Business | 2016.05.19
【DiFa News Library】ブランド・デザイナー・クリエイターが捉える「Fashion Tech」Vol.1『TOPSHOP』

【DiFa News Library】ブランド・デザイナー・クリエイターが捉える「Fashion Tech」Vol.1『TOPSHOP』

産業としてのファッションの歴史は長く、良くも悪くも独自の伝統や文化を持つアナログな産業の一つです。手作業に多くを依存し、他の業界に比べると、いわゆる「IT化」の波に遅れを取ってきたファッション業界ですが、ここ数年でついにファッション業界にもテクノロジーの波が押し寄せ、素材から、生産技術、販売方法、消費者とのコミュニケーション方法に至るまで、あらゆること・ものが大きく変わりつつあります。

連載企画『ブランド・デザイナー・クリエイターが捉える「Fashion Tech」』では、格式高いメゾンから、ファストファッション、スタートアップファッションブランドが、いかにしてこのFashion Techの波を取り入れてきたかを振り返ってみたいと思います。

【DiFa News Library】
#FashionTech @TOPSHOP

TOPSHOP
-Courtesy of TOPSHOP

1964年に誕生した、イギリス発のハイストリートブランド「TOPSHOP(トップショップ)」。(2006年9月には東京・ラフォーレ原宿2階に出店し日本進出を果たしましたが、2016年現在は日本市場から撤退しています)最先端のファッションを手の届く価格で販売する一方、ロンドンファッションウィーク(LFW)にて、インハウスのデザインチームによるコレクションライン「TOPSHOP UNIQUE」をランウェイ形式で発表しています。

流行に敏感かつ、情報感度の高い層をターゲットとしているTOPSHOPは、デジタルへの取り組みもかなり積極的。特に、年に2回のコレクション発表の際には、ソーシャルメディアプラットフォームとパートナーシップを組み、常に新しい方法で消費者をショーに巻き込む施策を実施しています。

ウエアラブルテクノロジーに特化したスタートアップ発掘&育成プログラム「TOPPITCH」をローンチ

TOPPICH
-「TOPPICH」ウェブサイトより

2016年4月、TOPSHOPは投資会社のLMarksとパートナーシップを組み、ウエアラブルテクノロジーに特化したスタートアップの発掘、及び育成プログラム「TOPPITCH」を発表。ハイストリートブランドであるTOPSHOPのカスタマーが実際に欲しいと思うウェアラブルデバイス、すなわちスタイリッシュで機能的、かつ手の届く価格帯のウェアラブルデバイスを製品化すること狙っています。

TOPPITCHの参加メンバーに選ばれた企業は、メンター制度に加え、ビジネスの成長やハードウエアの開発に関するワークショップ、基調講演などが組み込まれた「Bootcamp」と呼ばれる4週間のプログラムを通して、アイディアもしくはプロトタイプ段階の新しいウエアラブルテクノロジーをいかに製品化するかについて集中的に学びます。

最終的には、ウェアラブルテクノロジーの製品アイディアをTOPSHOPのバイヤー及び、TOPSHOPの親会社であるアルカディアグループのオーナー、フィリップ・グリーン卿に向けてピッチを行う機会が与られ、最も優秀な企業はTOPSHOPにて製品化が予定されています。

「Hermes(エルメス)」のApple Watch、「Michael Kors(マイケルコース)」のスマートウォッチRalph Laurenのスマートシャツなど、ウェアラブルへ市場への参入は「贅沢品」の延長として、ラグジュアリーブランドの方が積極的な印象。そんな中、TOPSHOPが実用的かつオシャレで手の届きやすい価格のウェアラブルデバイスを手掛けるとなると、限られた予算の中でファッションを楽しむ層にもウェアラブルデバイスが浸透していきそうです。

モバイル決済システム「bPay」に対応したアクセサリーコレクションを発表

TOPSHOPのウェアラブル分野進出の先駆け的な取り組みとなるのが、昨年2015年末に発表されたイギリスのカード会社「Barclaycard(バークレーカード)」が提供するモバイル決済システム、「bPay(ビーペイ)」に対応したアクセサリーコレクションの発表です。

TOPSHOP x bPayアクセサリーを、bPay対応の店舗にて専用端末にかざすだけで、最大30ポンド(約4,700円)までキャッシュレスでショッピングできるというもので、£15〜£32(約2, 400円〜5,000円)とTOPSHOPらしい手頃な価格に設定されています。「Monster Fish(モンスター・フィッシュ)」というカラフルでちょっぴり奇妙なキャラクターがモチーフとし、スマホケース、リストバンド、キーチェーン、ステッカーの4種類を販売しました。

image.img.jpg

リアルタイムでLFWのトレンドを分析、屋外デジタルビルボードに投影

2015年2月に開催されたロンドンファッションウィーク(LFW)中は、twitterとパートナーシップを組み、LFW期間中に投稿されたツイートから来季のトレンドをリアルタイムで分析。そして、そのトレンドにマッチした今すぐに買えるTOPSHOPの商品を、イギリス国内6箇所にある屋外デジタルビルボードに表示するという施策を実施しました。

また、@TOPSHOP宛に、例えば「#Colorblocking」や「#pleats」といったトレンドアイテムのハッシュタグをツイートすると、TOPSHOPがキュレートしたショッピングリストが届くというサービスも。

TOPSHOP
Ocean Outdoorより

2016秋冬コレクションでは、様々なブランドが「BUY NOW, WEAR NOW(今買って、すぐ着る)」仕組みを導入したことが話題になりましたが、実はTOPSHOPは他のブランドよりも一足先に、ファッションショーの興奮をそのまま、リアルタイムでショッピング繋げる施策を導入しているんです。

