも全然ありだと思うので、新しい視点で新しいもの作りの方法を探していきたいなと思いますね。

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佐々木さん、奥田さん、田邉さん どうもありがとうございました!

VIEWS

tos.gives/views/

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DiFa編集部



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