Special | 2016.03.02
“ものづくり系女子”神田 沙織さんに訊く、デジタル時代だからこそもっと楽しめる!女子的ものづくりの魅力

“ものづくり系女子”神田 沙織さんに訊く、デジタル時代だからこそもっと楽しめる!女子的ものづくりの魅力

先日ご紹介した「WOOL AND THE GANG」で編み物にトライしてからというものの、自分の中の「ものづくり」マインドが盛り上がっています。DiFaでも色々なサービスを紹介していますが、3Dプリンターを代表とした、デジタル工作機械を活用したものづくり「デジタルファブリケーション(Digital Fabrication)」という分野が盛り上がっているんです。

そんなデジタルファブリケーション、このカタカナ語からはいかにも男性が好きそうなかおりが漂ってきますが、実はその楽しさにハマってしまっている女子=「ものづくり系女子」が増えているとか……。その中でも、3Dプリンターの“プロフェッショナル”かつファッション業界でプレスとしても活躍しているという(稀な)女子がいる!との情報を聞きつけ、神田にある「Little Machine Studio」に伺いました。

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そこでお会いしたのは、「ものづくり系女子」として活動する神田 沙織さん。「ものづくり系女子」というのも彼女が始めた活動で、すでに200人程のメンバーがいるそう。今回お伺いしたLittle Machine Studioも彼女が運営するものづくりのためのプレスルーム。

何故、そんなにものづくりにハマってしまったのか!? その面白さや魅力について、お話を伺ってきました。

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神田 沙織(Saori Kanda Hiramoto)

株式会社wip取締役
1985年生まれ。大分県佐伯市出身、日本女子大学家政学部卒業。3Dプリントサービス運営を経て株式会社wipを設立、FABプレスルームLittle Machine Studioスタジオマネージャー。セレクトショップLamp harajukuプレス。著書「3D Printing Handbook」2014年オライリー・ジャパン、他。2015年、独創的なICT(情報通信分野)への挑戦者を応援する総務省「異能vation」プロジェクトに採択され研究にも取り組む。夢は工場を建てること。
ウェブサイトLittle Machine Studio ウェブサイトLittle Machine Studio Instagram

デジタルファブリケーションを極めながら、平行してセレクトショップでプレスとして活躍中

——「ものづくり系女子」の代表をつとめている神田さん。今ご自身は何をされているんですか?

現在は今日お越しいただいた「Little Machine Studio」の運営、そしてセレクトショップ「Lamp harajuku」のプレス業務を平行して行っています。

——セレクトショップのプレスとものづくり系女子が、なかなか頭のなかで結びつかないのですが……! どういうきっかけでものづくりに目覚められたのですか?

元々は3Dプリントのことも全く知らない状態だったんですけど、新卒で入社したのが製造コンサルティングの会社だったんです。周囲は理系、しかも研究者上がりの人が多くて、女子大卒、かつ文系の私は全く話が通じなかった(笑)。そういう人たちに囲まれて、徐々にものづくりに親しみながら研修が終え、配属されたのが、まさかの技術営業職。そこから3Dプリンター浸けのキャリアがスタートしました。

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3Dプリンターって日本では当時、まだまだ知られていなくて。日本語で「3Dプリンター」って検索しても全く出てこなかったんですよ。ただ、英語で検索してみると沢山の情報が出てきたので、これから来るな、っていう予感はありました。なので、新規事業として個人向けの3Dプリンティングのサービスを立ち上げました。今では色々なサービスが出てきていますけど、日本では当時まだ無かったんですよ。

分かりづらい3Dプリントのことも、説明の仕方を工夫すれば女性にも響く

そのサービスをやっている時に、女子大時代の友達に会って「今、何やってるの?」と訊かれることがあって。内心「3Dプリントのことなんて通じるかな……」って思ったんですけど、わかりやすく説明してみたら、すごく面白がってくれたんです。そこから3Dプリンターをどうやったら分かりやすく女性に説明できるのか、どうやったら魅力をわかってもらえるのかと考えるようになりました。

