Special | 2015.10.24
【後編】JFWO 信田阿芸子×DELTRO 坂本政則に訊く、新時代の「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京」キーヴィジュアルの行方

【後編】JFWO 信田阿芸子×DELTRO 坂本政則に訊く、新時代の「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京」キーヴィジュアルの行方

※こちらの記事は、Fashionsnap.comで2015年10月18日に公開された「JFWO信田阿芸子×デルトロ坂本政則に聞く② ファッション・ウィークとデジタルの未来」を加筆修正の上、転載したものです

ファッションとデジタルコミュニケーションの未来を指し示した、「メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京(Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO=MBFWT)」の今季キーヴィジュアル。その立役者である、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)信田 阿芸子さんと、アートディレクションを担当した「DELTRO(デルトロ)」坂本 政則さんを迎えた対談の後編(前編はこちら)です。

デジタルを活用することで、メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク東京はどんな変化をみせるのか。また、ウェアラブルデバイスをはじめとしたデジタルとファッションの未来は、ファッショニスタを幸せにするのか。気になる今後の流れをお二人に語って頂きました。

信田 阿芸子 (Akiko Shinoda)

一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)国際ディレクター
1993年伊藤忠商事株式会社入社、大阪本社のブランドマーケティング事業部(現)に配属。2000~05年のリチャード ジノリ ジャパン(株)出向時代には、プレス、商品企画、営業、物流など現場全般業務を務める。その後、東京本社出身部に戻りRoberto Cavalliほかブランドの日本導入などを担当し、伊藤忠ファッションシステム(株)への出向を経て、2008年に一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)国際ディレクターに就任。経済産業省のサポートのもと、イタリア、パリ、ニューヨーク、インド、モスクワ、ジャカルタ、上海、サウジアラビア、シンガポール、バンコクでも日本ブランドのプロモーションイベントなどを実施し、日本のデザイナー、ブランド、ファッションウィークの海外発信および若手クリエイターの海外進出支援を精力的に行う。 世界のファッションビジネスで影響力のある500名として「BOF 500」に2014年・2015年選出。2015年文化庁文化政策委員会の委員に任命。 15歳の長女と13歳の長男を持つ二児の母。

坂本 政則 (Masanori Sakamoto)

DELTRO INC. 代表取締役/アートディレクター/デザイナー
1972年静岡県生まれ。デザインファームDELTRO代表。アートディレクター/デザイナー。1999年よりフリーランスとして活動を開始し、以後、企業、ファッション、アニメ等様々なジャンルのアートディレクション、デザイン、プログラミングを担当。2009年にテクニカルディレクター/プログラマー村山健と共に株式会社DELTROを設立。デザイン/テクノロジーによる表現を主軸にメディアとフィールドを縦断。物事の本質や感動を伝えるべく活動を続けている。カンヌ国際広告賞、クリオ賞、D&AD賞、One Showなど国内外の広告賞を多数受賞。クライアントワーク/プライベートワーク問わず、オリジナルタイプフェイスの制作を積極的に行っている。代表作として「IntelR The Museum of Me」Webサイト、「Honda Road Movies」アプリ、ファッション/スポーツではUNIQLOやNikeなどのプロモーション、フォント開発では「au INFOBAR iida UI用欧文フォント」、アニメ作品のWebサイトでは「攻殻機動隊SAC」「交響詩篇エウレカセブン」「ギルティクラウン」などがある。

DELTRO ウェブサイト | Facebook | twitter

ファッションウィークとデジタルテクノロジーの未来

――今回の坂本さんとの取り組みで、WEBとの垣根がようやく取り払われたと思うのですが、MBFWTとして、どういった形でデジタルを活用していきたいかなど、今後のビジョンはありますか?

