Business | 2016.05.25
ファッションデザインに新時代!? IBM WatsonとMarchesaのコラボレーションによる「コグニティブドレス」

ファッションデザインに新時代!? IBM WatsonとMarchesaのコラボレーションによる「コグニティブドレス」

5月始め、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されたファッションがテーマのガラパーティー「Met Gala」。今年2016年のテーマは『manus x machina : fashion in an age of technology(手作業 × 機械作業:テクノロジー時代のファッション)』ということで、思い思いの解釈でテクノロジーを組み込んだファッションに身を包んだゲスト達の装いがファッションニュースを賑わせました。

その中でも、華麗なるレッドカーペットデビューを果たし、文字通り異色の「光」を放ち一際の注目を集ていめたのは、なんとテクノロジーカンパニーの「IBM」!!

Met Gala 2016 Karolina Kurkova - Courtesy of IBM watson
Met Gala 2016にて「コグニティブドレス」を纏ったモデルのカロリナ・クルコヴァ(Karolina Kurkova)- Courtesy of IBM

IBMのコグニティブシステム「Watson(ワトソン)」と、ファッションブランド「Marchesa(マルケーザ)」がコラボレートし、オーディエンスの感情をリアルタイムでLEDフラワーで表現すことができる「Cognitive Dress(コグニティブドレス)」を発表しました。

コグニティブシステム「IBM Watson」とは?

この「コグニティブドレス」の基幹となるのが、IBMが開発するテクノロジー・プラットフォームの「IBM Watson」(以下、Watson)。公式ウェブサイトによると、Watsonとは『自然言語処理と機械学習を使用して、大量の非構造化データから洞察を明らかにするテクノロジー・プラットフォーム』であると説明されていますが、イマイチ、ピンと来ない感じ(笑)

「自然言語」とは、コンピューターが理解するプログラミング言語とは対照的に、「私たちが日常的に使う言葉」のこと。また「非構造データ」とは、文学から調査レポート、ブログ記事からツイートに至るまで、今日のデータの80%を占めると言われている「私たち人間が読むことを目的に作られたデータ」のこと。

そして、私たちが経験則から最適な判断を下すことができるように、これらのデータ、情報を反復的に学習し、コンピューターが自発的に答えを出すことができるというものです。

つまり、Watsonとは「私たち人間と同じ言葉を理解し、学習を通して自ら考えて適切な答えを出すことができるコンピューティングシステム」なんです。

しかも、膨大な情報を人間よりも遥かに早いスピードで処理し、データに裏付けされた正確な答えや解決策を導き出すことができるので、医療や投資、教育、観光、食に至るまで、様々な分野において専門家の意思決定のサポートに活用されることが期待されています。

※5月24日~26日には、東京・高輪にて「IBM Watson Summit 2016」が開かれているとのこと。人気セッションはライブ配信もあるそうなので、気になる方はチェックを(要登録)。

そんなWatsonがファッション分野におけるパートナーに選んだのは、ニューヨークを拠点とするファッションブランド「Marchesa(マルケーザ)」。

-「Marchesa」Facebookページより
-「Marchesa」Facebookページより

レースや刺繍、シフォン素材を使った、ヴィンテージ感とアジアンテイストをミックスしたMarchesaのフェミニンでロマンチックなスタイルは多くのセレブリティを魅了し、彼女たちのためにイブニングガウンを提供しています。

コグニティブ・テクノロジーからインスパイアされた、世界初唯一無二のドレスを作るべく、コンセプト作り、研究開発、デザイン、制作、全てのデザインプロセスにおいてWatsonのテクノロジーが取り入れられました。

1:コンセプト作り

データを活用することで、どのような新しいデザインが生まれるか―コレクションに対するファンの反応をデザインに組み込むことができたら?それだけでなく、ドレスそのものがリアルタイムでファンとコミュニケーションを取ることができたら?