「Oculus Rift」を使用したVRライブファッションショー

2016年はVR(バーチャルリアリティ)元年とも言われ、「COACH」(コーチ)を始め、ファッションショーやコレクションをVRを使って発表するブランドも多数登場しています。しかし、TOPSHOPはこれらどのブランドにも先駆けて、2014年2月にVRヘッドセット「Oculus Rift」をベースにしたヘッドセットを使用し、オックスフォードストリートにあるフラッグシップストアにて「TOPSHOP UNIQUE」2014年秋冬コレクションのライブ配信を行いました。

-「INITION」ウェブサイトより
-「INITION」ウェブサイトより

フロントローから見た360°のキャットウォークに加え、バックステージの様子を同時にライブ配信。また、三次元音響が取り入れられているので、まるでショーが開かれた会場の「Turbine Hall」に本当に居るかのようなVR体験を実現させました。さらに、ショーに関するライブツイートが落ち葉のイラストにのって天井から降り注いだり、ショーのフィナーレにはカラスが舞うなど、同コレクションのテーマを汲んだインタラクティブな仕掛けも。こういったインテリア設計へのこだわりこそ、ファッションブランドがテクノロジーとコラボレートする際の醍醐味でもあります。

ユーザーは、一点に留まり360°の映像を見るだけではなく、くるくる首を回すことでキャットウォーク、バックステージ、さらには会場設営が設営されているシーンを自らの意志で探索できるようになっていました。

Google+ の機能を最大限に活用した参加型ファッションショー

数々のソーシャルメディアプラットフォームとパートナーシップを組み、常にファッションショーの新しい形を開拓しているTOPSHOPですが、2013年2月の「TOPSHOP UNIQUE」 2013秋冬コレクションのファッションショーでは、Googleと大規模なコラボレーションを行い、Googleが提供するソーシャルメディア「Google+」 の機能を最大限に活用した、ユーザー参加型のファッションショーを行っています。

まず、Googleハングアウト機能(Google +が提供するグループビデオチャット機能)を使い、TOPSHOPのクリエイティブディレクターやデザインマネージャーをはじめ、キャスティングディレクター、メイクアップアーティスト、ショースタイリストらデザインチームと一緒に、2日後に迫るショーのBehind the sicene(舞台裏)とプレビューを行うセッションを開催。

ファッションブロガーに加え、2名の一般TOPSHOPファンがこのGoogle ハングアウトに参加しました。ハングアウトのホストは、ブログ「Fashion Editor at Large」の Melanie Rickey(メラニー・リッキー)が務め、各デザインチームにコレクションについて話を聞いていく一方で、ハングアウト参加者もデザインチームに直接質問をすることができるようになっていました。

-TOPSHOP YouTubeより
TOPSHOP YouTubeより

また、ショー当日は、会場へ向かうゲストのレッドカーペットインタビュー及び、バックステージインタビューを再びGoogleハングアウトを使ってライブ配信を行いました。レッドカーペットのインタビュアーはMelanie Rickeyが再び担当、バックステージインタビューはブログ「The Blond Salad」のChiara Ferragni(キアラ・フェラーニ)が担当しました。

プレビューの時と同じく、他のGoogleハングアウトの参加者が投げかけた質問をその場でゲストに質問するというというもので、ショー開始前の興奮と熱気が伝わる非常にインタラクティブなものでした。

そしてショー中は、ランウェイを歩くモデルにHDマイクロカメラを取り付け、モデル視点でショーをライブで観ることができる「Model Cams」という史上初の試みを行いました。視聴者は通常のキャットウォーク映像とモデル視点の映像をウェブサイトの画面上で切り変えることができるようになっていました。

モデル視点でキャットウォークを観ることができる「MODEL CAMS」- TOPSHOP YouTubeより
モデル視点でキャットウォークを観ることができる「MODEL CAMS」- TOPSHOP YouTubeより

さらに、TOPSHOPのために開発されたGoogleハングアウトのアプリを使い、ショーで発表されたアイテムの中から気に入ったアイテムを集めたコレクションを作り、Google +上の友達とシェアをすることができる「Be The Buyer」という機能を導入。

人気の高かったアイテムは、TOPSHOPのウェブサイト上で紹介されるだけでなく、ユーザーが作ったコレクションのデータが、実際に商品化するアイテムを決定するのに活用されたそう。まさに「Be The Buyer」の名の通り、バイヤー気分を味わうことができる体験をユーザーに提供したのでした。

「Be The Buyer」アプリページ。ショーを見ながらお気に入りのアイテムをキュレーションすることができます。- TOPSHOP YouTubeより
「Be The Buyer」アプリページ。ショーを見ながらお気に入りのアイテムをキュレーションすることができます。- TOPSHOP YouTubeより

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デジタルの分野においては、他のブランドの一歩も二歩も先を行くTOPSHOPですが、どの取り組みにもファッションを「民主化する」という姿勢が伺えます。ハイストリートブランドとして、最新のトレンドファッションを手の届く価格で提供するだけでなく、限られた人しかアクセスすることができなかったファッションショーにも積極的に消費者を巻き込んできました。

また、ファッションの新たな領域であるウエアラブルデバイスに対しても、より多くの人がアクセスできるよう価格面で挑戦を行なっている真っ最中。最新ファッションをより身近なものにしてくれるTOPSHOPのデジタル施策には、今後も引き続き注目です。

Text:Paris Wakana

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Paris Wakana



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