たとえば、ジェルネイルは光硬化樹脂というものを用いていて、これは3Dプリントと同じ原理なんですね。そういった説明をしてあげると共感して、興味を持ってくれる。そこから「ものづくりを女子たちと楽しく話す」のって面白そうだな―と思いはじめて。

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3Dプリンターで出力した作品やプロダクト。

――確かに、身近な友達が言ってくれると共感しやすいし、自分たちが身近に感じられることに置き換えて説明してもらえると親しみを持ちやすくなりますよね。当時も自分で何かものづくりをされていたんですか?

昔から工作は好きでしたが、大学生になる頃にはそんな機会も減っていました。研修ではCADが苦手で(笑)。ただ、自分だけでは出来ないことも、社内のエンジニアの手を借りながらでもとにかく作ることから始めて、だんだん慣れていきました。ものが生まれる瞬間に立ち会えた時は凄く感動して、技術や機械がとてもカッコいいと思いました。みんなが「カワイイ!」って言っているものも実は「カッコいい技術」を使ってつくられているんだぞ、と。

ある時、友達の結婚式に3Dプリントで何かできないかなと思って、ドンペリのボトルに飾る、イニシャルが入ったボトル用のネックレスを作ったことがありました。社内でも面白いねと盛り上がって、その後商品化もしました。この頃仕事を通じて知り合った女性たちとスタートしたのが「ものづくり系女子」です。

――ちなみに「ものづくり系女子」ってどんな活動をされているんですか?

一言で言うと、勝手に製造業をPRしています。最近はワークショップに集まってもらうのが主な活動ですね。メンバーも幅広くて、ウェブをやっている人だったり、建築系の人、アクセサリー作家だったり、陶芸をやっているという人も居ますね。色々なバックグラウンドの人が集まっているので、異分野同士のコラボが生まれやすい環境なんです。最初はものづくり系のガールズトークをやってみるというところからスタートして、今は外部からの依頼で展示やワークショップを行うことも多いです。

仕事だったものづくりが「自分事」になり、異業種のプレスにチャレンジ

――なるほど。ものづくり系女子のガールズトーク……どんなお話が繰り広げられるのか非常に気になりますね(笑)。ちなみに3Dプリントから何故ファッション業界に?

3Dプリントの世界に5年くらいいたんですけど、徐々にものづくり系女子の活動の幅が広がって、3Dプリンターの存在も知られるようになったんですね。ものづくり系女子としての活動を広げていきたいけれど、一方で会社に所属していると活動にある程度制約が出てきてしまう、だからものづくり系女子はライフワークにして、お仕事を変えよう! と思ったんです。

営業から始まって「3Dプリントを広く広報する」という目線でずっと働いていたので、やはり広報がやりたいと思っていた時に、ある日セレクトショップ「Lamp harajuku」のプレス求人を見つけて。

実は、辛うじてLamp harajukuの名前を知っていたくらいで買い物したことはありませんでした。募集文面のパンチに強く惹かれて応募してみました。案の定、面接ではファッションの話ができないので3Dプリンターの話で熱くなってしまって(笑)。面接が終わってから「ああこりゃ駄目だ」と思ったんですけど、もう一度面接の機会を頂けました。そこであらためて、このお店のファッションと私の接点ってなんだろう?と考えて、2度目の面接ではショップのイメージを落とし込んでレーザーカッターで作ったアクリルのリボンを持って行ったんです。そうしたらLamp harajukuバイヤーの矢野悦子さんが「すごい!」「テクノロジーってこういうふうに使えばカワイイんだね、面白いモノがつくれるんだね」って言ってくれて。ファッション業界でも有名なバイヤーさんが、自分が作ったものをカワイイって言ってくれたのは本当に嬉しかったですね。

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――そこからセレクトショップのプレスとして働き出したんですね。