JFWO国際ディレクター信田 阿芸子さん(以下、信田 敬称略):そもそもファッションウィークは、イベントの実施自体が目的ではありません。日本全国にある繊維産地には、紡績、縫製、織り、加工など200以上の工場があります。メインドインジャパンが評価されているように、日本のモノづくりにおける高度な技術や卓越した職人技は、日本の繊維産業の長い歴史と日本人の勤勉な気質によって育まれてきましたが、ご存知の通り、人口減少によるマーケットの縮小や工場の後継者不足などで危機的な状況にあります。

そういった、守らなければならない国内繊維産地の工場や職人技を、国内には再認識してもらい、また世界へはもっと周知させるために、さまざまな施策を実施することもJFWOの役目なんです。

MBFWTの活動は東京を拠点にしていますが、将来的にデジタル技術が進化したら、地方と東京を結びつけて、産地の人たちと一緒にできるコンテンツをつくれないかと思っています。そうすると、海外への発信力も強くなる。

Interview_151016_02

東京には本当に優秀なデザイナーが沢山いますので、彼らに協力してもらって、産地を盛り上げる方法もあると思います。例えば、昨年度2シーズンにわたり「THIS IS MY PARTNER」という産地企業や職人さんを応援するプロジェクトを実施しましたが、このスキームをベースにして、まだまだできることがあるのではないかと思っています。

THIS IS MY PARTNER (http://tokyo-mbfashionweek.com/jp/the19th/event/thisismypartner.html
THIS IS MY PARTNER vol.2(http://tokyo-mbfashionweek.com/jp/the20th/event/thisismypartner.html

日本のモノづくりの技術力や品質の高さは、数々のトップメゾンのモノづくりを担っているイタリアに引けを取らないと確信しています。先日、欧州2大素材展示会の1つ「Milano Unica(ミラノ・ウニカ)」に15年ぶりに行ってきましたが、ほぼ同じクオリティーと思われる生地が、イタリアメーカーのものの方が日本メーカーのものより3倍以上値段が高いんです。

その理由は、イタリアメーカーのプレゼンテーション力にあります。イタリアの生地を使っているデザイナーに聞くと、自分たちのコレクションに直接インスピレーションを与えるくらい素晴らしいプレゼンテーションをしてくれると言います。そうした状況を目の当たりにして、日本も東京を拠点にしているデザイナーたちと地方の産地工場の間にある物理的・感覚的な距離を縮めるためにも、デジタルでうまく関わっていけないかと思っています。

――ウェブ上だと、物理的な距離が関係ないのが大きいと思うんですが、産地と東京で進めてきたものを、海外に発信していかないと全く広がらないなというのは個人的にも感じています。あとは、それをより活用できる知見のある人が入ってきてどんどん活性化していかないと、あんまり変わっていかない気がしますね。坂本さんはデジタルとファッションの可能性について、また、デジタルとファッションショーについてご意見はありますか?

服作りのプロセスに、デジタルコミュニケーションを加えた新しい仕組みの導入を

DELTRO 坂本 政則さん(以下、坂本 敬称略):僕はファッションに関してあくまでコンシューマーで、仕事上では1つのブランドが服を作り上げたところから関与することがほとんどなので、生地産地とファッションブランドの話に今すごく納得しています。

Interview_151016_04

この状況に対してデジタル技術やインターネットにできることと言えば、近年目にするようになった3Dプリンターを使ったファッションアイテムのような、服づくりのアプローチ自体から変えてしまうものであったり、完成イメージを容易に確認できるツール、工程をショートカットできるような便利ツールなど色々あると思いますが、一番大事そうなのは、日本のファッション業界における、服づくりに特化した決定版的デジタルコミュニケーションサービスの立ち上げでしょうか。

——「服づくりに特化したデジタルコミュニケーションサービス」ですか。具体的には?

マテリアル、縫製、デザイン、情報発信など「服づくりに関する一連の情報交換が統合的に実現できる場所」という感じですね。ユーザー同士のコミュニケーションが活性化するような構造を持ち合わせたものです。

どの分野にも言えることですが、カテゴリーごとに分散した専門性の高いWEBなどは存在すると思いますが、それぞれユニークなデザインと構造であり、かつ設計が古くて読みにくい/使いにくいことが多く、一部の人しかそれらを有効利用できなかったりする現状があると思っていて。結局、物理的に手に取れるモノを作る際には、産地に出向いて職人さんとの直接的なコミュニケーションが重要になりますよね。

