Special | 2016.03.25
「デジタルファブリケーションの力で、服づくりをしたい」中村 理彩子さん ―【連載】デジタルファッショニスタを追え☆

「デジタルファブリケーションの力で、服づくりをしたい」中村 理彩子さん ―【連載】デジタルファッショニスタを追え☆

DiFa編集部が注目する、テクノロジーとファッションの情報感度が高い女子「デジタルファッショニスタ」の生態を解剖する連載「デジタルファッショニスタを追え☆」。7回目の今回は、慶應義塾大学SFCの水野大二郎研究会に所属し、研究活動の一環としてデジタルファブリケ―ションの実践経験もあり、そしてモデルとしても活躍している、中村 理彩子さんをご紹介します!

中村 理彩子(Risako Nakamura)

大学生・モデル
1994年埼玉県生まれ。幼少期をハワイとサンフランシスコで過ごす。中国・上海を訪れた際、服飾文化の違いに魅せられたことをきっかけに、ファッションデザインの研究を志す。現在は、研究活動の一環として、レーザーカッター等の工作機械を用いた衣服製作を精力的に行うほか、ファッションモデルとしても活動を行っている。慶應義塾大学総合政策学部・水野研究室所属。2016年4月からは文化服装学院で本格的に「服作り」を学ぶ予定。将来デザイナーとしてブランドを立ち上げるのが目標。
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Risako Nakamura

 

大学での研究活動を通じて見つけた、”自分が本当にやりたかったこと”

――現在は、どのような活動をされているのでしょうか?

いま大学三年生で、慶応義塾大学総合政策学部の水野大二郎研究会というゼミに所属しています。ここでは「インクルーシブデザイン」というユーザを巻き込む参加型のデザインや、デザインにおけるその「実践」に重きを置き、デザイン及びその影響や効果の研究、私はなかでも「ファッションデザイン」の研究をしています。

研究の一環として、服をデザインして作るという課題があって。それから、レーザーカッターなどの工作機械を使って、素材をカッティングして組み合わせてみたり、木型を使って柄の熱加工をしてみたり、デザインから製造工程まで自分が欲しいものを形にしていく、ということを本格的にやるようになりました。

Risako Nakamura

 

――元々こういった、デザインとかファッションという分野に興味を持たれたきっかけは、なんだったのでしょうか?

それまでは私、中国政治を専攻していたんです。全然ジャンルの違う内容に思われるかもしれないですけれど、フィールドワークなどで上海に行く機会が何度かあったんですね。その時に、初めて目にした現地の服飾文化が、私にはすごく衝撃だったんです。派手な色使いだったり、服の裏地が全くなかったり、縫い目が粗かったり、製品としてのクオリティへの価値観が日本とは全然ちがって。色がごちゃ混ぜになったコーディネートも新鮮で、すごく惹かれてしまったんです。写真もかなりの数を撮りました。

中村さんが中国で実際に撮影してきたストリートスナップ。(顔のモザイクは編集部で処理)
中村さんが中国で実際に撮影してきたストリートスナップ。(顔のモザイクは編集部で処理)

例えば、南京東路(ナンジン・ドンルー)には「ZARA」や「UNIQLO」があって東京の渋谷っぽい印象を受けましたし、南京西路(ナンジン・シンルー)はもうちょっとハイソだったりして。外灘(ワイダン)とか田子坊(ティェンヅファン)など観光客がたくさん来るエリアにも行きました。上海の主要なファッションストリートや色んなエリアを周って、そこにいる人にファッションに関するアンケート調査をしたんです。

毎月ファッションに幾ら位お金を使っているのか、お小遣いは毎月幾らあるのか、どの雑誌やWEBをチェックしているか、いつからファッションに興味を持ったか、、、そんな項目をたくさん用意して、回答データを集計して同じ質問項に対する日本の回答(既存の統計閲覧)との差異にどのような歴史的背景が影響を及ぼしているのかを、後に課題論文にまとめたんですが……。その研究を通じて、私は中国政治よりもファッションが完全に好きなんだって、気づいてしまったんですよ(笑)そしたらもう、ファッションを学ぼうと。