はい。全く違う業種だったんで、最初は戸惑いましたが、ファッション業界ってワクワクしたい、楽しいものに対して働いているということが根本にありますよね。例えば、仕事でちょっと煮詰まっていた日も、朝出勤して「かわいいね!」と言ってくれたり、お店に行ったら「これ似合うんじゃない」って言われたりとか、そういうコミュニケーションって他の業界では無い、ファッション業界独特ですよね。それに気づいてから、凄く楽しくなって、ワンシーズンでクローゼットの中、全てLamp harajukuのものになっちゃいました(笑)

3Dプリンターなどのテクノロジーと、Lamp harajukuの個性的なガーリーなお洋服というのは、どちらも10人いたら1,2人が好きと言ってくれるような、ちょっとニッチなものだと思っていて。ただそれを「実は面白いんだよ」「一歩踏み出したらとっても素敵だよ」と紹介していくという意味では、3Dプリンターもファッションも私にとっては同じくらいワクワクすることで、同じように広報しているっていう感じです。見た目は、ぜんぜん違うんですけどね(笑)

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旦那さまと起業してからは2人でものづくりに携わる毎日だそうで、結婚式も「ものづくり」満載だったそう。ドレスからリングまで手作り!
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こちらは3Dプリンターで作ったというマリッジリング。

「かわいい」という感性もものづくりを理解するひとつのきっかけになる

――神田さんにとって、ものづくりの楽しさってなんですか?

ものづくりにおいて「カワイイ!」とか「私はこれが良い!」と思う感性って、各々自由なんですね。ある一方では、正確、安全、機能など沢山の評価軸があるんですけど、理屈抜きでカワイイ!って思えるか、という価値観もあると思うんです。

完成した物に対して、かわいいって思うことは普通だけれど、作り方に対してかわいいという感性があっても良いんじゃないかなと思っていて。

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こちらは神田さんが工具箱にしているバスケット。「特に使いようのないものがいっぱい入っている」という。
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バスケットから出てきた神田さんのイチオシアイテム。製造現場で出会った、美しいもののひとつだという。これは工作機械用の「エンドミル」という工具で、ドリルのように金属を削り出しする先端部分なんだとか。

先日ものづくり女子たちと話題の電力の販売自由化について話していて、自分たちが使う電力が、「実はハムスターが一生懸命に回し車を回して発電した1kwです!」……なんて言われたら、めっちゃかわいいし、それなら大切に使うよね、という話になって(笑)

この話はかわいい、って端的に言ってしまっていますけど、どんなものも実は尊く作られたものであって、それをどういうふうに大切にできるか、つまり背景に想いを寄せるという意味では、かわいいというのもひとつのアプローチ方法なのかなって思うんですよね。結果的に、それがものづくりに対してもう一歩踏み込んで理解していくきっかけになるんじゃないかなと思っています。

Little Machine StudioはFabカルチャーを発信する「プレスルーム」

――ちなみにここ「Little Machine Studio」はどういう場所なんですか?

3Dプリンターに代表されるように、テクノロジーにはキャッチーな部分と、わかりにくさが同居しています。3Dプリンターの書籍の執筆をした時に、キャッチーさの紹介だけだと置き去りにされてしまう技術への理解を大切にしたいと強く感じました。でも正しさだけじゃなく、楽しさも伝えたい。この立場だからこそフラットに色んなテクノロジーを発信することができるんだなってことに気づいて、私の業界的なポジションをそのまま「場所」にしてしまったのがこのLittle Machine Studioです。

マシンに関しては各メーカーがショールームを持っているのが普通ですが、あくまで中立派ということでその時々に面白いマシンをピックアップしています。縁あってシェアプレイス「theC」のラウンジスペースにスタジオを構えることになり、シェアオフィスの人が遊びに来たりもしてくれます。