地方の生地産地の人々がインターネットを上手に活用できるとも思えないので、ひとまず器としてのデジタルコミュニケーションサービスを立ち上げてみてはどうかなと。リテラシーの高い知見のある方や若い世代がこれを巧みに使い、デジタルコミュニケーションをベースとして、産地との服づくりの可能性を提示していければ、1つの大きな道筋は作れると思うのですよね。

現存する「Skype」や「Google Hangouts」などのコミュニケーションツールがあれば、単純に距離を超えたモノづくりに関してのハードルは随分下がりますが、仕組みを定着/活性化させることが一番難しいと思います。特に若い世代が洋服の形をつくることだけでなく、生地産地とのコミュニケーションを積極的に行うことだったり、橋渡し的な人が入ってくると状況が大きく変わってきそうだなと思いました。

いずれにしても、デジタル技術でできることと仕組みの設計に関しては、存分にお手伝いできるのかなと思いました。

——私は普段コンサルティングのようなお仕事をさせていただくことが多いのですが、中でも良くお見かけするのがファッション側の方に「(デジタル技術を使って)こんなことをやりたい」というヴィジョンはあったとしても、それを具現化する為に何が必要で、どんな技術が使えるのかという部分の知見がないために、ある程度のところで留まってしまっているということです。

坂本さんに例として挙げて頂いたデジタルコミュニケーションのサービスも、坂本さんが関わってくだされば理想的な形で具現化していく事ができると思うのですが、そうでなかったら難しいと思います。こういった現状があるからこそ、デジタル技術に対して知見のある方たちにもっととファッション業界に絡んでほしいなと思います。

信田:これをきっかけに、色々と相談できればいいですね。

坂本:そうですね、2シーズンで切れてしまうので(笑)。MBFWTに関してもオンラインサービスを活用した施策や、イベントでのインスタレーションなど、まだまだ考える余地はありそうですし。

ウェアラブルデバイスがファッションアイテムとして成立するために必要なこと

――デジタルとファッションの可能性については、いかがでしょう?

坂本:さきほどちらっとお話しましたが、3Dプリンターを使ったファッションアイテムのような、マテリアルレベルで服づくりのアプローチを変えてしまうようなものは、造形としても新しく、とても興味があります。その他ではアップルウォッチを代表とするウェアラブルデバイスですね。こちらは少し男の子趣味的な意味合いが強いですが、昔映画で観たウェアラブルコンピューターがついに!みたいな熱いジャンルでもあります。光るモノ身につけるのとか憧れました(笑)。

ただ、ファッションアイテムとして向き合うには、正直まだ難しい状況だなと感じています。エルメス版アップルウォッチも「バンドだけかよ、ケースからやってくれよ」ってやはり思ってしまいます。

Interview_151016_03

「Android Wear(※)」が先頭切ってやってますが「OSが汎用チップ化され、スロットに挿入できれば、どんな形状にも対応可能」くらいの柔軟性がないとファッションアイテムとして成立しにくいだろうなと。

以前あるプロジェクトで『2001年宇宙の旅』の「モノリス」みたいな時計のデザインをしたことがあったのですが、残念ながら諸事情により実現に至らなかったのです。自由度があればこその「私はこれをファッションアイテムとして身につけたい」と思わせるモノになるのかなと感じています。

※Googleが開発している、スマートウォッチ向けのOSのこと

和やかな雰囲気で進んだ対談。ファッションウィーク直前のお忙しいところ、ご協力いただき本当にありがとうございました。
和やかな雰囲気で進んだ対談。ファッション・ウィーク直前のお忙しいところ、ご協力いただき本当にありがとうございました。

SNSを始め、様々なデジタルコミュニケーションが発達することで、これまでに夢見た未来が、どんどん実現のものとなっています。しかし、ウェアラブルデバイスとファッションがそうであるように、諸手を挙げて歓迎するにはまだまだ時間が掛かることも事実。だからこそ、今後の動向から目が離せません。
お二人の対談を通して、“ファッションとテクノロジー”の分野に更なる期待が膨らみました。

Special Thanks:Satoru Kanai, Soshi Setani

DiFa編集部



PICK UP

SPECIAL

LATEST

BUSINESS
LATEST