大学3年生の春学期に、水野大二郎さん(慶應SFC准教授)の講義「ファッションデザイン」を受講したことがキッカケで、この分野への興味を大いに深めることになったのだそう。『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社/著者・水野大二郎ほか)
大学3年生の春学期に、水野大二郎さん(慶應SFC准教授)の講義「ファッションデザイン」を受講したことがキッカケで、この分野への興味を大いに深めることになったのだそう。『ファッションは更新できるのか?会議 人と服と社会のプロセス・イノベーションを夢想する』(フィルムアート社/著者・水野大二郎ほか)

試行錯誤だらけ!? デジタルファブリケーションでの服作り秘話

――現在大学で所属されている研究会では、課題の一環として3Dプリンターやレーザーカッターなどの電子工作機械を用いた服作りもされているとのことですが。

水野大二郎先生の「ファッションデザイン」という授業を受けたとき、初めて自分で服を作ったんです。その授業では、毎講義、毎講義、色んな機材の使い方を1つずつ紹介してくださるんですが、例えば1回目は「Illustrator」の使い方、その次は「3Dプリンター」とか、毎週1つずつスキルが身についていくという内容なんです。毎回、次の講義までに作品を作って提出する課題があるので、色んなものを作る事になって。服の型紙のとり方も教えてもらったりして。これホントすごい講義内容だと思います(笑)。

服を作るって、実はおばあちゃんでも出来るような作業だと思っていたんですけれど、実はこんなに付加価値の高いデザイン工程があって、新しいことなんだってすごく思いました。

Risako Nakamura
雑誌「CYAN」「SPUR」や、ウェブ「STUDIOS」「miia」などで、モデル活動も行っている。

――ちなみに今日のファッションも課題で作られたものだったりするんですか?

これ……、実は失敗作だったものを手直ししたようなものなんです(笑)ブラトップのワンピースって部屋着みたいなものが多いんですけど、お出掛けにも着ていけるようなものが欲しかったので自分で作りました。

この裾にある柄は、Illustratorで作成したデザインからレーザーカッターで木型を出力して、熱圧加工の出来るプレス機械でぷっくりと立体感を出しています。スカートの生地は、ナイロンとポリナイロンの混紡なので、プリーツ加工する機械と同じような理論ですね。裾もハサミで裁断して縫って処理をするのではなく、レーザーカッターで裁ち落としてみました。

熱加工で型押しのデザインが施されたスカート。”いかにも”な感じがなく、おしとやかで可愛い。
熱加工で型押しのデザインが施されたスカート。”いかにも”な感じがなく、おしとやかで可愛い。

やっぱり木型は削りやすいし熱にも強いし、加工用に使う型の材質としてはとても扱いやすいなと思いました。……でもこれ、昨日急いで作ったので。思っていたのより、ちょっと失敗はしてます(笑)

――昨日作ったんですか!?(笑)

そうなんです(笑)模様は以前、あくまで実験で作成し今後はもう使う予定がなかったのですが、もう一度裁断し直して形を変えて縫い合わせれば着れるかと思いました。なので、これを着てみるのも、今日が初めてです。思い立った時にパッと出来てしまうのも、デジタルファブリケーションならではの良さなんです。昔は1か月かかったかもしれない工程が、今は機械を使えば1週間で出来てしまうかもしれない。これは和柄をイメージして作ってますけど、例えば裾処理には青海波(古典柄)とかのデザインパターンをレーザーカッターで、フロッキーシート(熱転写が出来る素材)をバッと裁断して貼ってしまうとか。

化学繊維の素材だったら熱加工処理が可能なので、レーザーカッター彫刻でくりぬいた部分もほつれないんです。これは、今の技術があるからこそできることですよね。

――それ絶対、私の学生時代だったら一個一個カッターを使って手でくりぬいてましたね(笑)。(by市川編集長)

職人さんとか、技術の積み重ねでしかできなかったものが、機械があることで、初心者でもどんどん作りたいもののイメージに近づける事が出来るようになってるんですよね。こういったグリッドデザインを活用したアウトプットはとても今っぽくて面白いと思っています。

情報源は結局「人」かもしれない

――よく読んでいるサイトは?

ウェブサイトだと、「WWD JAPAN」、「WIRED」はよく見てます。ファッションとテクノロジーとトレンドカルチャーのニュース。私は「RED Valentino」とか「YOKO CHAN」が好きなんですけれど、関連情報が出てないかなってチェックしたり。Twitterは「FashionPress(@fashionpressnet)」とか。「DiFa(@__difa__)」もチェックしてます。

Risako Nakamura

 

――愛用しているウェブサービスやアプリはありますか?