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なのでこの場所は、「プレススタジオ」と呼んでいて。アパレルの人にとってはお馴染みの「プレスルーム」としてやっているつもりです。その時々の最新のマシンがそろっていて、テクノロジーの取材があった時にここに来れば見て、話が聴ける、という場所です。まだテクノロジーのトレンドってシーズンも何も無いんですけど、アパレルにはよくある「今春は白が流行りなので、白いアイテムありませんか?」みたいな問い合わせがくることが最終目標。「今、ここに白いマシンありますよ!」みたいな(笑)。

例えば、超シンプルなマシンがあったら、それを「ノームコアマシン!」って言っちゃうとか、毎年「最優秀コスメ」が発表されるように「ガールズベストフレンドな最優秀マシン」を発表するとか。ファッションって言葉が豊富じゃないですか、テクノロジーにもそういう面があっても良いと思うんです。突っ込みどころは満載なんですけど(笑)、それくらいやりきっちゃったほうが面白いかなと。マシン側は凄く進化しているので、最初何も知らなかった私みたいな女の子でも、きっかけさえあればどんどん使えちゃうはずなんです。

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常時4,5台のマシンが設置されているという。こちらはレーザーカッター。
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こちらは3Dプリンター。中には3Dプリントで出力したシューズが。
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3Dプリントの素材となる樹脂もおしゃれに。
ものづくり系女子たちに最近人気のマシンがこちら。オリジナルのリボンやテープが作れるんだそう。
ものづくり系女子たちに最近人気のマシンがこちら。オリジナルのリボンやテープが作れるんだそう。

基本的には予約ベースでプレスルームとして取材対応をしているんですけど、Fabカルチャーがひとつのジャンルとして認識されて、もっと幅広い人達が見に来てくれる場になってほしいなと思っています。実際に動くマシンが置いてあるので、ふらっと知人のクリエイターさんが遊びに来てくれたりもしますよ。

――クリエイターさんにとってもありがたい場所なんですね。神田さんご自身は、デジタルファブリケーションがファッションと出会うことによってどのようなことが起こると思われますか?

技術の「コーディネート」がアツいと思っています。3Dプリンターもそれを使って何かを作っただけでは、3Dプリンターが頑張っただけですけど、3Dプリンターで作ったものに、UVレジンを掛けてキラキラにしてみたり、3Dプリンターと簡単なクラフトを組み合わせて、新しいコーディネートをすることができる。

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Lamp harajukuのために、3Dプリンターを使って出力したポップに、デコパッチを貼ったもの。クラフト的な表面の仕上げ加工を組み合わせて、3Dプリンターの弱点である質感をいかに克服するのか、ということを総務省「異能vation」プロジェクトとして目下研究されているそう。

これは未開拓の分野で、まだまだ3Dプリンターってマシンとして荒削りな部分もありますし、どうしても性能軸で語られることが多いので、気軽な技術の組み合わせ=コーディネートっていう観点があると、もっと色んな人達が自由に楽しめるんじゃないかなと思っています。

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この日、神田さんが着用していたアイテムはもちろん全て「Lamp harajuku」のもの。

3Dプリンターを代表とするデジタル工作機器を用いたものづくり、デジタルファブリケーションの魅力について語る神田さんの姿はキラキラ輝いていて、Fabカルチャーをもっと身近に、幅広い人たちに伝えていきたいという、その熱い心がビシビシと伝わってきました。

こちらもますます「ものづくり欲」を刺激されてしまいました。今年はやっぱりものづくりの年に、なるかも?

Little Machine Studio

東京都千代田区内神田1-15-10 theC B1F
http://w-i-p.jp/lms/
Little Machine Studioではテクノロジーとファッションの両方でプレスアシスタントを募集中。

また、フェミニンでガーリーな大人の女性への提案がテーマのLamp harajukuでは、月替りのウィンドウインスタレーションやアーティストを紹介するNews Letterを配信中。登録はウェブサイトから。
http://lamp-harajuku.com/

Text : Nagisa Ichikawa

DiFa編集部



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