Marchesaのデザイナー、Keren Craig(カレン・クレイグ)とGeorgina Chapman(ジョルジーナ・チャップマン)は、データに基づくドレス作りのコンセプトを思いつきます。

色とデザインは気分を表現し、メッセージを伝えるという考えをもとに、ドレスを使って表現したい感情として、「Joy(喜び)」「Passion(情熱)」「Excitement(興奮)」「Encouragement(激励)」「Curiosity(好奇心)」の5つのキーとなる感情が選ばれました。

そして、色彩心理学に基づき感情と色をマッチさせることができるIBMのツール「コグニティブ・カラーデザイン・ツール」を使って、この情報をWatsonに学習させました。

また、MarchesaのテイストとカラーパレットをWatsonに理解させるために、数百にも及ぶMarchesaのドレスの画像をWatsonに見せました。そして、Watsonが提案したのは下記の5つのカラー。

Rose for Joy(喜び)、Lavender for Curiosity(好奇心)、Butter for Excitement(興奮)、Aqua for Encouragement(激励)、Coral for Passion(情熱)……5つの感情を色で表すとこんな感じ。

Marchesaのデザイナーは、ニュートラルカラーをベースに、ポップカラーのアクセントを加えたものがブランドのカラーパレットだと思っていたそうですが、実際にWatsonが提案したカラーは、良い意味で予想を裏切るものでした。

Watsonのテクノロジーを使うことで、デザイナーすら気付いていなかった、新しいカラーストーリーを発見することができたのです!

2:素材の研究開発

LEDライトで表現する5つのカラーが決まったら、次はドレスに使用する素材選び。IBMのパートナー「inno360」が提供する、7つのWatsonサービスから成り立つ「inno360’s R&D プラットフォーム」を使用し、条件に合った素材を探しました。

まず、40,000の素材に関する情報の中から、150の候補となる素材を絞り出しました。そして最終的には、LEDライトの光を美しく映し出すことができ、ライトウエイトで、柔軟性があるなど、Marchesaのブランドイメージに合い、かつコグニティブドレスを制作するにあたって重要な条件を満たした、35種類の素材を提案しました。

watson- Courtesy of IBM
- Courtesy of IBM

3:最後の仕上げはツイート

最後の仕上げは、オーディエンスの感情の埋め込みです。これには、Watsonの「Tone Analyzer」(トーンアナライザー)という文章から感情を読み取ることができる機能が使われました。

そして、Met Gala当日。ツイッター上で交わされたMet Galaやコグニティブドレスについてのコメントがリアルタイムで分析され、150のLEDライトが美しくドレスを輝かせました。


デザイナーの想像力を高めるWatson このIBMとMarchesaのコラボレーションは、コグニティブコンピューティングが、デザイナーやクリエイターのクリエーションの可能性をさらに広げた一例に過ぎません。 Watsonは、膨大な情報の中からデータに基づいた最適な情報を提供しますが、デザインを行うのはWatsonではありません。

デザインを行うのは人間であり、あくまでもWatsonはそのサポート。Marchesaのデザイナーが思い付かなかったカラーパレットや、様々な条件を満たした素材を発見することができたのは、まさにWatsonのテクノロジーがあったからこそ。

けれども、あの美しいドレスを作ったのは、紛れも無く人間なのです。


様々な分野において可能性を秘めたWatsonですが、ファッション分野においても革命的なテクノロジーになるのでは、と感じています。例えば、ブランドのクリエイティブディレクターが交代した際、デザイナーはブランドのアーカイブを研究しますが、特に歴史あるブランドならばその量は膨大です。

そんな時、Watsonはデザイナーのアシスタントとして、デザイナーをサポートすることができるかもしれません。また、顧客の気分や性格、好きな映画や小説、音楽など文化的なバックグランドから、サイズだけではなく、潜在的な好みにを汲んだ究極のオートクチュールドレスを作ることも可能かもしれません。

まさに、可能性は無限。Watsonの登場は、新たなファッションデザイン時代の幕開けと言えそうです。

Paris Wakana



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