Pinterestはよく使います。服作りの参考にもなりますし、無料の型紙がPinされていたりするんですよね。それを使って実際に作ったりもします。周りの女の子は全く違う使い方をしているみたいですけど。カフェとかコスメとか芸能人とか。

Risako Nakamura

 

――Instagramは?

私InstagramもSnapChatも実はやってなくて、完全に出遅れているんですけれど、周りはすごく使ってますよ。……そういえば、こないだ衝撃だったんですけど、銀行に行ったときに自転車を停めていたら、カゴに「今度ランチでも行こうよ、俺のInstaアカウントこれだから」って紙が入ってたんですよ! そうきたかと(笑)

――Instagramでナンパですか(爆笑)時代ですねぇ……。それ以外に日々使ってるアプリはありますか?

Fril」と「メルカリ」は愛用してます。使い分けもしていて、メルカリでは衣服はあんまり買わないですね。「旦那がもらったけど着てません」とか、ラッピングされたままの男性用アイテム出品も多いので、弟の誕生日プレゼントを買う時とかに使ってます。

でも一番面白いのは、こういうアプリって”そのモノが本当に持ってる市場価値”がすごく解りやすいということ。知らないお店とかリサイクルショップとかのコメント欄で、値段交渉のスレッドを見てるのが本当に面白い。何が高く取引されているのか、何故安くしても売れないのか、すごくよくわかる。ブランドの名前とかスタイリストさんとか、売り手が作った綺麗なコンセプトやアピールポイントよりも、買い手の目線で投稿された言葉にはすごく現実味があるんですよね。

だから、原点回帰ではないですけど、やはり中国の市場へ興味が沸いてくるんです。中国のファッションは表面だけで攻めてるものが多いけれど、実は多くの人にはそれだけでファッションって十分だったりするんだなぁ、とか思って。

――なるほど。中古市場でこそ本当の価値が解るって、確かにそうですね。

Risako Nakamura

 

あと、大学の先生に教えてもらったサービスで、「ISSUU」とか。これはウェブマガジンを自分で作れてしまうサービスなんです。カタログ化したものをフリーペーパーとして紙に出力して、配布する方もいるくらい、質感が雑誌っぽくて好きです。私はどう機能するんだろう、と思って、まずは自分のモデルとしての活動の一作品を公開しています。ホントはもっとIndesignとか駆使して、写真集のようにデザインを深めた方がいいかなと思うんですけど。TwitterとかFacebookでやるよりもスマートで、シンプルなとこが良い。Tumblrをよく使ってた人は、これも使いたいと思うんじゃないかと思います。

――ちなみに、まだ挑戦してないけれど、使ってみたいと思ってるWEBサービスはありますか?

STARted」を使ってみたいです! 春から服作りを本格的に学びに専門学校へ行くんですが、パターンもできるようになりたいと思っていて。やっぱり服作りって、パターンを起こすところがなかなか難しくて、書いた絵から服を作るってどうやってるんだろうってところに興味があります。アクセサリーで同じようにイラストから作ってくれるサービスは見たことがあったんですけど、ついに服でも出来るんだ!って驚きがありました。

STARTed Top
参考記事:イラストをアップロードするだけで服が作れる―アパレルの生産背景と服を作りたい人を繋ぐ「STARted」

デジタルに映えるアウトプットは、アナログでのインプットが重要

――デザインやアイディアの参考に出掛ける場所とか、読んでいる本はありますか?

千駄ヶ谷と外苑前の間の、ワタリウム美術館近くにある「Shelf」とか。洋書が手ごろな値段でたくさんあるのでよく行きます。あと、福原 志保(@vitronique_ja)さんに教えていただいた、慶応義塾大学環境情報学部脇田玲先生の著書『Access to Materials -デザイン/アート/建築のためのマテリアルコンピューティング入門』。まだこれから読むんですが、かなり読み応えがありそう。

「素材」に着目した、電子工作とフィジカルコンピューティングの入門書。『Access to Materials -デザイン/アート/建築のためのマテリアルコンピューティング入門』
「素材」に着目した、電子工作とフィジカルコンピューティングの入門書。『Access to Materials -デザイン/アート/建築のためのマテリアルコンピューティング入門

――注目されている方はいらっしゃいますか?

これもまた、大学の先生の紹介で知った人物なのですが、長崎にお住まいで、手作りのリメイクアイテムを通販等で販売されている山下 陽光さん(@ccttaa)とか。「途中でやめる」っていうブランドをやられているんですが、毎回入荷したらすぐ完売になってしまうほどで。時々東京にもいらして「直売」イベント(次回は3月20日だそう)もされています。お店を構えていなくても、自分のペースでブランドを展開することは出来るんだなぁ、と。

ブランド『途中でやめる』公式WEBショップより デザイナーさんが自ら素材を集め、リメイク。一つ一つ手作りだというアイテム達は、どれひとつとっても表情が豊か。
ブランド「途中でやめる」公式WEBショップより デザイナーさんが自ら素材を集め、リメイク。一つ一つ手作りだというアイテム達は、どれひとつとっても表情が豊か。

デジタルファブリケーションの変革を追い、日本の古典柄を表現したい

――デジタルテクノロジー×ファッションでやりたいことってありますか?

デジタルファブリケーションの力によってさまざまな作り手が社会に登場し始めています。ある特定集団において、デジタルファブリケーションという新たな「DIY」の形が、その集団の従来の生態にいかなる影響を及ぼすのか、注目を集め始めてからしばらく経っているんです。

その点で、私が個人的に大好きな(笑)特殊な模倣文化を持つ中国社会において、デジタルファブリケーションがどのような効果をもたらすのか、とても興味があります。おそらく中国では、徹底して「アントレプレナー的ファブリケーション」になるのではないかと私は勝手に考えていて。

――「アントレプレナー的ファブリケーション」とは具体的にいうと?

例えば、東京大学社会学研究所の丸川知雄教授は『社会人のための現代中国講義—第6講』の中で、中国の意外にも「大衆資本主義的」な側面に触れています。丸川教授は「大衆資本主義」の特徴を、「わずかな資金しか持たず、学歴と専門知識といった人的資本ももたない人が見よう見まねで起業すること」だと言っていますが、中国の温州では、個人が家畜を所有するだけで資本主義呼ばわりされるような文化大革命の最中に、このような「大衆資本主義」がいわゆる「ヤミ市」としてちゃっかり発達し、優れたエコシステムを形成させました。

やっていることというのは、そのとき儲かりそうなあらゆる商売、例えば革靴やボタンづくり。それらに村中の人間が飛びつき、その結果、独自の発展を遂げました。これは平地が少なく、農業に適していない温州ならではの発展様式だと言われています。丸川教授いわく最近の中国では、壊れた携帯電話拾ってきて自ら再生させて再販売するという商売が流行っているようなんです。

つまり、中国には根強い起業精神とDIY精神の両方が宿っていて、一個人が時代の流れに素早く適応しながらぽこぽこと起業し、ぱたぱたと倒産する面白い地域。そう考えると中国は、きっとデジタルファブリケーションの恩恵を享受できる民族と地域なのではないでしょうか。

このような学術的な見識から、デジタルファブリケーションが社会にもたらす変革を追いながら、自分も服作りの実践を続けることでその一動力でありたいと考えています。

――ちなみに、デジタルフアブリケーションで具体的につくってみたい服など、ありますか?

私はフェミニンな服づくりが好きです。あとは日本の伝統的な表現、例えば青海波や御所車、また、着物に見られる物語の様な模様が大好きなんです。デジタルファブリケーションの中で、そのような日本の古典柄を表現したいですね。

――ぜひ、頑張ってほしいです。これからが楽しみですね。今日はありがとうございました!

ありがとうございました!

Risako Nakamura

 

「学んで、作って、着る。」3つの視点からファッションを見る彼女の目には、どんな世界が映っているのでしょうか。ご自身の発想力や創造力のルーツは、研究活動で訪れた中国での出逢いや、ご実家と縁の深い茶道など日本の伝統文化にあるとおっしゃっていた中村さん。

ファッションの未来が欲しているのは、このように歴史を踏まえたうえで、固定概念や枠組みから解き放れたトランスファーな人、ではないでしょうか。春からは専門学校生となり、ファッション製作を実践的に学び始めるのだそう。服作りの基本の「キ」を身に着けた彼女が、どんなファッションを産み出していくのか、楽しみにしています!

Photo : Soshi Setani

DiFa編集部



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